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これは重要な話です

「『聖女の力を偽る方法』とは、文字どおり聖女の力を外部に漏らさぬようにする方法だ。詳しい説明は省略するが、魔石にはそれぞれ属性が宿っている。そのうち、光と闇という2つの属性は相反するという性質を持っている。聖女の力というのは、光りの女神によって授けられる力であるため、闇の魔石それも純度の高いものを肌に触れさせると、聖女の力を持つ者の力を押さえつけてしまうのだ。……これを利用して、自身の娘の聖女の力をあらかじめ押さえつけた上で、聖女判定に望むものが過去に続出したのだ。もちろん、聖魔石手をかざすまでは力の有無はわからぬゆえ、万が一力があった時のための保険としてだ。」



……うん、なんとなくわかったようなわからないような……。

とりあえず、私が身につけていたのは純度の高い闇の魔石で、単なる宝石ではなかったということだ。


そして、闇の魔石に相反する光の力である聖女の力の押さえつける効果があるということらしい。


……押さえつける?

もしかして、闇の魔石が熱を帯びたり、光ったりした理由は……?



「ご説明いただきありがとうございます。……ということは、闇の魔石が熱を帯びたり、光ったりした理由は私に」


「聖女の力があるから、という可能性が高い。」


私の言葉を引き継いで、神官長がゆっくりと私が聖女の力を持っている可能性について、結論付けた。

他にもいろいろと聞きたいことがある。聖女の力とはいったい何なのか、なぜ聖女の力を隠そうとする人々が続出したのか。

だけど今は、私にはやることがあるのだ。



「それぞれ言いたいことがある者がいるとは思うが、今は孤児院の瘴気の問題をどうにかすることが先決だ。……パイル、もう一度聖魔石に手をかざしてみよ。」


イングランド様は微笑みながら、しかし確かな意思を感じさせる表情で、私にそう促した。


私はゆっくりと頷いて大きく深呼吸をした後、再び聖魔石に手をかざした。


その瞬間、聖魔石は目が眩むほどの光を放ち、神官長室内を光の海へと変えた。






ーー






私たちは、全員そろって孤児院へと向かった。神官長だけではなく、イングランド様やメイウッド公爵様、騎士団長様まで孤児院にいらっしゃるとは、正直思わなかった。「そんな汚らわしいところ、行きたくもない」と言って、神殿に待機するものと思っていた。

だけど、それぞれ考えがあるのか、真剣な表情で廊下を進んでいく。


途中ですれ違った神官や巫女たちは、いつもの堂々とした態度はどこへいったのか、壁際にぴったりと寄り添い跪いて頭を垂れていた。


神官長たちはその姿を意に介さんとばかりに、颯爽と孤児院を目指している。

私もそれに習うように、しっかりと前を見据えて孤児院を目指し前に進んでいる。




少しの時間の後、私たちは孤児院の扉の前に着いた。

すると、神官長が全員を見渡すように視線を向けた後に、口を開いた。


「其方らはわかっていると思うが、魔力量が比較的に高い我々でも、長い時間滞在すれば瘴気に蝕まれる。私が出ろと言ったら、すぐに孤児院から出るように。とくに、イングランド、良いな?」


「ああ、わかっている。」


「よし。ランベタント、カジケープは周囲をしっかりと警戒しておくように。……魔人が発生するかもしれぬ。」


「「承知しました。」」


神官長は一つ頷くと、イングランド様を後ろにさげさせて、ユットゲー様に合図をした。

神官長の合図を受けたユットゲー様は、ゆっくりと孤児院の扉を開いた。



「……え?」



その瞬間、私は目を疑うような光景を目にして、思わず声を出してしまった。


「どうしたのだ?」


私の声に反応して、全員の視線が私へと注がれた。

代表して、イングランド様が私に声をかけた。



「い、いえその……先程ここに訪れたときには見えなかったのですが、黒い靄のようなものが全体に漂っておりまして……。」


「それが瘴気だ。聖女の力を持つ者にしか見えぬらしい。先ほどは闇の魔石を身につけていたゆえに、見えなかったのだろう。」


神官長は厳しい表情をしながら、そう教えてくれた。

……これが、瘴気。こんな禍々しいものを、孤児院のみんなは体内に取り込んでいたというの?


な、なんてこと……。

目に力を入れていなければ、自然と涙があふれ出してしまいそうになる。


泣いている場合ではないんだ。私が、私がこの瘴気を何とかするんだ……!



「孤児院のみんなが臥せっている部屋へは、私が案内いたします。」


「ああ。ユットゲーは、原因を探れ。」


「承知しました。」



神官長の指示を受けたユットゲー様は、機敏な動きで去っていった。


私はその背を見送った後に、神官長たちをみんなの元へと案内した。




部屋へと近づいてくると、部屋の前に扉に背をあずける様にして座っている人影が見えた。

扉に近づくにつれて、徐々にその姿がはっきりとしてきた。


「ウィル!!」


私はその姿を確認すると、一直線に走り出した。その手には、ミーアお姉ちゃんが守るようにして抱かれていた。



「……パイル、戻ってきてくれたんだな。……だけど、すまない。ミーアも他のみんなみたいになってしまった。本当にすまない。」


「ミーアお姉ちゃん……。」



ウィルの手に抱かれているミーアお姉ちゃんの状態を確認するために袖をまくってみると、みんなと同じように黒い痣が蛇のように腕に巻き付いていた。



「こんな短い時間でも影響が……。」


「瘴気に対する耐性は、魔力量に依存する。魔力がほとんどない平民は、短時間でも瘴気に蝕まれてしまうのだ。」


神官長がミーアお姉ちゃんの状態を確認しながら、そう説明した。

私が、ミーアお姉ちゃんを孤児院に残してきてしまったからこんなことに……。


すると、ウィルがミーアお姉ちゃんを支えるようにして、ゆっくりと立ち上がった。私はすぐに、ミーアお姉ちゃんの体に手をまわして2人を支えた。


「ウィル、無理に立ち上がらなくても……。」


「いいや、いいんだ。」



ウィルはそういうと、ゆっくりと神官長たちに向けて頭を下げた。


「どうか、お願いいたします。みんなを、孤児院のみんなをお救いください。どうか、どうかお願いいたします。」



それは、心からの叫びだった。

孤児院のみんなを、自分の居場所を守りたい。そんな、悲痛な叫びだった。


「残念だが、私たちにはその願いを聞き届けることはできぬ。」


しかし、ウィルの願いを聞いた神官長は、その悲痛な叫びをバッサリと切り捨てた。


「……! ど、どうか! みんなを!」


「私たちにはその力はない。其方らを救うことができるのは、そこにいるパイルだけだ。」


「……え?」



神官長の言葉を受けたウィルは、理解できないとばかりに、私の顔を見つめた。

……そうだよね、急に言われてもわからないよね。私自身も、わからないことだらけだから。


だけど……。私は精一杯の笑みを浮かべて、ウィルの頭をなでた。


「私に任せて、ウィル。私が、みんなを助けるから。」


「……私がって、どういうことだよ?」


「終わったら全部話すから、今は私に任せて。」


私はそういうと、視線を神官長に向けた。

私にはまだ聞いていたない重要なことがある。

それはそう、聖女の力の行使の仕方だ。





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