001. 美しくてやさしい女神様
本日はもう1話投稿します。
ブックマークをしてお待ちいただけますと大変嬉しいです。
俺は工藤 作。
33歳の立派な独身貴族だ。
社会人になってから、膨大な仕事に忙殺されてきた。
速く、速く、もっと速く――
仕事が年々忙しくなっているのは気のせいか?
いくら遅くまで残業しても、休日出勤しても、この世界のスピードに追い付くことができない。
「チンタラしないでさっさとやれ! 周りに迷惑かけるな!!」
上司に何度言われたことか。
俺だって、もっと人様に貢献できる人間になりたかったさ。
仕事がない日は家に引きこもり趣味に没頭する。
苦しい現実から逃れるためだ。
今ハマっているのは電子工作。
始めたばかりの頃は、ネットで調べた回路を真似しながら組んだ。
初めてLEDをチカチカさせることができた時は、本当にうれしかった。
――あの時も電子工作に夢中だった。
「あっ、いけね!」
椅子に座って回路を組んでいる時、電子部品を床に落としてしまった。
落ちた電子部品を拾おうと無理に姿勢を変えたら、俺の固い筋肉が悲鳴を上げた。
「イテッ!」
仕事と食料の買い出し以外は家に引きこもっているため、体が思うように動かない。
そのまま体勢を崩し椅子から転げ落ちてしまった。
その後どうなったのか、よく覚えていない。
けれどあの瞬間、俺の人生は大きく変わった。
これだけは確かだ――
~~~
「サク様……サク様……」
若い女性の声が聞こえた。
ハッと目を覚ますと、真っ白な霧に包まれた空間に俺は横たわっていた。
上半身だけ起こして周囲を見渡してみるが、霧以外何も見えない。
ここはどこだろう。
ってか、さっきの女性の声は何だったんだ……
キョロキョロと辺りを見回していると突然、神々しい光で周囲が満たされた。
「うわ! 眩しい――」
思わず目を閉じた。
再び目を開けると、そこには金髪の美しい女性が立っていた。
いかにも女神様というお姿だ。
「サク様、ようやくお目覚めになりましたか」
目を見張るような美女は、やさしく微笑みながら俺のことを見下ろしている。
何て美しいのだろう……
彼女を見上げながらそう思った。
ずっと男ばかりの環境で生きてきたため、女性と話す機会が極端に少なかった。
そのせいか、マジマジ見られるとなんだかドキドキしてしまう。
彼女は続けた。
「おめでとうございます。サク様の転生が決まりました!」
……ん? 転生??
「ようこそ! ロマン溢れる魔法と冒険の世界、セレスティアへ!!」
そう言って彼女は腕を大きく広げた。
どうやら俺のことを歓迎しているというのはわかった。
しかし、それ以外は何一つ理解できない。
魔法と冒険? セレスティア?? さっきから何を言っているのだ。
「随分と動揺されているみたいですね……?」
そりゃそうだ。
むしろこの状況で冷静な方がおかしいだろ!
「あの……あなたは……?」
「ああ、これは失礼しました。私はサク様を異世界セレスティアへとお連れします女神です」
やっぱり女神のコスチュームだったのか。
いや、まさか……本当に女神様なのか?
今まで起きた不思議な出来事を考えると、女神様というのも納得できなくはないが……
とりあえず一番気になっていることを質問してみた。
「ここはどこですか?」
「ここですか。ここはサク様の世界とセレスティアをつなぐ時空の狭間です」
時空の狭間……? 聞くんじゃなかった。
ますますわからなくなった。
俺は今、吐き気がするくらい混乱している。
「あまり難しく考えなくても大丈夫ですよ。」
いや、それは違うぞ女神様!
決して大丈夫ではない!
「なんで俺は異世界に転生することになったのですか?」
「選ばれし者だからです」
「選ばれし者?」
「ええ、あなたは選ばれたのです」
「誰から?」
「異世界の創造主からです」
異世界の創造主……って誰??
女神様の言う通り、あまり深く考えない方が良さそうだ。
この状況を理解しようとしても無理だと思う。
あまりにもわからないことが多すぎる。
とりあえず転生するということを受け入れるしかないようだ。
「これから俺は何をすれば良いのですか?」
「そうですね。まずはお召し物をこの3つの中からお選びください。ちなみにどれも下着付きです」
その言葉を聞いてようやく気が付いた。
俺は下着すら身に付けていなかった。
ずっと全裸で美女と話していたのだ。
急に顔が火照るのを感じた。
「さあ、お選びください」
女神様は何も気にしていない様子で3色の服を提示してきた。
形はどれも同じで、中世の庶民が来ているようなシンプルな服だった。
色は「赤」「青」「緑」の3色。
パッと目に入った「青」を選んだ。
俺の好きな色だ。
「青ですね。良い色ですよね」
そういって女神様が手をかざすと、一瞬で俺の体を服が包んだ。
サイズはピッタリだ。
【青い素朴な服】を入手した。
「こちらの服は汚れに大変強い素材でできています。お洗濯の際は水にさっと浸せば十分です」
本当にそれで十分なのか?
そのうち臭くなりそう……
「あと異世界で使えるお金もお渡ししておきます。有意義にお使いください」
【1000モネ】を入手した。
「あっ、ありがとうございます」
「では、お待ちかねの能力測定に参りましょう」
「能力測定?」
【親愛なる読者の皆さまへ】
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
本日中にもう1話投稿します。
よろしければブックマークをしてお待ちください。
また、★ ★ ★ ★ ★を押していただけますと大変励みになります。
今日が、皆さまにとって素敵な日でありますように。