コモリズム
私の名前はこほうぎこなた、コモリストだ。
子守をする主義のひと──ではない、ただ同じ部屋に籠もり続けることを人生のメインディッシュとする人間なのである。
今日も日帰り温泉施設『ゆったり天国』のサウナに私は籠っている。コモリズムを貫いている。
ここはとても暑くて湿気も凄いが、衛生的で好きだ。カビもキノコも無縁の部屋だ。できれば一生ここに住んでいたいものだ。
「お客さん、困ります」
またあのババァが掃除道具とともに入ってきて、うるさいことを言いやがる。
「もうこれで3日めですよ? いい加減に帰ってよ」
私はババァを無視した。
金を払っているのだ、850円も。
ここに籠っていて悪い理由がない。
「……まぁ、あたしゃ、ただのお掃除おばさんとして雇われてるだけだからね、強くは言えないんだけど」
上のひとに言いつけてないらしい。
それだけはありがたかった。
「でもねぇ……。あんた、よくこの部屋の中で生きてるね? 3日間、ずーっと動いてないじゃない?」
当たり前だ。私はコモリストだ。そのへんのへにゃけたやつと同じにされては困る。
「食事はどうしてるの?」
たわけたことを聞くな。
コモリストは3日ぐらい何も食べずとも平気なのだ。乳に栄養は蓄えてあるわい。
「排泄は? まさかここでしてないよね?」
ばかものめ。
これだけだらだらと汗を垂れ流しているのだ。一緒に出ているにきまっている。
「それじゃ、また明日、来るからね」
──と、いうことは、もう閉館するぐらいの時間なのか。23時前とみた。
「明日はおにぎり作って持ってきてあげよっか?」
甘く見るな。私はコモリストだ。そのような情けなど……
あれ……?
目から汗……?