【演奏会の帰り、望まぬ再会】 1
「良い演奏でございました、アイラ様」
「そう? 私的には演奏する側じゃなくて、聴く側に回りたかったけどね」
バイオリンの演奏会の帰り、夜道を歩きながらアイラとメイドは話していた。
アイラが演奏する演奏会だった。
「主催者の方も喜んでおられましたよ。アイラ様が演奏する時はいつも盛況だって」
「ふーん。ま、ギャラが貰えるなら私は構わないけどね。お父様からも稼げってうるさいし」
「この分なら賠償額はすぐに取り戻せそうですね」
「お父様はわいわいうるさかったけどね。どうせ婚約破棄になるなら、相手に破棄させて金を取れとか。もったいないことをしおってとか。あんの守銭奴親父」
「相変わらずですね、ウォール様は」
メイドがくすりと微笑む。
アイラは訝しんだ。
「どうかしたの? 笑っちゃって」
「いえ、アイラ様はお父上であるウォール様と仲がよろしいなと思いまして」
「うげー。やめてよ。人をファザコンみたいに」
「そこまでは」
アイラは本当に嫌そうな顔をしていた。
そのとき、アイラに声が掛けられた。男の声だった。
「アイラ⁉ アイラじゃないか⁉ 久しぶりだな!」
アイラとメイドがそちらを見る。
継ぎ接ぎのついた服装をして、ところどころ汚れた姿の男がいた。髪はぼさぼさで、髭が数センチほど伸び、手には空の酒瓶を持っていた。
アイラは本気で誰だか分からなかった。アイラとメイドは警戒した。
「どちら様ですか? どこかでお会いになったことがあったかしら?」
「僕だよ! 忘れたのかい⁉ 君の婚約者だったザイアだよ!」
「…………」
アイラは、名前は思い出した。しかし過去の人物と目の前の不審者の姿が重ならなかった。
声はザイアのものではあったが。
とりあえず、アイラは相手に話を合わせることにした。
「貴方でしたか。お元気そうで何よりです。それでは私達は急いでいますので」
「待ってくれよ! ここで再会したのも何かの縁だしさ! 君にお願いしたいことがあるんだ!」
「お断り致します。以前言いませんでしたか? 貴方と関わるつもりは二度とありません」
「そんなこと言わずにさ! 実は妻がお金を借りてこいってうるさくて、あっちこっち回ったんだけどどこも門前払いされてさ! 途方に暮れてたんだ! そんなときに君を見掛けたんだ! これは神様が僕にくれた幸運だと思ったよ!」
神様のこんちくしょう、私に不幸を押し付けやがって!
「だからさアイラ!」
「お断り致します」
「僕にお金を貸してよ!」
人の話を聞け!
「お断り致します」
「そんなこと言わずにさあ! とりあえずたった一千万ゴールドくらいでいいんだ! 君なら簡単に用意出来るだろう! 必ず返すからさ!」
「さようなら」
「あ! ちょっと待ってくれよ!」




