002. このスキルは役立ちそうにないのですが
本日は2話投稿しました。
現在3話目を執筆中です。近日中に投稿します。
女神様はキラキラした目で俺を見ている。
そんなに楽しみだったの? 俺の能力測定。
「測定にはこちらを使います」
突然、目の前にスマホサイズのガラス板が現れた。
「どうぞ、お取りください」
ガラス板に恐る恐る手を伸ばす。
ガラス特有のヒンヤリ、ヌメヌメ感があり気持ちいい。
重さもスマホくらいだ。
「測定器の左上に〇印があるでしょう。この〇印がある面が表です。また、下側中央にも〇印があります。表の面をご自身に向けたまま下側の〇印を指で押してみてください。ご自身の能力がガラス面に表示されます。」
能力が表示される……いろんな意味で恐ろしい道具だ。
しかし、ちょっと楽しみでもある。
少し期待しながら〇印を押してみた。
するとガラス面に文字と数値が表示された。
―――――――――――――
〇
―個人情報―
名前 サク・クドウ
年齢 19
―能力―
攻撃力 9
防御力 3
生命力 5
魔力 0
すばやさ 9
剣術 9
弓術 9
槍術 0
体術 2
魔術 0
スキル 作業厨
〇
―――――――――――――
年齢19歳!? 33歳だぞ俺は!!
「あの……年齢が間違っているのですが……」
「その測定器に間違いはありません。サク様の年齢は表示されている通りです」
「いや、だって俺は今33歳……」
「実は、転生する際に年齢が変わることがあるのです。若返ることができたみたいで良かったじゃないですか」
(そういうことか。ここに来てから体が軽いと感じていたのは、そのせいだったのか)
非現実的な出来事をすんなり受け入れてしまう自分が怖い。
感覚が麻痺してきたのかもしれない。
「ちょっと私にも見せてくれませんか?」
そういって女神様は俺の隣に来て、前かがみになりながらガラス面を覗き込んだ。
今にも頬同士がくっ付きそうな距離だ。
「ふむふむ、これは素晴らしいですね」
「素晴らしい?」
「ええ、レベル9が4つもあります」
美しい顔がこちらを向いた。
今度は鼻同士が当たりそうだ。
心臓が激しく脈打つのを感じる。
「そんなにすごいのですか?」
「ふふふ、本当にすごいことですよ。過去に多くの転生者のステータスを拝見してきましたが、サク様のステータスはズバ抜けています!」
「最大レベルはどのくらいなのですか?」
「9です」
まさかの最大だった……しかも4つ……
「でも魔力がゼロなのは残念ですね。異世界の醍醐味なのに……」
「訓練すれば伸ばせますよね?」
女神様は残念そうに俯いた。
「魔力は訓練しても変わらないのです。生まれたときから決まっている能力なのですよ……」
「そうだったのですね……」
それは残念だ。
魔法、使ってみたかったな……
しかし、もっと残念そうなのが他にある。
作業厨……絶対にハズレだ。
「スキルの作業厨って何ですか?」
「初めて見ました。私にもよくわかりません」
そうなの? 神様なのに?
「どんな効果があるかわかりませんが、きっとお役に立つでしょう」
本当か? 役立つとは思えないのだが……
女神様に測定器を返すためゆっくりと立ち上がり、それを差し出した。
「あっ、こちらは差し上げます。旅のお供にどうぞ」
「えっ! いいのですか?」
「ええ、こちらも有意義にお使いください」
「ありがとうございます」
【能力測定器】を入手した。
「これで無事、セレスティアに出発する準備ができました。おつかれさまでした」
女神様は満足そうに「うん、うん」とうなずいていた。
「セレスティアに行ったら何をすればいいのですか?」
「自由です。何をしても良いのですよ」
「何をしてもと言われても……」
「そうですね、目的が見つからないのであればドラゴン退治を目指してはいかがでしょうか」
「ドドッ、ドラゴン!?」
「ええ、これはあくまで噂話ですが、セレスティアのどこかに古代人の残した大秘宝が眠っていると聞いています。ドラゴンは古代人によって今もなお封印されていて、この封印を解くことが大秘宝を手に入れるための鍵になっているようです。きっと素晴らしい冒険になりますよ」
神様なのに噂話を信じるんだ。
でもなんだかワクワクする。
「あと、これも噂で聞いたのですが、セレスティアでは最近不可解な出来事が起きているそうです」
この女神様、噂話大好きだな。
「なにやら魔物に襲われる人が増えているとか。特に夜は大変危険だと聞いています。原因はわかりません。用心に越したことはないでしょう」
「ありがとうございます。気を付けます」
さすがファンタジーの世界。
魔物も生息しているんだな。
「あっ、大切なことを言い忘れてました」
女神様は口に手を当てながら言った。
「現地で言葉が通じるように追加スキルを授けます。なんと、現地の文字も読めますよ」
【現地語理解者】を習得した。
おお、素晴らしい。
作業厨よりよっぽど良いじゃないか。
「それではサク様、これでお別れです。道中、十分にお気を付けください。いってらっしゃいませ!」
「女神様、いろいろとお世話になりました。ありがとうございました。では、行って参ります」
再び眩しい光に包まれた――
―――
次に目を開けたときには、見知らぬ町の入り口に立っていた。
木製の看板には「ようこそ、美しき碧の町ポルトへ」の文字が刻まれている。
俺は本当に転生したんだ。
魔法・冒険・ドラゴン。
俺の大好きなファンタジーの世界で人生をやり直すチャンス。
そう思ったら急にテンションが上がってきた。
よっしゃ! この世界、全力で楽しみますか!!
こうして、工藤 作のロマン溢れる異世界大冒険が始まった――
【親愛なる読者の皆さまへ】
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
次回からいよいよ異世界での冒険が始まります。
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