【婚約破棄と没落】 2
「助けてザイアっ、お義父さんが意地悪してくるのっ」
「何だって⁉」
「私が買い物に行こうとしたら怒鳴ってくるのよっ。服が汚れちゃったから新しいのを買おうとしたら、買いすぎだって!」
「許せない! 父さんはケチだからな! 僕が文句を言ってやる!」
「わぁっ、ザイア、頼もしいわっ」
二人は部屋を出て、ザイアの父親の部屋へと向かう。
自室の椅子に座りながら、ザイアの父親は頭を抱えていた。
「何てことだ……ベリンダとかいうあの女が来てから、我が家の財産がみるみる減っていっている。このままでは、後一年もしないうちに破産してしまうぞ……」
バタンッ!と大きな音とともにドアが開かれた。ザイアとベリンダがやってきていた。
「父さん! ベリンダに意地悪しないでいただきたい!」
「はぁ……何のことだ?」
「しらばっくれても無駄です! 買い物に行こうとした彼女を怒鳴ったそうじゃないですか!」
「そのことか……怒鳴りたくなるのも当たり前だろう、彼女は湯水のごとく金を使い過ぎている。このままでは我が家は破産してしまうぞ」
「そんな嘘なんか吐いても無駄ですよ! 僕は騙されませんからね! ベリンダに謝ってください!」
「お前は何を言っているんだ? 一家の危機なんだぞ? 早くその女を追い出さなければ……」
「冗談じゃない! ベリンダは僕の子を身籠っているんですよ! 追い出すなんてとんでもない!」
「何だって⁉」
父親は目を剥くようにして立ち上がった。
「お前の子を⁉」
「とにかくベリンダを大切にしてください! じゃないと父さんといえども許しませんよ!」
そう言い残してザイアとベリンダは部屋をあとにしていく。
「格好良いわザイアっ、惚れ直しちゃった!」
「えへへ、物凄く嬉しいよベリンダ!」
二人の楽しそうな……能天気で底抜けに明るい話し声を聞きながら、父親は崩れるように椅子に腰を落とした。
「終わった……我が家は、終わってしまった……」
……子供がいたら追い出すことも出来ないじゃないか!
○
しばらく経って、ザイアの元婚約者であるアイラの耳にこんな話が伝わってきた。
「ジグソウ伯爵家が破産して、没落してしまったそうですよ」
伝えたのはアイラの専属メイドだ。
アイラは紅茶を持ちながら言った。
「ふーん。ジグソウ伯爵家って?」
「アイラ様の元婚約者のザイア=ジグソウの家です」
「そういやそんな名前だったわね。忘れてたわ」
アイラは紅茶を一口飲む。
メイドは続けて言った。
「原因は、息子の恋人の金遣いが荒すぎたことだそうです。結婚した後も相も変わらず使い続けて、財産を売り払い、生活水準を下げることもせずに方々から借金もしていたとのことです」
「ふーん」
「あんな馬鹿な男とは別れて正解でしたね。ざまあです。可哀想なのは息子と恋人以外の、振り回されたジグソウ家の人々でしょうか。妊娠していたらしい赤ちゃんも、不憫です」
「…………」
カップを置いて、アイラは言った。
「お菓子と紅茶のおかわりをちょうだい」
「かしこまりました。少々お待ちください」
お菓子と紅茶のおかわりが用意されている間、アイラは思った。
(確かに、振り回された人達と赤ちゃんは可哀想ね)
○




