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07

「フラン様...少しお聞きしたい事があるのですが?」


私は意を決してフラン様に尋ねてみることにした。


「フラン様は、その、私の事を、どのように思ってらっしゃるのでしょう?」


「アンナは僕の全てで、僕の中心で、僕の最愛」


「そ、そうですか...」


「もしかして、アンナは僕の愛を疑ってる?」


「そういう訳では、ないです」


「ふふふ...僕の愛を疑うなんて、アンナはまだまだ僕を分かっていないね」


グイッと抱き寄せられたと思ったら唇にふわりとしたものが触れた。


それがフラン様の唇だと気付くのに数秒かかった。


「キ、キス?!」


「やっとアンナにキス出来た」


いたずらっ子みたいに笑うフラン様。


心臓が爆発してしまいそうな程にうるさく騒いでいる。


正直に言おう。


フラン様の婚約者になって4年。


元々の好みとは違うとは言え、甘い美形王子にこれでもか!って程に甘々に接してもらって好きになるなと言う方がおかしい。


そう、私だってフラン様の事が好きなのだ。


でもいずれ離れていく相手だと思っていたからその気持ちに無理やり蓋をして、傷付いても諦め切れるようにマジョリスちゃんとの出会いをセッティングして逃げ道を用意しようとしていただけ。


「私、フラン様を諦めなくてもいいんですか?」


「どうして諦めるの?そんな必要何処にもないよ?君は僕の愛に応えるだけでいいんだよ」


「本当に?」


「まだ僕の気持ちが信じられない?君が何か不安を抱えていて僕の胸に素直に飛び込めないでいるのは知ってたよ?アンナの不安は何?僕では取り除けない?僕はアンナが望めばどんな小さな不安だって取り除けるし、それがどんなに困難な事でも絶対に取り除くつもりでいるよ?いい加減認めたら?アンナは僕の事好きだよね?」


「でも...だって」


「でももだってもないよ。僕は初顔合わせのあの日からアンナしか見えていない。アンナしかいらないし、アンナじゃなければ駄目なんだ」


再び唇が重なった。


啄むようなキスが何度も何度も繰り返される。


「ねぇ、アンナ。アンナは僕の事好き?」


「...好き、です!大好きです!」


何だかヤケクソな気分でそう言うと、フラン様が私をきつく抱き締めた。


「やっと言ってくれた...やっとだ...やっと捕まえた...絶対離さないからね、覚悟して」


「私こそ離してあげませんよ?いいんですか?」


「アンナに縛られるなら本望だよ」


再び唇が重なった。


そのキスはさっきよりも長くて少しだけ深い大人なキスだった。



「アンナ様!すごく綺麗です!」


今目の前でマジョリスちゃんが目をキラキラさせて私を見ている。


私はウエディングドレスを着て式が始まるのを待っている。


平民のマジョリスちゃんが何故今私の目の前にいるのかと言うと、何とマジョリスちゃん、異例の出世(と言うかフラン様がマジョリスちゃんを引き込んで)で私付きの侍女になったのだ。


マジョリスちゃんが聖女認定されるのは来年(正確には半年後)なのだが、そのきっかけとなるマジョリスちゃんのお母さんの原因不明の病気も、実は辺境ではかなりメジャーな流行病だと分かり、治療法もきちんとある事が判明してあっさりと完治。


王都では全く知られていない流行病だったのだが、マジョリスちゃんのお母さんが患ったのならば王都でも流行るかもしれないと治療法も広く流布される事になった。


そしてなんとマジョリスちゃんは私の侍女になってから王城内で癒しの力を目覚めさせてしまった。


「聖女になりたいか?」とフラン様に聞かれたマジョリスちゃんは即答で「なりたくありません」と答えたそうで、マジョリスちゃんは教会に渡される事もなく、癒しの力の事も王家に秘匿された状態で私の侍女をしている。


「どうして聖女になりたくなかったの?」と尋ねるとマジョリスちゃんは「だって聖女になったらアンナ様の傍にいられなくなりますから」と美しい笑顔を見せた。


「私、アンナ様が大好きなんです!殿下があんなにアンナ様を溺愛なさる気持ちがよく分かる程に」


え?何か今この子怖い事言わなかった?!


とても良い笑顔をしてるから、その辺は突っ込まないでおこうと思った。



皆が祝福する中、私とフラン様は夫婦になった。


結婚してからのフラン様は婚約していた時よりも更に甘くなり、私はその甘さに溺れそうになりながらも幸せに浸っている。


ただね、私が茶会や何かで留守の間寂しいからって私の匂いの付いた枕やシーツをクンクンするのはどうかと思う。


フラン様は匂いフェチなの?!


「本当はアンナの下着がいいんだけど、アンナの下着が他の男の目に触れるのは我慢ならないから、枕やシーツで我慢してるんだよ」


それを聞いて倒れるかと思った。


「でもやっぱり本物が一番だ...アンナの匂いは最高だ」


うん、絶対匂いフェチ!もう確定!


「アンナの匂いだからだよ。僕はアンナの匂いだから大好きで、ずっと嗅いでいたいと思うんだ」


はーい、変態がいまーす!ここに変態がいますよー!!


私達は本当の意味で国中が認める仲の良い...良すぎる夫婦として知れ渡り、後に3人の子宝にも恵まれる事になる。


マジョリスちゃんは騎士団の副団長と良い雰囲気になり、数年後その彼と結婚して2人の子宝に恵まれるのだが「結婚しても侍女は辞めません!」の言葉通り侍女を辞めず、後に私が産んだ子達の乳母になるのだった。


教会と関わりを持たなかったお陰で毒殺ルートは当然起きる事はなかった。

これにて終了です。


設定自体緩いので色々と粗ばかりですが、サクッとサラッと読み流して深く追求しないで楽しんで頂けたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、なんて可愛いお話。好きだった婚約者を妹に譲った時点でフラッグは折れていたんだ。ざまぁもなくほんとにやさしい、ちびっとポンコツな可愛いお話でした。ほっこりした気持ちで今日は過ごせます。あ…
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