【ヴェイン=ベルベットは庭師で罠士】 1
ヴェイン=ベルベット。
二十歳。男。
職業、エインズ家の庭師。
「うん、今日も皆元気だ」
手入れした庭と花壇の花を見て、ヴェインは晴れやかな顔をした。
○
「ボス、次のターゲットはどいつですかい?」
「ククク、かの有名なエインズ家だ」
暗い室内、二人の男が話し合っていた。
「この国でも屈指の公爵家じゃないっすか!」
「そうだ。屋敷も敷地も広大で、別荘もいくつも持っている。王家も無視出来ない資産を持ち、権力も発言権も随一の強大な一族」
「そいつを狙うんですね⁉」
「その通り。狙うのはエインズ本家。そこになら宝石や札束などの莫大な金品が保管されているだろうし、いざとなったら娘や妻を人質に取れる。要求に従わなければ見せしめに一人殺せばいい」
「流石ボス、容赦がねえッ! 悪党の鑑だぜえッ!」
「ガッハッハッ! 良いこと言うじゃねーか! お前の取り分を増やしてやる!」
「やったぜ! さっすが裏世界の狂犬だぜ!」
「誰がワンコだ! 裏世界の狂獣だ馬鹿が!」
ボスが子分の頭をどついた。
「あいたッ⁉」
「お前の取り分は減額だこの野郎!」
「しょんなあ、あんまりだぜボス」
「うるせえッ!」
○
深夜、月が雲に隠れた頃。
ボスと子分はエインズ家の屋敷を囲む外壁の前に来ていた。
二人は声を潜めて話す。
「ボス、いよいよ侵入ですね」
「ああ、準備は万端。行くぜ」
「アイサー!」
「ボスだ馬鹿たれ!」
「あいた⁉」
外壁の上部には鉄柵が埋め込まれており、その先端は槍のように尖っていた。
二人はロープを取り出すと、鉄柵へと投げて引っ掛ける。ロープを握り、壁を歩くように登っていく。
「落ちたら置いていくからな」
「大丈夫ですぜ、何回も練習しましたから」
二人は鉄柵の頂上へと到着し、今度は敷地内にロープを垂らして慎重に降りていく。
「着地の時に足音を出すなよ」
「それも練習済みだぜボス」
二人は敷地内に着地し、そばの木立の陰に隠れた。
「流石広い庭だぜ。林みてーに木立が並んでやがる」
「もしかしたら野生の兎や猪もいたりして。そしたら捕まえて鍋にして食いますかい?」
「馬鹿が! そんなのより金だよ金! いいから、足元は芝生だが物音に気を付けていくぜ!」
「ウッス!」
強盗二人が抜き足差し足で進もうとしたとき、二人の足がなにかを踏んだ。
木立の間に張られていた細いワイヤーだった。あまりにも細く、踏んだ感触もなかったので、二人は全く気付いていない。
そしてワイヤーに繋がっていた装置が作動して、二人の足元に大きな穴が空いて、二人は穴のなかへと落下していった。
「「ギャアアアアッ⁉」」
穴の底には黒い水飴のようなドロドロした半液体状のものが、薄く伸ばされて広がっていた。
穴のなかに倒れる強盗二人の全身がそのドロドロに触れ、二人は身動きできなくなる。




