【グロリア=ガンナスターはアイラの専属メイドで護衛】 2
それぞれの使用人達は壇上で技芸を披露していった。
ある者はピアノを演奏し、ある者はバイオリンを弾き、ある者はジャグリングをした。
またある者は手品を披露し、ある者は椅子や一輪車の上で片手逆立ちをし、ある者は歌を歌った。
そうやって使用人達が技芸を披露していき、見物の貴族達が拍手を送っていく。
イメルダは勝ち誇った顔をしていた。
(やっぱりこの程度。この披露会、私の勝ちね)
使用人達の技芸はそれぞれ上手いことは上手いのだが、あくまで趣味の範囲の上手さだった。
そしていよいよグロリアの番となった。皆、エインズ家のメイドはいったいどんな技芸を披露してくれるのかと注目した。
彼らの視線が集まるなか、グロリアはアイラに言った。
「アイラ様、お願い出来ますか?」
「何を?」
「ここにあるリンゴを頭の上に乗せて、あちらにお立ちになっていてください。私がこのナイフでリンゴを貫いてみせましょう」
「やれやれ、滑稽な役回りね。ま、いいけど。一つだけでいいの?」
「はい」
ヘレナとイメルダを始めとして、他の貴族達や使用人達はざわめきたった。もし失敗すれば無事では済まないからだ。
まさか大事な主人を、自らの手で危険に晒すのかと。
しかしアイラは気にせずに、テーブル上の果物の籠からリンゴと、及び小皿を手に取り、グロリアとともに壇上に上がっていく。壇上の一端にアイラが立ち、もう一端にグロリアが立つ。
皆が静かに固唾を飲むなか。
「グロリア、やりなさい」
「はい」
次の瞬間、アイラの頭上にあったリンゴが後方へと飛んだ。その赤い身の中心には見事にナイフが突き刺さっていた。
そばの壁にリンゴごと突き刺さったナイフを、アイラが引き抜く。
「グロリア」
しかしアイラは壇上から降りてこようとはせずに、リンゴと一緒に持ってきていた小皿と、リンゴから引き抜いたナイフをグロリアのほうへと投げた。
シュパッと苦もなく小皿とナイフを受け取った彼女に、アイラが言う。
「ついでよ。美味しく食べられるように、リンゴを切り分けなさい」
アイラがリンゴをグロリアのほうへとアンダースローで投げた。
グロリアは素早く動いて、一瞬後、彼女が持つ小皿にトトトトトトと六つに切り分けられたリンゴが乗っていった。
一瞬の静寂。
そして。
「すごーい!」
「素晴らしい!」
割れんばかりの大きな拍手が巻き起こった。
壇上でカーテシーのように一礼する二人を、イメルダが目を見開いて口を唖然とさせて見上げていた。
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