【ヴェイン=ベルベットは庭師で罠士】 2
強盗二人が叫んだ。
「ゲエッ、何だあこりゃあ⁉」
「ウエエッ⁉ 接着剤みてーにくっついてネバネバしやがるッ⁉」
その強盗二人の上に網が被せられる。
開いた穴の上部に人が立ち、雲から現れた月がその人物を照らし出した。
「侵入者二人、捕獲完了。やれやれ、警察に引き渡す為とはいえ、生け捕りってのも面倒だな」
「誰だテメエッ⁉ 俺を裏世界の狂獣と知っててやってんのか⁉ 後でどうなっても」
強盗のボスの叫びに、人物が答えた。
「いや誰だよ? ま、俺がいない間に出てきた奴ってことかな? どうでもいいけど」
「テメエ許さねえ! その顔覚え、アッ⁉ テ、テメエはッ⁉」
「おや? 俺のことをご存じで?」
「テメエはッ! 噂じゃ死んだはずじゃあッ⁉」
「はてさて、同僚が駆けつけてくる前に気絶しててもらうぜ。ついでに記憶もなくしてくれたら、ありがたいんだがね」
「テメエはッ、伝説の闇のわ」
「サヨウナラ」
そこで強盗二人の意識は途切れた。
○
「また侵入者か」
「はい。さっき警察に引き渡してきました。お嬢様達と奥様を起こさないように、静かに遂行致しました」
アイラの父親のウォールの私室。装飾の凝った椅子に座るウォールと、その前に立つ庭師のヴェイン。
「俺は起こされたがな」
「申し訳ございません。急報は告げなければいけないので」
「いや、ご苦労。気にするな、何かあれば報告するように命じているのは俺だからな。これはただの独り言の愚痴だ。俺自身に対するな」
ヴェインは報告を続ける。
「賊は二人。裏世界の狂獣と自己紹介していたので、そこから調べて、他にも仲間や組織がいるようなら全て壊滅させておきます」
「わざわざ自己紹介したのか? 間抜けな賊だな」
「自己主張が強いのでしょう」
「お前とは真逆だな。お前は前線で傷付きたくなく、目立ちたくないから罠士をやっていたのに、知らぬ間に気付いたら……」
「ウォール様」
ウォールの言葉をヴェインが遮った。
断りもなく主人の言葉を遮るのは不敬に当たるのだが、ウォールは気を害した顔は浮かべなかった。
「いや、悪かった。我が家を守った褒賞として、後でボーナスを出しておこう」
「俺的には、賊が来なくて朝まで安眠したいんですがね。この前は元学生の女が来ましたし」
「敵は作らないように気を付けているつもりなんだがな。金と力を持ちすぎると、勝手に湧いてきて困る。これからも我が家を守ってくれることを期待しているぞ」
「は。では、俺はこれで失礼致します」
ヴェインが静かに部屋の外に出ていく。
ランプ型の魔法具の暖色の明かりが灯るなか、ウォールはつぶやいていた。
「ヴェイン=ベルベット、我が家の庭師にして、かつて伝説と言われた闇の罠士……か」
月の照らす静かな夜は更けていく。
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