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02

遂にやってきた王子との婚約話!


来るとは思っていた。


逆に来ない方がおかしいと思ってもいた。


現在この国で王子の婚約者となりうる王子と歳の近い令嬢の中で一番家格が高いのは私だったから。


そしてチェスタートン家は王族と若干の敵対関係を持つ貴族派には属しておらず中立を保っている家の為政治絡みでも問題はない。


某伯爵家にも私と同じ歳のご令嬢がいるのだが、その家はバリバリの貴族派であり、何かにつけて政策等に横槍を入れる事でも有名なお家なのでないだろうと踏んでいた。


妹を死亡ルートから脱却させて自分がそのルートに乗っかると決意しているもんだから、今更婚約話すら来ないなんて事が起きたら泣いてたかもしれない。


『だったら私、エルドリック様と婚約したかったー!!』と本気泣きしていたかもしれない。


妹も満更でもない顔をしていたし、今ではすっかりと仲の良い婚約者同士になっているが、私だって一目惚れする位の勢いで好みだったのだ、エルドリック様が。


少し冷たそうに見える切れ長の目がふと柔らかく微笑みを浮かべると、もう胸がキュンとなる。


あの笑顔の破壊力ったらない!


『顔、王子と交換出来ないかなぁ』とか本当に不敬過ぎる事を考えてしまう程にドストライク中のドストライクで好みだったのだ。


それを妹に押し付けてまで王子の婚約者になると決めたのだから、婚約話が来ないなんて未来は考えられなかった。


だから話が来たと聞いた時は二つ返事でOKした。


私の勢いの凄さに両親がドン引きする程に。


そして決まった王子との婚約。


初顔合わせで初めて会った王子は、私が知る挿絵のイラストよりも幼く、可愛らしいお人形のようだった。


互いに挨拶をし、仲良くなる為に2人きりにさせられ、王城の庭を案内してくれる王子の数歩後ろを歩いた。


「君は、僕との婚約を喜んで受けてくれたと聞いた...本当に僕で良かったの?」


聞かれている意味が分からなくて「へ?」と変な声が出た。


小説では17~18歳頃の王子から語られていたので幼少期の王子の事は知らないのだが、王子って幼少期は問題ありだったのだろうか?


「君、知らないの?僕の二つ名」


「二つ名、ですか?」


「うん...王子宮のフロイ姫...」


「フロイ、姫?」


王子はフロイルード・ヴァリアグスという名前で愛称はフロイだった。


でも姫とは何ぞや?


「どうして姫なんですか?」


「それは、僕の見た目が、女の子、みたいだから」


確かに今の王子はお人形みたいに可愛らしいから、ドレスなんか着せたら女の子ですって言っても通用すると思う。


だけど正真正銘の男の子。


この時期の男の子ってそんな風にからかわれると反発して捻くれるか変にいじけて内向的になる可能性高そうじゃない?!


誰だよ、からかってるやつは!


王子、内向的になりつつあるじゃんか!


「殿下はとても美しいお顔をされていらっしゃいますが...私にとっては間違いなく王子様です」


もう半ばヤケクソ気味でそう言うと、王子はパァっと顔を明るくして私を見た。


「僕が、王子様?」


「はい、王子様です」


だって王子だし、王子様で間違いない。


将来的にアイドル系ではあるが立派な美形王子に成長するのも知っているし、姫と言われても中身は男の子だし、王子様でしかない。


「君には僕が男の子に見える?」


「男の子じゃなかったら何なのです?」


「姫に、見えない?」


「王子様にしか見えません」


「ありがとう!」


とても嬉しそうに私の手を両手で握ると大きくブンブンと振っている。


ほんのりと染まった頬に嬉しそうに輝く目が実に愛らしい。


なんだろうなー、この感じ。妹に感じる『可愛い!』ってのとはまた違うけど、どことなく同類の擽ったくもほんわかする感情。


「僕の事はフランって呼んで!君の事は...アンナって、呼んでもいいかな?」


「どうぞ、お好きなように」


「ありがとう、アンナ!これからよろしくね!」


「こちらこそよろしくお願いします、フラン様」


初顔合わせは上手くいったようだ。


親が迎えに来るまで私はずーっと片手をフラン様に握られ、帰る際には『キューン』と子犬が寂しそうに鳴く幻聴が聞こえそうな程に何とも悲哀に満ちた目を向けられてしまい、思わず「また会いに来てもいいですか?」と訊ねると今度はブンブンと振る尻尾が見えそうな程にキラッキラした目で「うん!僕も会いに行く!」とそれはそれは嬉しそうに言われて、王子の姿が豆粒位に小さくなっても手を振られている事が分かるまで見送られて家に帰った。


「随分と仲良くなったようだな」


馬車の中でお父様にそう言われて頭を撫でられた。


「フロイルード殿下は側室様がお産みになった王子で後ろ盾も弱く、姫等と呼び蔑む者も多いと聞く。ジュリアンナは殿下の味方になって差し上げなさい」


「はい...」


聖女が来るまでは味方でいましょう!


聖女が現れたら私なんてお払い箱になるだろうから、それまでは仲良く致しましょう!


で、聖女が現れたら「私、邪魔しませんよ!」と内外にアピールして、毒殺ルート回避するんだから!


まぁ、どの時期のどのタイミングで何に毒が混入されるのかも知ってるから、ある程度の回避も出来るはずだし、後に聖女を好きになる事も知ってる訳だからフラン様に惚れる事もないと思うし、きっと大丈夫!


婚約解消になったら私は傷物令嬢扱いになるだろうけど、死ぬよりは全然マシ!


生きてるだけで丸儲けって言葉が前世であったけどその通りだと思う。


まずは生きる事!生き延びる事に尽きる!


聖女が現れるまであと7年。


その間は平穏に過ごせるから、その間はフラン様と普通に仲良くしてればいいよね?

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