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03

婚約してからフラン様と私は順調に仲良くしている。


現在私は15歳。聖女が現れるまであと3年だ。


私と婚約してからというもの、フラン様は剣術を学び始め、勉強も頑張るようになったらしい。


私はその姿を全く見ていないのだが、フラン様のお母様である側室のフィリア様直々にお礼を言われたりしているので本当なのだろう。


確かにこの4年でフラン様は体付きも少し逞しくなり、身長なんて私よりも小さかったのに今では私よりも5cm程大きくなられた。


「フロイ姫」なんて呼ばれていたのが嘘のように顔付きも男っぽくなり、それでも愛らしさも残していて、今では第一王子以上の人気ぶりだ。


それはいいとして、ここ最近気付いたのだが、私とフラン様の距離感がおかしい気がする。


最初は全く気にしていなかったし、寧ろ当たり前だと思っていたのだけど、最近それが違うのだと気付いたのだ。


兄にも婚約者が出来、よく我が家でお茶をしたりして仲良くしている姿を目撃するようになったのだが、何故か婚約者同士なのに向かい合わせの席に座り、庭を散策中にも手も繋がず、何となくの距離を保って過ごしている。


仲が良いはずなのにおかしいなぁと思って聞いてみたら「いや、それはお前と殿下がおかしいんだからな!」と兄に言われたのだ。


私とフラン様は初顔合わせ以降、お茶をする時はフラン様が私の真横に座り、歩く時は常に手を繋がれている。


「あーん」と食べさせ合うのも当然で、フラン様には「婚約者同士なら当たり前だよ?」と言われてきた。


それを見てうんうんと頷く侍女達の様子も見ていたので「これが当たり前なのか」と思って今まで過ごしてきた。


でも兄が言うには違うそうだ。


婚約者と言えどまだ婚姻前の男女だから適度な距離を持って接し、無闇に触れ合う事はないのだとか。


その事をフラン様に聞いてみると「まぁ、世間一般的な婚約者はそうかもしれないけど、僕らは違うでしょ?」と謎の返答が返ってきた。


「私達は世間一般の婚約者とは違うのですか?」


「うん、違うよ。だって僕は王族だし」


「王族だと違うのですね...」


何だが腑に落ちなかったがまぁそんなものなのかと思ったのだが、家でその事を兄に話すと腹を抱えて笑われてしまった。


「王族だったら尚更ベタベタなんて出来ないだろう!お前、殿下の手の上でいいように遊ばれてるな」


ゲラゲラと笑う兄を睨み付けた。


「それだけお前が殿下に気を許されてるっていう証拠だろ?怒る事はないじゃないか」


最終的にはフォローされたが、どうにも納得いかない。



「僕達が婚約して4年経つね」


「そうですね」


「僕達ももう15歳でデビュタントの年だ。デビュタントでは是非僕に君をエスコートする栄誉を頂けるかな?」


「はい、勿論です」


「所でね、デビュタントを迎えたら僕達も成人とみなされるよね?」


「そうですね」


「で、少し早いんだけど、そろそろ結婚式の日取りを決めようって話が出ているんだけど、いいよね?」


「え?!結婚式?」


「そう、僕らの結婚式。あれこれ準備が必要だから来年か再来年になると思うんだけど」


「来年か再来年?!」


ちょっと待って!


来年か再来年って、聖女が現れる前じゃない?!


え?!どうなってるの?!何でこんなに早くに結婚の話が出るの?!


聖女が現れる前に結婚して、結婚してから2人が惹かれ合うのを見せられるパターン?


それって地獄じゃない?!


王族は離婚が認められないから私の死亡率爆上がりしちゃわない?!


「早過ぎませんか?」


「ううん、寧ろ僕的には随分と待った方だと思うけど」


「待った方?」


「だって僕は15歳でデビュタントを迎えたら直ぐにでも結婚したいと言っていたんだよ。だけど陛下も母上も首を縦に振ってはくれなくて、だったらデビュタント以降なるべく早くにってお願いしたら、準備も含めて来年か再来年でって事になったんだよ」


「な、何故?!」


「だって、名実共に君だけの王子様に早くなりたくて」


「王子様...」


あれか?!初顔合わせの時の「王子様」発言か?!あれが尾を引いてるのか?!


でも、あんな事で?!


フラン様、正気ですか?!


「フラン様?ちょっと落ち着きましょ!ね!」


「僕は十分落ち着いてるけど?」


「焦って結婚して、後から本当に好きな人が現れたらどうするんです?」


「そうだねー、アンナは可愛いから、早く結婚して悪い虫が付かないようにした方がいいと思うんだよ。安心して!僕はアンナだけだから」


「いやいや、まだ若いんですから、フラン様の本当の運命の人が現れるかもしれませんよ?」


「うん、やっぱり式は早いに越したことはないかもね!君は僕の運命の人だ!なんてアンナに熱を上げるやつが現れたら大変だもの」


何だろう?この微妙に噛み合っていない会話は?


私はフラン様の事を言っているのに、フラン様は私に悪い虫が付くことばかり気にしている。


私に悪い虫なんて付くはずないのに。


妹はとびきり可愛いが私はそこまで可愛かったり美人だったりはしない。


不細工ではないし、顔的に見るとそこそこ整ってはいるけど妹に比べたら見劣りする。


フラン様の婚約者であり、容姿もそこそこな私に言い寄ってくる勇者なんて現れるはずがない。


因みに聖女もとても美人だ。


妹や聖女程の美貌があれば例えフラン様の婚約者だとしても恋焦がれ、想いを暴走させてしまう勇者はいるかもしれないけど、私如きには絶対有り得ない。断言出来る!


「アンナの花嫁衣裳姿...綺麗だろうなぁ」


フラン様!戻って来て!現実を見て!


遠くを見ながらうっとりとしているフラン様。


その隣で手をしっかりと握られながら私は1人で焦りまくっていた。

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