11/65
11
チェロアが顔を見せたのは日が暮れてからのことだった。顔色が悪い。気分が悪いのかと思っていると、ぬっと顔を上げ彼女は尋ねた。
「元気?」
「それは僕が聞きたいよ」
彼女に気がついたリートが、飛び上がるように寄ってくる。
「チェロア姉さんっ」
「リート君! 会えなくて寂しかったわあ。いい子にしてた? お腹は空いてない?」
「ハイ」
リートは満面の笑顔でうなずく。やっぱりこいつ、しゃべれるだろ。
「何しに来たんだよ」
「あら、ご飯を持ってきてあげた……」
不自然にチェロアが言葉を切った。窓の外に向けた顔は笑みを残したまま固まっている。
「どうした?」
外からわざと作ったような高い声が。
「どうしたぁ?」
僕はとっさにチェロアを押しのけた。胸が早鐘を打っている。この声にも聞き覚えがある。嫌になるほど。
外にいたのは一人じゃない。でかい図体の男が雁首揃えてずらずらと、皆締まりのないにやけ面でこちらを見ている。
スナネコ団。