2 希望を胸に
ああ生き返る!
この喉がからっからの状態で飲む水!!
この時だけは本当に生を感じることができたと思う
「で、えっとここでなにをしていたの?」
紫髪の天使が問う
何をしていたといわれても何もしていなかったからな...
むしろこの何もない空間で何ができるのかを問いたいところである
「私は...えっと....」
「無理に話そうとしなくてもいいよ。ゆっくりで大丈夫」
天使かこいつは!?女神かこいつは!?
顔も声もよくて性格もいいとか!何で一体勝てるというのだ!!??
いや、対戦相手じゃなくていい!私はこの子に貢ぐだけの立場でいい!!
「じゃあお名前は?わかる?」
その女の子は興味ありげに近づきながら喋る
そんなに近づかれると照れる...!!
「えっと...名前は....」
そういえば私は雨音が好きだった
あの心地よいような、テンポの良いような、そして儚いような
そんな音
そう考えていたら私は知らない間に名乗っていた
「あめ....」
咄嗟に口にしただけ。なんの意味もなかった
「あめっていうのね。私はシス。神瀬シスだよ。よろしく」
シスは私に向かって手を差し出す
これは私も覚えている。友情のあかしだ
「よ、よろしくね」
私は彼女の手を取った
後に私はシスの手を取ったことを後悔することになる
「ところでシス、さん?ここはいったいどこなのでしょうか?」
私はさりげなく質問してみる
「シスでいいよ。敬語もいらない。そこまで高い位にいるわけでもないしね」
彼女は私に微笑みかける。マジ天使だ
「ここは、えっとなんていえばいいんだろうか...」
彼女は少し難しそうな顔をした
そんなに言いずらいようなところなのだろうか...
「墓だよ、墓の中」
ハカ?あの意味ありげの踊りのことだろうか?
ハカ...はか...HAKA.....
墓!!!???
「驚いてるところ悪いけれど、驚きたいのはこっちのほうよ?」
「だって墓の掃除の仕事をしていたら墓の下に空間があるのを見つけて」
「見に行ってみたらあなたがいたんだもの」
そうか。私は墓の中にいたのか
「っておい!誰だよ勝手に私を殺したのは!!」
「ってか墓ならもっといい所にしておいてほしかったよ!!!」
「そう!エジプトのピラミッドみたいな!!」
「えっとピラミッド?ってのはよくわからないけど...まあ生きてたならよかったんじゃない?」
それもそうか。生きてるだけでも奇跡みたいなものだよな!
「とりあえずここを出たいんだけど...」
「そうね、町で歩きながら話をしましょうか」
とりあえず可愛い女の子とのデートは確定したわけですねありがとうございます
手とかつないじゃったりして...!!ムフフフフ
「じゃあ行きましょうか!こっちよ」
なんてキモイ妄想をしているうちに話が決まってしまった
外にでたら何かを思い出すかもしれない
そんな期待を膨らませ私は外の世界へと飛び立った
だがしかしその希望はすぐに打ち砕かれることとなる