【スティーブ=サイナウトは冒険者になりたい】 2
依然踏まれたままのスティーブが声を上げた。
「ネルンさんっ、踏むのは家の中だけにしておくれよっ!」
「変態発言はお控えください」
「今日はギルドに来たわけだからっ! クエストを受けて冒険に来たわけだからっ!」
「さっき結婚を申し込んでいた変態の発言とは思えませんね」
「もしかして嫉妬してるのかいっ⁉ 大事なご主人様が他の女性に取られぐぶぅっ!」
ネルンが足に力を込めて、スティーブの顔がまた床に押し付けられた。
ネルンが受付嬢に謝罪する。
「申し訳ありません。ギルドの皆様に迷惑を掛けてしまっているようなので、今日はこの辺で失礼させていただきます」
「は、はあ」
「では。帰りますよ、スティーブ様」
ネルンがスティーブの首根っこを掴んで引きずっていく。
「ああっ⁉ 俺の冒険者としての華々しい第一歩がっ⁉」
「私の第一歩はスティーブ様を踏みつけて台無しになりました」
「だったら踏まなければいいのにっ⁉」
嵐のように去っていく二人を、受付嬢始めギルドの皆がぽかんとした顔で見ていた。
○
「まったく、嫉妬してくれるのは嬉しいけどさ」
「違います。あの女性が困っているようでしたので」
「つーか乱暴じゃない? ご主人様に対する執事の態度じゃなくね?」
「スティーブ様はこうした方が喜ぶと学習しましたので。奥様にも許可は頂いております」
「母さーん⁉ あと人をドエムみたいに言わないで⁉ 夜は激しい方が好きだけど!」
「黙れ変態」
そんな会話をしながら二人が道を歩いていると、後ろから声が掛けられた。
「よお、あんたらクエストを受けたいんだって?」
二人が振り返る。そこには四人組の冒険者の格好をした者達がいた。
声を掛けたのは背が高く筋骨隆々でスキンヘッドの男だった。パーティーのリーダー格らしい。
「実はよ」
その男が話を続けようとしたが、スティーブはパーティーの女性の手を取ると、先ほどのように言った。
「美人な方だ! け」
そのスティーブの首根っこをネルンが掴んで引き戻し、彼の頬を往復ビンタしていく。
「だから無闇矢鱈とナンパしないでください。殴りますよ」
「これはもう殴っているのではっ⁉」
「これは往復ビンタです。殴打とは異なります」
「細かい!」
四人組は少々呆気に取られつつも、スキンヘッドが再び言ってくる。
「じ、実はよ、お前らに良い話があるんだが」
二人が四人組の方を見る。ネルンがスティーブから手を離して、
(おーいて)
スティーブが痛そうに頬に手を当てながらスキンヘッドに改めて向き直った。
「良い話? 何だ?」




