27
入り口の垂れ幕の隙間から、炎の明かりが漏れている。そしてひそやかなしゃべり声も。
思い切って僕は幕をめくった。そして思わずあっと息を呑む。
「オグマさん!」
「おかえり」
オグマとリート、それにジョムがそこに座っていた。ジョムは固い表情で僕から目を逸らした。
「オグマさんですって?」
チェロアが僕を押しのけ、中に飛び込んだ。リートを見るやチェロアは優しく微笑み、両手を伸ばした。
「リートくん……解放されたのね」
オグマは何故か溜息をつき、その直後に腹を痛そうに押さえた。
「……そうだ」
「隊長はなんて? どうやって釈放してもらえたの?」
「ジョムが助けてくれたのさ。俺の身元を保証してくれた。間諜ではないと立証も」
「そう……なんですか」
不意にオグマの冷ややかな表情が目に入った。ぞっとするほど冷徹な光をたたえた灰色の瞳を、瞬きせずに僕に向けている。強い怒りや憎悪を感じ、まともに受け止めることはとてもできなかった。
「なあヒヅリ」
硬直していた僕に話しかけてきたのはジョムだった。
「……うん?」
「さっきはごめん。オレ、言い過ぎた」
「ああ……僕もだ」
「一体どこに行ってたんだ? 心配したぜ」
「地下に降りてたの。なんとエインも一緒だったのよ!」
チェロアが嬉しそうに話し始める。
ジョムが驚いたり笑ったりしている間もオグマはずっと黙りこくっている。
「……だけど、リートくんって……」
チェロアに水を向けられ、曖昧に微笑むオグマ。
「まあ、何でもいいじゃないか? こうして皆が無事なのだから」
「……それもそうですね」
もう寝るぞとランプに蓋をする。視界が闇に消える最後の瞬間まで、オグマが僕を見ていた気がした。