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番外編 僕の婚約者~アンナの知らない重すぎる愛

フラン視点で書いてみました。

僕がジュリアンナと初めて会ったのは婚約が決まった1週間後の事だった。


僕との婚約を二つ返事で快諾した女の子はどんな子なんだろう?素敵な優しい子だったらいいなぁと思いながらも、きっと僕の身分を聞いて婚約を決めただけだと半ば諦めてもいた。


僕は正妃様の子供ではない。


国王である父と元子爵令嬢であった側室の母から生まれた後ろ盾のない第二王子。


正妃様が生んだ兄や姉達は僕を「フロイ姫」と呼び、誕生日にはレースやリボンがふんだんに使われたドレスや愛らしい小花の装飾が施されたティアラ等の女の子が身に着ける物ばかり贈られた。


母は「誕生日を覚えていて頂けるだけ有難い事だわ」と言いながらも申し訳なさそうに僕を見ていた。


「きっと何時か必ず、あなたの事をきちんと見てくれる素敵な女の子が現れるわ」


そう言われたけどそうは思えなかった。


初顔合わせの場に現れたジュリアンナは大きな目をクリクリとさせながらもどこか好奇心と緊張感を漂わせていて「リスみたいだな」と思った。


今まで僕が会ったご令嬢は僕を見ると「女の子のようにお綺麗で」と言い、僕の隣に並ぶのを嫌がる素振りを見せた。


露骨に態度に出さなくても表情が嫌だと物語っており、僕の気持ちを悲しくさせた。


うっかりご令嬢達の会話を聞いてしまった時は暫く部屋から出たくなくて閉じこもった。


「姫と呼ばれるだけあって女の子のようですわね」


「あの方と居並ぶと私の方が見劣ってしまいますわ」


「生まれてくる性別を間違えられたのよ、お可哀想に」


「いっその事女の子として嫁がれた方がよろしいのではなくて?!」


大きな不安が顔を覗かせていたのに、ジュリアンナは僕を「王子様」だと言った。


綺麗な顔をしているけど王子様だと、男の子にしか見えないと言ってくれた。


その言葉がどれだけ嬉しかったかきっと誰にも分からないだろう。


『この子は僕をちゃんと見てくれるんだ...』


素直に嬉しかった。


そして同時に『この子を手放してはいけない』と強く思った。


「今は女の子と馬鹿にされていても、大きくなれば立派な姿にきっとなるわ」


母はそう言っていたし、僕もそう思っていた。


大きくなれば僕をきちんと男として見て好きになってくれる女性が現れるのだろう。


でも今の僕を見て「女の子のようだ」と笑った子達を僕はきっとどうやっても好きになんてならないと思う。


今の僕を受け入れ、きちんと男として見てくれる、そんな何よりも得がたい女の子はきっとこの先何処を探しても見つからないと思ったのだ。


そして何より見た目が好みすぎた。


リスのような愛らしさとクルクル変わる表情、ふわふわと柔らかそうな優しい色の髪、ふとした瞬間のドキッとする大人びた雰囲気。


その全てが好ましいと思った。


話してみると会話も楽しく、僕の機嫌を取ろうなんて裏も見えず、素直で明るい。


僕が「姫」と呼ばれている話をした時の怒りを現す表情も、僕を気遣い不安そうに揺れる目も、我儘で繋ぎっぱなしの手を振りほどこうともしない事も僕の心をしっかりと掴んだ。


初顔合わせで僕はすっかり彼女の虜になっていた。


それからはもう彼女しか見えなくなった。


彼女には妹がいて「とても可愛いんです!」と目をキラキラさせて嬉しそうに語っていた。


僕はそんな彼女を見ながら『僕の婚約者はなんて可愛いんだろう』と思っていた。


妹がとても可愛いと言うのでどんな子だろうと思っていたが、実際に見てみるとジュリアンナの方が数段可愛く感じた。


確かに儚い感じの愛らしい子だったが、ジュリアンナに感じるイキイキとした快活さも、表情の豊かさも、溌剌とした輝きも感じられない。


お人形のような女の子。そんな感想だった。



成長していくと僕はやっと男らしさが出て来た。


そうなるとおかしなもので、それまで「女の子のようだ」と僕を半ば蔑んでいたご令嬢達の目の色が変わり始めた。


あからさまな色目を使ってきたり、甘い声で擦り寄ってきたり、僕の関心を引こうと色んな手を講じてきたり。


その全てを「気持ちが悪い」と思った。


僕には愛しいジュリアンナがいるのだから他はいらない。


その愛しい婚約者とは薄くて頑丈で見えない壁を感じているのだが、僕への好意は間違いないと思っているので何時か絶対に取り払ってやろうと思っている。


彼女は僕が何時か彼女以外の女性を愛すようになると思っている節がある。


何故そう思うのか、僕の言動に不安を感じる要素があるのか、どれだけ考えても分からない。


だからそんな事すら考える暇もない程に愛を囁く。


少し鈍感な彼女は僕の気持ちに気付いているのかいないのか微妙な所だがそんなの構わない。


僕が他人の入る隙などない程に彼女を溺愛している事実を周囲に知らしめ、誰も邪魔をしないように、僕らの仲を裂けないように、壊せないように外堀をどんどん高く積み重ねていく。


気付いた時には彼女は僕から逃げる気すら起きなくなる程までしっかりと外堀を固めて、僕の腕の中で何時までも過ごせばいい。


絶対に離してあげないし、僕のこの重すぎる愛に溺れて、僕なしでは生きていけない位になって欲しい。


最近平民の女の子と僕を仲良くさせようとしているみたいだけど、正直僕にはその子の魅力が分からない。


確かに美しい顔をした心根の優しい子だとは思うし、アンナが仲良くしたいのならばすればいいとは思うけど、それ以上でもそれ以下でもない。


心を揺り動かされる事もなければトキメキも感じない。


ただ隣で色んな表情で話をするアンナがひたすらに可愛い。


「食べてしまいたい位可愛い...」


本気でそう思っている。


でも本当に食べてしまったらアンナがいなくなってしまうから食べたりしない、物理的には。


でも何時か、アンナの全てを僕が貰い、奪い尽くして心行くまで堪能し、違う意味で喰らい尽くすつもりではいる。


僕の可愛い、大好きで最愛で唯一の婚約者。


君の全てを手に入れる日をどれ程心待ちにしているのかきっと君は知らないのだろう。


寝ても覚めても君以外考えられない愚かな僕を、どうか何時までも離さないでいてね。


君に囚われた僕を、どうか...。

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