【グロリア=ガンナスターはアイラの専属メイドで護衛】 1
とある貴族家で開催されている社交パーティーにて。
室内中央付近のテーブルで他の貴族達と話すアイラのことを、彼女の専属メイドは壁際に控えて見守っていた。
専属メイドの名前は、グロリア=ガンナスター。役職としてはアイラの専属メイドだが、護衛も兼ねていた。
「貴女がエインズ公爵家第一令嬢、アイラ=エインズ様の専属メイド?」
近くから声がして、グロリアはちらりと視線を向ける。同じくメイド姿で壁際に控えていた女性がいた。
どこかの貴族のメイドらしい。
「そうですが。何か?」
「アイラ=エインズ様って素敵よね。国内屈指のエインズ家ってだけでも凄いのに、立ち居振舞いも凛々しくて、バイオリンや絵画もプロ並なんでしょ。美貌も備えているし、完璧超人じゃない」
「…………」
主人を褒められて嬉しくない使用人はいないだろう……だからこそ、グロリアはそのメイドに注意を払う。
使用人の心理を突いて話し掛けてきていると分かったから。
このような手合いは、たいていなにかしらの腹積もりや裏があると経験上理解していた。
「そんなアイラ=エインズ様に比べて、貴女は何? 地味すぎ。どこのド田舎から出てきた芋女かと思っちゃった」
「……メイドがご主人様より目立ってはいけませんので」
「そういうことじゃないわ。貴女には華がないのよ。主人が連れていて自慢したくなるような、内側から滲み出る華やかさがね」
「…………」
「その点、私には華があるわ。だって私の主人はハイネス侯爵家の第一令嬢、ヘレナ=ハイネス様ですもの。ヘレナ様に見合うように常に心掛けているの。主人の高貴さにあぐらをかいているような貴女とは違うのよ」
「そうですか」
何だ、そんな話か。
彼女が言いたいことが分かったので、グロリアは視線をアイラとその周辺へと戻す。
無駄話に付き合って、無駄にムキになって張り合って、主人の万が一の事態に対処が遅れては馬鹿にもほどがあるからだ。
しかし素っ気ない態度のグロリアにムッとなって、そのメイドがなおも言ってくる。
「私はイメルダっていうの。貴女みたいな芋女なんかより、ずっとずっとメイドとして優秀だし相応しいわ」
「良かったですね」
「どうして貴女みたいな芋女がエインズ家の専属メイドなんか任されているのかしらね。もしかしてエインズ家って、メイドや使用人を見る目がないのかしら?」
「…………」
グロリアが彼女に冷たい視線を飛ばそうとしたとき、貴族達と話していたアイラがグロリアに声を掛けた。
「グロリア、ちょっとこっちに来てくれる」
「はい」
アイラのそばにいたヘレナも同じようにイメルダに言っていた。アイラとヘレナだけではなく、他の貴族達もそれぞれ自分の使用人達を呼びつけていた。
「アイラ様、如何致しましたか?」
「ハイネスさんに提案があるらしいのよ」
グロリアの問いに答えたアイラがヘレナ=ハイネスのほうを見る。ヘレナは手を合わせて首を傾げながら、笑顔で言った。
「実はね、何か面白いことはないかと思ってたのだけど、それならそれぞれの使用人に何か芸でもさせてみたらどうって思い付いたのね私」
使用人達は様々な反応を示していた。自信のある顔をする者、ちらりと主人に確認の目を向ける者、どきりと肩を微動させた者、などなど。
ヘレナは続ける。
「いわゆる隠し芸大会みたいなものね。もちろん自信がなかったり芸が出来ない方には、参加を無理強いしないけど。でもそうね、私が言い出した手前、最も凄い芸をした方には何かあげようかしらね。あ、でも魔法を使うのはなしね。あくまで自分の技芸でお願いよ」
アイラがグロリアに確認した。
「グロリア、出来る?」
「アイラ様のご用命とあらば」
「そ」
アイラがヘレナに言った。
「私のメイドは参加するわ。他の方達はどう?」
エインズ家のアイラのメイドが参加表明したとあって、他の使用人達にも多少の刺激となったらしい。
皆うなずいて、そうして急遽使用人達の隠し芸披露会が開催されることになった。
○




