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69.認定テスト

 翌日、俺たちは王城の中で長蛇の列に並んでいた。


「はわわわ……見てくださいアスラさん! どこを見てもキラキラの装飾でいっぱいです!」


 俺たちと同じ列に並んでいる人は誰もが筋骨隆々で、中には俺の背丈ほどある大剣を背負っている大男もいる。


「にしても、ついてたわね。国王の護衛を選出するテストが――」


「ああ、まさか今日だとはな」


 昨日、ギルドで出会った情報通の男がそう言ったのだ。

 会場である王城の中には、冒険者ギルドで見たような――いや、それ以上に洗練された面子が揃っている。


「次の方、どうぞ」


 辺りを見回していると、いつの間にか俺たちの順番になっていた。


「本日は護衛任務の試験にご参加いただきありがとうございます。登録ご希望は3名様でよろしいでしょうか?」


「ええ、それでお願いします」


「でしたら、こちらのプレートをお持ちいただいて今しばらくお待ちください」


 四角形のプレートには34と書かれており、どうやら俺たち3人はこの試験に臨む34組目になるようだ。

 いったいこれからどんな試験が始まるのだろう……と思いながら、俺はプレートを懐に入れる。


 ロビーのやや剣呑な雰囲気の中で待機していると、奥の扉が開き、執事風の初老の男性が出てきた。


「17番でお待ちの皆様、部屋にお入りください」


 その言葉とともに、隣の席に座っていた4人組のパーティが立ち上がり、男性の方へ歩いていく。

 どうやらあの部屋で試験が行われているということだろう。


「ねえアスラ、試験の内容ってどんなだと思う?」


 扉が閉まるのを見ながら、リーリアが呟く。


「あの情報屋はわからないって言ってたしな……やっぱり面接とかじゃないか?」


「でも、募集の要綱には装備をしてくるようにとあった……何か不自然じゃない?」


「ああ。試験を受けるパーティは、皆あの部屋に入っている。これだけの人数をテストするのだとしたら、相手するのも一苦労だ」


 訝しみながらしばらく待っていると――ついにその時が来た。


「34番の皆様、部屋にお入りください」


 さっきと同じ初老の男性が俺たちの番号を読み上げる。俺たちは立ち上がり、男性にプレートを手渡した。


「では、行きましょう」


 扉の向こうは廊下になっており、俺たちは男性の後に続く。


「私から、簡単に試験の内容を説明させていただきます」


 歩いていると、男性が話し始めた。試験の内容は気になっていたところだ。


「これから皆様には、一人の男(・・・・)と戦っていただきます」


「なるほど……その人と一対一で戦って、実力を見てもらうということですか」


「いいえ」


 ティナの言葉を、男性は一蹴した。


「貴方たち3人同時に挑むのです。その一人に」


「いやいや! いくらなんでもそれは……そんなことしたらその人にも疲労の蓄積が――」


「疲労の蓄積で言うならば……彼は既に33組の冒険者たちを相手しております。大した問題にはなりません」


 33組を、相手に――!?

 信じられない。俺たちの前に並んでいた冒険者パーティを33組、全て倒したと言うのか!?


 彼らの実力がどれほどだったのかはわからないが、少なくともA級冒険者も交じっていたはずだ。


「大変お待たせしました。この扉の先に、試験官がおります。ご武運をお祈りしております」


 そんな連中を相手に百戦錬磨なんて、一体どんな人物がこの先で待っているというんだ!?


 俺は緊張しながら、促されるままに扉を開けた。


「君たちが次の挑戦者か」


「「「……!!」」」


 扉の向こうは大広間になっていた。普段は訓練場にでも使われているその広い空間の真ん中に、一人の男が鎮座していた。


 一番に目につくには、圧倒的に太い腕。山のように広い肩幅から伸びる腕は、鎧の上からでも分かるほど筋肉で満たされている。

 そして、鼻の上に真一文字に刻まれた一本の傷。それは強面な男の顔をさらに厳めしくしていた。


「やろう。時間がもったいないからな」


 男は立ち上がると、傍らにあった木の槍を握り締めた、

 男の体格は大きく、優に2メートルは超えている。彼の持つ大槍が相対的に小さく見えるほどだ。


「名乗らせてもらおう。私はベルグ。この王国の戦士長だ。君たちがやることは一つ。どんな手段を取ってでも私から合格の言葉を引き出すことだ」


「だが、俺たちは武器を持っていて、あなたは木の槍だ。それに、人数差もある」


「――この質問も、今日何度目だろうな」


 ベルグはふっと笑い、俺たちを見た。


「構わぬ。私はこの国を守る槍として、一日たりとも休むことなく鍛錬を続けてきた。この程度で折れる槍ではない!!」


 ベルグは勢いよく槍を振り回すと、その矛先をこちらに向けた。

 とてつもない迫力だ。ギルドにいる、威勢だけのゴロツキとはまるで違う。


 彼が放つオーラは、本物の実力に裏打ちされた自信だ。

 だったら……俺も全力を以って相手する!


「うおおおおおおお!!」


 俺は地面を蹴り、ベルグに向かって剣を振り下ろした。


「……!!」


 俺の剣とベルグの槍が、交じり合う。

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