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朱に交わる

朝食の時間が終わり、私はミーアお姉ちゃんとコニー、そしてイールと一緒にウィルがいる部屋へと朝食をもってやってきた。

部屋の中に入ると、そこにはまだ布団をかぶったままのウィルがいた。


4人で視線を交わし合った後、私からウィルに話しかけることにした。



「ウィル、朝食を持ってきたよ。……その、昨日はビンタしてしまってごめんなさい。」



私がそういうと、背後にいる2人から強い視線が突き刺さった。しっかりと説明しないと、私が暴力的だからウィルがおびえてしまっていると思われかねない。

私は微笑みながら、後ろを振り返った。



「2人とも、何か聞きたいことがあるの?」


「……聞きたいことがあるのって、お前な。さっき何もしていないって言ったじゃねーかよ! ビンタって、孤児院に来たばかりのやつに何してるんだよ。」


「パ、パイル。何か事情があるんだよね?」



コニーはあからさまに引きつった顔で、イールは心配そうな顔でそう聞いてきた。

2人とも私のことを何だと思ってるのか。この9年間の絆は思ったよりも脆いのかもしれない。


「ち、違うんだよ! ビンタといっても、1回だけパシッとだけだからね! そうだよね、ミーアお姉ちゃん?」


「え!? う、うんそうだね。事情が事情だったから、私的には仕方がなかったかなと思っているよ。」



ミーアお姉ちゃんが慌てながらも苦笑いを浮かべながら、私を擁護してくれた。

ただ、事情については朝ごまかしてしまったから、今更本当のことは言いにくいかな。何とかごまかすことにしよう。

すると、意外にもコニーが首を横に振った。


「事情があるのはわかった。……ウィル、一応言っておくがパイルは簡単に人に手をあげるような奴じゃない。それなりの事情があったんだろうな。」


まあ、コニーったら、たまにはいいことを言うじゃない。

私は満足げに頷いた。


「まあ、短剣をもってイノシシに突撃して急所を一突きにしたり、変な訓練をしたりするけどな。」


「その要らない一言がなければ、私はコニーに感謝していたでしょうね。」


「はははははっ。それは光栄だな。」



すると、布団のかたまりがかすかに動いたようだった。

少しは興味を持ってくれただろうか。あんまり長居しても、ウィルの負担になってしまうだろうから一度退室することにした。



「じゃあ、ウィル。私たちは朝の清掃に行ってくるから、朝食はちゃんと食べるんだよ。ここにおいていくからね。」


私は布団の中にいるウィルにそう声をかけて、退室した。







「チッ……。なんだよ、あいつ。また来やがって。」



俺は布団の隙間から、あいつが置いていった朝食を眺めた。そして、朝食の乗ったトレーに手を伸ばした。

……また地面にたたきつけてやろうか。そしたらあいつ、もう俺に構わなくなるだろう。


ズキッ。もう痛くないはずの頬が痛んだ気がした。

チッ……。痛みなんて、もう慣れているはずなのにな。ムシャクシャして、どうにかなりそうだ。






ーー






掃除と昼食の時間が終わり、再びウィルの分の昼食をもって部屋を訪れときだった。

部屋の前には、空のトレーが置いてあった。

うふふふふ。やっと、ご飯を食べくれたみたいだね。いい傾向である。

私は扉をノックして部屋に入った。



「ウィル、昼食を持ってきたよって……あれ?」



そこには、布団のかたまりの主はいなかった。どこに行ったのだろうか。トイレにでもいったのだろうか。すぐにお勉強の時間が始まるし、とりあえず戻ってくることを信じて、昼食だけ置いていくことにしよう。私は空になった朝食のトレーをもって、お勉強へと向かった。

自由時間にもう一度顔を出そうとしたけど、今日は森担当であったことを忘れていた。私は大人しく森へと向かった。


その夜。夕食をもって、朝の3人と一緒にウィルを訪ねた。しかし、再びウィルの姿はなかった。そして、昼に持ってきた昼食も手付かずのままだった。


「流石におかしいわね。もしかして、昼頃からこの部屋に戻ってきてないかもしれないわ。」


「ミーアの言うとおりだな。とりあえず、手分けして探そうぜ。……って、おいパイル! 何ボーっとしてんだよ。お前がウィルの世話係だろ。しっかりしろよ!」


「え……。う、うん! ごめん、そうだね。私は2階を探しに行くから!」




コニーに肩を揺さぶられて気を取り直した私は、そう言い残すとダッシュで二階へと向かった。

昼から帰っていないなんて、どこに行っているのだろうか。孤児院からは基本的に出られないから、外に出たなんてことは無いと思う。きっと孤児院の中にいるはずだ。


私は2階の部屋を片っ端から調べた。しかし、最後の部屋を調べても、ウィルの姿は見えなかった。1階にいたらいいけど、もしいないとしたら……。あっ、そうだ。昨日の夜、歌の自主練をした後に屋上の鍵を閉めただろうか? もししめていないとしたら……。

私は屋上に向かって走り出した。



鍵は……開いているみたいだ。

私はゆっくりと屋上へと続く扉を開けた。そこには、白い髪を風になびかせて、柵に身をゆだねているウィルの姿があった。

ま、まさか……。いや、落ち着くのよパイル。ここは焦って飛び出すのではなく、ゆっくりと語り掛けましょう。




「ウィル、もしかしてお昼からずっとここにいたの? もうすっかり冷え込む季節だから、中に入りましょう。風邪をひいてしまうからね。」


ウィルは私の問いかけに反応することなく、依然として柵に身を預けて夜空を眺めていた。ゆっくり、ゆっくりよパイル。私はゆっくりと歩きながら、再びウィルに語り掛けた。



「朝食は美味しかった? 今日もコニーがあなたのためにと、自分の分を半分も我慢して、あなたの朝食を豪華にしてくれたんだよ。夕食もあなたの分を用意しているから、中に入ってたべよう。あなたを探し回ったおかげで、私も小腹がすいちゃった。少し分けてもらってもいい?」



よし。あと少しでウィルに手が届きそうな所までくることができた。あと、もうすこし……。すると、盛大な舌打ちが聞こえてきた。


「チッ……。何度何度も本当にしつこいな! 俺に構うなと言ってんだろう! 朝食は美味しかったか、だと? そんなもの外に捨ててやった! だから、もう俺に構うなよ!」



盛大な舌打ちのあと、ウィルは大きな声でそう言った。そして、振り返り、紅色の鋭い視線で私のことを睨みつけた。

……そう、朝食は食べたのではなく、捨てたのね。だけど……。



「私たちに見えないように、律儀に外に捨てたのね。それから、そんな痛そうな顔で外に捨てたといわれてもあまり信じられないかな。」


振り返ったウィルの顔は、何とも言えない罪悪感に満ち溢れた顔だった。



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