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67.村での夜

 <生産>は放置しているだけでアイテムを増やすことが出来る。時間になったらウィンドウを開き、回収するというお手軽さだ。

 とはいえ、しばらくはこの村に滞在する必要があるわけで、出発は明後日の朝頃になるだろうという見込みになった。


 その間、俺たちはリカルドさんをはじめとした村の人たちに猛烈に感謝され、存分にもてなされた。

 夜になり、夜風に当たっていると、リーリアが隣にやってきた。


「アスラも眠れなかったの?」


「奇遇だな。リーリアは枕が変わると眠れないとかだろ」


「はぁ!? そんなことで眠れなくなるわけないじゃん!」


 これは図星だな……。


「でも、あんただって同じような理由で寝れないんでしょ?」


「残念だがそうじゃない。少し、考え事がしたくてな」


 俺はウィンドウを開き、クエスト一覧を開いた。


「それって、もしかして……」


「ああ、そうだ。新しいクエストだ」


 このリカルドさんの村は、どうやら王都から100キロメートルの範囲にあったらしい。

 俺はその中から一つのクエストを選択し、リーリアに見せた。


――


『がんじがらめの国』 ★★★★


【概要】


【報酬】


【条件】

このクエストは、『眠り姫のめざめ』をクリアした場合に表示されます。


――


「これって……」


「ああ、俺たちが探していたクエストだ」


 運命の糸(スレッド)に関係のありそうな言葉の入ったクエストを探したところ、ワイズマの最期の言葉にあったものが見つかった。

 おそらく、このクエストを追いかければ運命の糸(スレッド)にたどり着くことが出来るはずだ。


「『がんじがらめの国』を受けるには、他にクリアしないといけないクエストがあるんだ……前の私のパターンと同じだね」


 そうだ。条件があるということは、このクエストは受注すら一筋縄ではいかない。

 ましてや、このクエストの難易度は4だ。ワイズマの一件を超えるような規模であることは想像するに容易い。


 リーリアに促され、俺は青く変化した『眠り姫のめざめ』をタッチしてみる。


――


『眠り姫のめざめ』 ★★★


【概要】


【報酬】


【条件】

このクエストは、『王を守る者』をクリアした場合に表示されます。


――


「まだクリアしないといけないの? 前途多難だね……」


「だが、このクエストがそれだけ重要な鍵を握っていることの裏返しでもある」


 俺はさらに『王を守る者』をタッチし、詳細を確認する。


――


『王を守る者』 ★★


【概要】

アストルデア王国の国王をパレードの暗殺から守り切れば達成。


【報酬】

・経験値50


【条件】

このクエストは、『糸を断ち切れ』をクリアした場合に表示されます。


――


 アステルデア王国といえば、俺たちが属する国の名前。

 要は、最後に出てきたこのクエストでは国王を護衛しなければいけないのだという。


「いよいよ国王が絡んでくるって……大規模になってきたね」


「ああ、だが確実に道は開けてきてる」


 条件欄にワイズマのクエストが記載されているということは、今回のクエストはあの事件と地続きにあるということだ。

 すなわち、ほぼ確実に運命の糸(スレッド)が関わっている。


「だいぶ順調な気がしてるけど? アスラは何か心配なの?」


「いや、心配ってわけじゃないが……少し気になってな」


「気になる?」


 首を傾げるリーリアに、俺はウィンドウのある箇所を指した。

 そこは、クエスト名の横。難易度が2だと示されているところだ。


「なに? 星が二個並んでるだけじゃない?」


「それはそうなんだが……思わないか? あまりにも難易度が低すぎる(・・・・)って」


 リーリアはそれを言われてハッとしたような顔をする。


 過去のパターンからして、難易度2のクエストはそこまで難しいものではなかった。


 もちろんその過程で様々な苦難があったわけだが、ワイズマの件のクエストが軒並み難易度3だったことが違和感を加速させた。

 一国の王を守るなんて大仕事で、難易度がこれまでより低いなんてことあるだろうか?


 俺が星のマークを凝視して沈黙していると、リーリアが肩を叩いてきた。

 視線を彼女に移すと、リーリアはなぜかサムズアップをしていた。


「大丈夫!」


「……なんだそれ?」


「な、なんだって言うな! 元気づけてあげてるのに!」


 照れ隠しのためか、リーリアは俺の背中をバチンと叩くとそっぽを向いてしまった。


「……アスラはいつも頑張ってるから。きっと大丈夫って思っただけ」


「それで大丈夫か……それならそうと最初から言えばよかったのに」


「うるさい! どういえばいいかわからなかったの!」


「リーリア、変わったな」


 最初に会った時の印象とはまるで違う。だいぶ明るくなったな。


「なに? 前の方がよかったってこと?」


「いや、今の方がずっといいよ」


 リーリアは顔を真っ赤にしながら俺の方を見つめた。


「いつも助かってるよ、ありがとう。リーリアと一緒ならどんな難易度でも大丈夫だな」


 リーリアは俺の言葉を聞くとますます顔を真っ赤にし、くるりと方向を変える。


「あ、当たり前でしょ! アスラは私がいないと駄目なんだから! じゃあ私は寝るから!」


 リーリアは早口でまくし立てると、そのまま走り出す。

 ……そっちは宿と逆方向なんだけどな。


「……大丈夫、か」


 リーリアから言われたその言葉を反芻すると、俺は澄んだ村の空気と一緒にそれを大きく吸い込んだ。

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