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新しい単語を覚えるには語呂合わせが必要ね


騎士団の方々の前で歌を披露した日は、メイウッド公爵家で1泊して、次の日に神殿へと帰ってきた。神殿に帰ってくると、イングランド様の姿はすでになかった。神殿に帰る途中で、行きの時のようにどこかで馬車が一時停車したため、そこで馬車を下りたのかもしれない。あのような下町で領主様が降りてもいいいものか疑問に思うけど、隠れ家的な何かなのだろうか。





神官長室に戻り、神官長の指示で自室で着替えを終えた私は、側仕えの仕事のために再び神官長室に戻ってきた。アルミ―とマールに軽く帰宅の挨拶をした後に、自分の仕事に戻った。

神官長室はいつもどおりに、書類をめくる音とペンを走らせる音が響くのみだった。



しかし、優雅な動きの中に少しの焦りを含んだような動きで、ユットゲー様が神官長室にやってきた。



「神官長、先程運んできた瘴魔石の件でお耳に入れたいことがございます。」


「なんだ? 其方がそれだけ慌てているということは、よほどのことなのだろう?」


「左様にございます。お見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ございません。瘴魔石の確認のために魔封じの箱を開封して確認してみたのですが……一部の瘴魔石から瘴気が抜けておりました。」


「……なんだと? すぐに確認に行く。其方らはこのまま執務を続けるように。」



神官長はそういうと、ユットゲー様とカジケープ様を連れて神官長室を速足で後にした。



……よくわからない単語が色々と聞こえてきたんだけど、昨日騎士団から神官長たちが預かっていたものが瘴魔石? と呼ばれる何かなのはわかった。魔石の一種だろうけど、何が違うのだろうか? もしかすると、仕事上のことかもしれないし、アルミ―に聞けば教えてくれるかもしれない。



「すみません、アルミ―。先程の神官長とユットゲー様のお話の中で、よくわからない単語が聞こえてきたんですけど、側仕えの仕事に関係のあることでしょうか?」



私がそういうと、アルミ―マールと視線を交わし合ったあと、一つゆっくりと息を吐いた。



「……実際にその時が来たら教えようと思い、パイルにはまだ言っていなかった仕事があります。初めにパイルに確認しますが、神官様や巫女様の主な仕事にはどのようなものがあると認識していますか?」


「そうですね。私は神官長にしかお仕えしていないので、その経験と孤児院で指導されたことをもとにしか言えないのですが……神殿内の執務と神様へお祈りをささげることでしょうか。」


「ええ、そうですね。ただ、それ以外にあと2つ重要な仕事があるのです。それは、各種儀式を執り行うことと、瘴魔石の管理です。」



「……それは、どちらも聞いたことがないです。」



前者については、神殿だということもありなんとなくイメージができるけど、後者については全然想像がつかない。それにしても、孤児院で教えられなかったのはなぜなのだろうか。


「仕事自体は難しいものではないです。各種儀式の会場準備や瘴魔石の運搬などの力仕事を行います。主の命に従って行うものですので、体系的に教えられるものではないのでしょう。主の命に従って仕事を着実にこなせるように、教養や礼儀作法などの基礎が孤児院で教えられていると認識しています。それから、どちらの業務も特定の主に仕える側仕えが行うものなので、孤児院にいるときは教えられないものですね。」



なるほど。確かに、主の指示に従って会場準備や運搬を行うのなら、教科書的に教えるのは必要なさそうだ。それならば礼儀作法や教養をもって、言われたことを理解し着実にこなせるような側仕えになれるよう、下地を作っておくことが合理的だ。



「儀式というのは、どのようなものがあるのですか?」


「主に、洗礼式、成人の儀、婚約の儀、奉納式です。今は、直近で行われる成人の儀について説明しますね。その他の儀式については、儀式があるごとにお教えします。成人の儀は、16歳になる年の春に行われる儀式です。お貴族様、平民の2つに分かれて行われるもので、神殿長が神に祈り祝福を行います。我々側仕えの仕事は会場準備ですね。」



なるほど。私は、アルミ―にお礼を言って、了解を意を表した。

なんというか、神殿らしい業務だなと思う。だけど、私は全然知らなかったから孤児以外に対して行われているものなのだろう。



それにしても、神に祈り祝福を行うか……。私たち孤児も毎日神にお祈りをしているけど、神官や巫女になると、祝福? というものを与えることができるらしい。実際に見てみないと何とも言えないけど、楽しみだ。まあ準備を行う私たち側仕えに、本番の儀式を見ることができるのかはわからないけどね。



「次に瘴魔石の管理についてです。瘴魔石とは、瘴気で満たされている魔石のことです。魔獣を討伐することで手に入ります。瘴魔石は放置していると辺りに瘴気をまき散らし人体や環境に悪影響を及ぼすので、魔封じの箱という特別な箱に入れて神殿で管理しています。」



「瘴気とは、なんなのでしょうか。」



「瘴気とは、空気中に放たれた魔力の残滓こと魔素と人や動物、環境から発生した負のエネルギーが融合したものです。瘴気は、植物や動物、人の内部に蓄積し、悪い影響も与えます。具体的に言うと、植物は枯れ、動物や人間は瘴気に侵され病へと至ります。最終的には死に至りますが、一定の者は瘴気にのみ込まれた「魔」へと変貌します。それが、魔獣です。」


「魔封じの箱というものに入れて管理しているということは、瘴魔石の数は溜まっていく一方なのでしょうか。」


「……本来であれば、神殿が一時管理したのちに聖女様が瘴気を取り除かれるのですが……今はどうやら、聖女様による瘴気の除去がおこなわれていないようです。理由については、申し訳ないのですが、私にはわかりかねます。」


「いえいえ、質問ばかりしてしまって申し訳ございませんでした。教えていただきありがとうございました。それにしても、アルミ―は色々なことを知っているのですね。」



「神官長は儀式の執り行いや瘴魔石の管理もなさっているので、我々側仕えも準備に携わる中で知識が必要となるのですよ。神官長にご教示いただいたことを、あなたにも教えていきますので、すべて理解して神官長にお仕えするようにしてください。」




アルミ―はそういうと、とても爽やかで圧のある笑顔を浮かべた。神官長のファンは、神官長に洗脳でも受けているのはないかと思えるほど、神官長に心酔している。

まあ、知識を蓄えられるのはうれしいので、私は笑顔で首を縦に振った。



それにしても、聖女様か……。今まで前世と違うもにたくさん触れてきたけど、また新しく聖女や瘴気などなじみのない単語が出てきたな。


アルミ―の説明でなんとなく、ぼんやりとイメージはできる。聖女様というのは、ものすごく貴重で重要そうなポジションであることが聞いた説明からうかがえる。その聖女による瘴気の除去? が行われていないというのは、結構な問題になっているのはないだろうか? 魔封じの箱とやらの許容量がどれくらいかはわからないけど、無限というのはあまり考えられない。飽和状態になって、瘴気が抑えきれなくなったら……。



あ、そうか。騎士団と神官長の間で、魔獣が溢れて……みたいな会話をしていたけど、すでに瘴気が飽和状態になっていて魔獣がたくさん出現しているのかもしれない。わからなかったことが、なんとなくつながってきた気がする。というか、この想像が本当だとしたら、魔獣がもっと出現して、瘴気による健康被害までも出始めるということではないだろうか? ……なんというか、とてもやばそうな状況のように思える。


聖女様! いったいどうされたのですか!?



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