【婚約破棄と没落】 1
エインズ公爵家の応接室。
ソファに座るアイラ=エインズの前には、同じくソファに腰を下ろす婚約者のザイアの姿。
ザイアが口を開く。
「僕は君と婚約破」
「婚約破棄させていただきます」
ザイアはびっくりしたが続ける。
「実は僕には他に愛す」
「愛する恋人と末永くお幸せに」
「君との婚約は」
「貴方との婚約は親が決めた政略結婚です。最初から愛などありません」
「婚約破棄の慰謝料は」
「もちろん慰謝料はお支払いします。ざっと一千万ゴールドほど」
「今後は僕達には」
「貴方達には二度と関わりません。貴方達も二度と関わってこないでください」
「もしかして怒って」
「当たり前でしょう。貴方は私が何をされても怒らない女神に見えるんですか?」
「…………。さっきから僕の」
「貴方の言いたいことなど容易に分かります。とても浅はかな人間ですから」
彼女のその言葉にザイアはとうとう怒りを見せた。
「それは当て付けか⁉ 僕だって我慢の限界があるぞ! 大人しくしてたら図に乗りやがって!」
「逆ギレですか? みっともない。当て付けの使い方も間違ってませんか? まぁ貴方の頭ですからね」
「帰る! この無礼は償わせてやるからな!」
「婚約者がいるのに浮気した貴方の方が無礼でしょう?」
あほくさと思うアイラを残して、ザイアは屋敷から出ていった。
「塩でも撒いておきなさい」
メイドにアイラは言った。
○
「まぁ、これで私達一緒になれるのね、ザイア」
「そうだよベリンダ。僕達は永遠に一緒さ」
「嬉しいわっ! んー、ちゅっ」
「おいおい……もっとしてくれないかい?」
「もうっ、ザイアったらっ、んーっ」
楽しそうに話す二人。
ドアの外に控えていたメイドは呆れていた。
盗み聞きをしていたわけではなく、部屋を片付けようとしたらベリンダに追い出されたのだ。
勝手に私の物に触らないで!と。
室内は物で溢れかえっていた。
高価な衣服、装飾品、宝石、雑誌、食べかけの食べ物、弾くこともできない楽器、話題だったから買っただけで読みもしない本、などなど。
傍目にはゴミ部屋にしか見えなかった。
「ザイア、実はね、嬉しいニュースがあるのよ」
「何だい?」
「お腹、触ってみて。分かる?」
「え、もしかして?」
「うん……♪」
「わぁっ、ベリンダっ、僕すっごい嬉しいよっ!」
「私もよ、ザイア! これからは三人でずっと幸せに暮らしましょうね♪」
二人は心から嬉しそうな声を出していた。
ドアの外で聞いていたメイドの全身に、怖気が走っていった。
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