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「いいか、明日からもオレはお前らとは敵同士だ」
エインが井戸を上がったところで僕らを脅す。
「え……そうなの? 私はあなたと、少しだけ仲良くなれた気がしたけど?」
「ふん、勘違いだな」
僕はチェロアほどは打ち解けられない。
「おいヒヅリ、聞いているのか?」
「あ、聞いてなかった」
怒り出すかと思ったら、エインは予想に反して声の調子を落とす。
「……まあ、楽しかったこともなくはない」
「じゃあ、これを機に弱い者いじめは卒業だね」
「それは保証しない」
やっぱり、こいつのことは嫌いだ。
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
ご丁寧に忠告までして、エインは家に入っていく。
「ジョムもいたらよかったのに」
夜道を引き返しながらチェロアが呟いた。
「……そうだな」
地下にまで降りてようやく頭が冷えたのか、ジョムに悪いことをしたと素直に実感する。
「明日、あいつに謝るよ」
「それがいいわ」
「許してくれるのかな」
「きっとジョムも今頃、謝りたいと思っているわ。それで、今度は三人で冒険しようね」
「ああ」
寒さを紛らわすため手をつなぐ。チェロアの手はしっとりと暖かかった。
家の前まで来て、足が自然に止まった。