クエスト0 出会い
「金がねえ…宿もねえ…何でこんなことに…」
「うるさいぞキョウスケ。まだ慌てるような時間じゃない。」
俺の魂の叫びをまるでなんでもないかのような顔で、呼びかけるエルフの男。
何でこいつはこんなに冷静でいるんだ。
そもそも全ての元凶はこいつだというのに。
このエルフの顔の良い男が律儀に一緒にクエストに行ってくれないかと誘ってきたのだ。
遂に俺も冒険者として顔が売れてきたかと喜んで引き受けたのだ。それが間違いだった。
研究の一環だと言って1つでクエストの報酬を超える錬金石をコボルト相手にジャブジャブ使い、費用は折半させるとんでもない男だった。
「キョウスケ、良いことを思いついた。」
絶対に良いことではないのをほんの短い付き合いであるが即座に理解した。
「嫌だ」
「待て、本当にいいことなのだ。」
「……一応聞いてやる」
「パーティーメンバーを増やそう」
「解散だな。」
「まあ待て。せっかちは損をするぞ?」
「お前といることが大損だったんだよ!」
「パーティーメンバーを増やすとキョウスケの負担が少なくなるじゃないか」
「それって被害者が増えるだけでは?」
「より高いレベルのクエストを受ければ良い。」
んな簡単にいってくれるな。
どう考えてもこいつと別れて新たにパーティーを組んだほうが得だ。
よし!そうと決まればさっさと解散しよう。
「キョウスケ俺は君にとても感謝している。こんな俺と組んでくれてありがとう。」
いきなりどうした?
「俺はこんなだから他に組んでくれるやつが今までいなかった。こんなに楽しい時間は初めてだ。」
…はあ。
「キョウスケにこれ以上迷惑はかけられないよな。すまなかった。ここで別れよう…グスッ」
……
「探すだけ探すか…」
「キョウスケ!」
俺は意思がなんて弱いんだ。
こんな性分に生まれたことを呪うしかない。
そうして俺たちは騒がしいギルドへと戻ってきた。
「パーティー募集の掲示板確認していなかったら終わりだからな?」
「ああ!」
なぜこいつはパーティーが組めると確信したような顔をしているんだ。
「…あるじゃん…」
重戦士とシーフのペアが募集をかけている。
俺等魔法戦士と錬金術士のパーティーに必要なピッタリの2つのジョブでレベルも同じくらいだ。
「よし!キョウスケこれで決まりだな!」
「まあまだ相手が組んでくれるかわからないし喜ぶのは早いんじゃないか?」
「いや俺は確信しているぞ」
「やあやあもしかして私達に興味がある感じかな〜?」
俺等にちゃらけた感じで声をかけてきた主は、小柄で栗色の髪に獣耳の少女だった。
「何だこのトントン拍子に進むご都合主義は!」
「ええ!?どしたの?突然。そんなに私達と組みたくなかったの?!」
そう言いながら小さなからだをブンブン振り回してを困惑している。
「い、いや違うんだが、こうも上手く事が進むとリッケルトとグルになって俺を陥れようとしてるんじゃないかと思って。」
「酷いぞキョウスケ!僕を詐欺師か何かだと思っていたのか?!」
「ほぼ詐欺だろ!」
あまりの怪しさに取り乱してしまった。
「すまない、グルじゃないならいいんだ。」
「おお〜何だか面白そうな2人だね〜。私はアミンだよ!プリチーなリカントのお姫様♡」
そういうと彼女はクルリとその小さな体を回転させて決めポーズをした。
うーん、この感じ辛いぞ。
「俺はキョウスケ、ヒューマンだ」
「うんうん!スルースキルも高そうだね!」
「僕はリッケルト。エルフの大錬金術師だ!よろしく頼む!」
「よろしくね!」
「そっちのフードを被った子が重戦士か?」
「うん!恥ずかしがり屋だからフードずっと被ってるけど気にしないで!」
そうリカントの少女が言うとモジモジとしながら奥のフードの女性がペコリと頭を下げる。
「メイリアと言います。」
と蚊の鳴くような声で言うとまたすぐにアミンの後ろへとすすっと戻っていく。
中々クセの強い2人だな…
これは早めにリッケルトもろとも解散してしまったほうが良さそうだ。
「とりあえず全員のステータスを確認したいんだがいいか?」
「そうだね!」
そう言って俺たちはステータスカードを公開し合った。
キョウスケ
魔法戦士 Lv5
武器 鋼の剣
防具 スケイルメイル
スキル
・詠唱加速
魔法
・ファイアブラスト
・サンダーボルト
リッケルト
錬金術士 Lv4
武器 スクロール
防具 シルクの魔法衣
スキル
・風の加護
・錬金石作成
所持品
下級錬金石×16枚
中級錬金石×4枚
アミン
シーフ Lv5
武器 ダガーナイフ
防具 毛皮の鎧
スキル
・暗視
・気配遮断
・地形把握
・弱点特効
メイリア
重戦士 Lv6
武器 鋼鉄の大剣
防具 鋼の鎧
スキル
・肉体硬化
・庇う
・ウォークライ
・狂化
この2人中々クセはあるが強いな。
アミンのスキルは探索や戦闘においても非常に有用になりそうだし、メイリアは狂化は気がかりだが素直に盾役として優秀だ。
リッケルトだけ放りだしてパーティー継続に予定変更だな。
「俺とメイリアが前衛、アミンとリッケルトが後衛だな。」
「そうだな!ガンガン支援するぞ!」
「…」
こいつの一言で忘れていたことを思い出したので二人に伝えることにした。
「いきなりで悪いんだが、2人とも金を貸してくれ。」
初めまして。
これから毎日更新目指して投稿していきたいと思います。
今後本文で説明していきますが、軽く設定解説をさせてもらいます。
公開設定①
世界
アルテラという星には多種多様な種族がいます。
登場人物たちのようにヒューマンやエルフ、リカントや魔族も。
魔族と魔物は祖先が同じであることもあり地域によっては激しい差別があります。
冒険者
冒険者は基本的に学歴がなかったりや身分的に低い人がしかたなく就く事が多く、能力や身分の高い人は騎士団へ入ることが多いです。
社会的には騎士団>冒険者となっています。
土地
現在の拠点はヒューマンの治める大国最大の港町です。
そのため様々な種族の交流があり基本的に差別等が少ない町です。