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60.往生際の悪さ

「これは言い逃れが出来ないな。それとも、この状況を覆せるだけの説明があるのか?」


 ぐぬぬぬぬ、というロンバルドの唸り声が聞こえてくる。さすがにかなり焦っているようで、ボーアンとミョルガは彼の顔を伺っている。


「……説明なら、あるさ」


 ロンバルドは三歩ほど前に出ると、ストレスを抑えるように大きく息を吐き――、

 次の瞬間。剣をシャロンに向けて思い切り振り上げた。


「<超絶無双バスターソード>!!」


「<絶対障壁>」


 ロンバルドが放った衝撃波は、シャロンの手前までほとばしった後で、あっさりと打ち消されてしまった。

 無駄だ。<絶対障壁>は最大4人まで効果の対象に取れる。こいつの攻撃がシャロンに届くことはない。


「うああああああああああああああ!! ふざけんな!! こんなこと、あっていいわけねえだろうがああああ!!」


 ロンバルドは地団駄を踏んで吠えまくると、俺の方を睨んでくる。


「お前のせいだ、アスラ!! 全部上手くいってたのに、お前のせいで台無しだ!!」


「それだけの計画だったってことだよ。モンスターと追いかけっこをさせて、根性焼きをしていじめていた雑魚一人に破綻させられてる程度のな」


「その喋り方から何から……全部ムカつくんだよ!!」


 ロンバルドは負け惜しみに叫ぶと、覚悟した目でボーアンとミョルガの方を向いた。


「お前ら……あいつら全員殺すぞ!」


「「え!?」」


 いきなりのロンバルドからの打診に、さすがに二人も狼狽える。


「ここでこいつらを殺せば、まだなんとでも証拠はでっち上げられる! ……やるしかないんだ!」


「やめろ! もう無意味なのはわかってるだろ!!」


 俺の制止も聞かず、三人はこちらを睨み据えると、さっきと同じように攻撃の態勢に入る。


「<超絶無双バスターソード>!!」


「<トラッキングボンバー>!!」


「<サンダーレイン>!!」


 三人は暴れ回るようにして各々の技を放ち、洞窟の中で爆発音を鳴らしまくる。

 ゴゴゴゴゴゴ、という地響きとともに、洞窟の上から礫のようなものが落ち、地は裂け、エネルギー弾が跳ね回っていく。


「……シャロン。ここから先は正当防衛だよな?」


「ああ、洞窟が崩れてはたまらないからな。私も目を瞑ろう」


 <絶対障壁>の対象はティナ、シャロン、リーリア、傘下の男の4人。

 傷つく奴は一人もいない。これで――好きなようにやれる。


「アスラァ! これでも、食らえェ!!」


 前方から迫ってくる<超絶無双バスターソード>の衝撃波。俺は避けることをせず、そのまま真っすぐに歩き――、

 一閃で薙ぎ払った。


「なんだ!? あいつ、まだスキルを持ってるのか!?」


「今のは普通に振り払っただけだ。それより、自分の心配をした方がいいぞ」


 俺は剣を鞘に納め、指をポキポキと鳴らす。


「な、なんで剣をしまったんだ……!?」


「決まってるだろ。今から1人につき100発――拳を合計300発叩きこむんだ」


「う、うわあああああああああああああ!!」


 ミョルガは雷魔法をむやみやたらに撃ち込んでくるが、<疾風怒涛翔>で全て避けることが出来る。

 懐まで迫ったところで、ミョルガの顔面に拳をめり込ませた。


「うごおおおお……」


 あまりの激痛にミョルガが白目を剥く。気を失われる前に、首筋に電流を流して意識を取り戻させた。


「楽に乗り切れると思うなよ?」


 そのまま首筋を掴むと、腹部に20発のパンチを叩きこんだ。


「嫌だ……もう殺してくれ……」


「まだ20発しか殴ってないぞ? 俺の15分の1で音を上げられたら困る」


 そう。3年前、俺はお前らから300発も殴られたんだ。あの時の苦痛は今でも忘れられない。


「や、やめろアスラ! そんな憂さ晴らしなんてしてどうなる!?」


「どうにもならない。俺がやりたいからやってるんだ。そんなことより、自分の心配をしろって言っただろ?」


 ミョルガを50発ほど殴ったところで、今度はロンバルドに肉薄する。

 ロンバルドは咄嗟に剣で俺の殴打を防ごうとするが、刃の表面と拳がぶつかった瞬間、まるでガラスのように剣が粉々になってしまった。


「今のは一発にカウントしないからな」


「ああああああああああ!!」


 刹那、ロンバルドの鋼鉄のような腹に叩きこまれる一撃。それは容易にロンバルドの巨体を吹っ飛ばした。


 それから、俺は3人を殴りまくった。拳が叩き込むごとに、これまで奴らから受けた苦しみが蘇る。その感覚に身を委ねながら、俺は一撃一撃に渾身の力を込めた。

 実力差で言えば、今のあいつらと俺より、過去の俺たちの方が大きかっただろう。受けた苦しみは決して同等ではない。


「――ふう」


 時間にして2、3分くらいだろうか。きっちり300発の攻撃を終えた俺は、ようやく息を吐いた。


「アスラ、ご苦労だったな。……それにしても、少しやりすぎじゃないか?」


「俺としては1人300発ずつでもよかったんだが……まあ多少は心が痛まないでもないからな。せめて街に帰ったらハイポーションくらいは飲ませてやるさ」


 グレートボスの不正により、俺の勝利は確定した。こうして実力で倒したこともあって、冒険者たちは俺の実力を認めてくれるだろう。

 おまけに、クエストもクリアできた。目的は、全て達成だ。


「……ちょっと待って! 何か聞こえる!」


 その時、リーリアが声を上げた。

 俺も慌てて耳を澄ませてみると――確かに、どこからともなく足音が聞こえる。それに、地響きが少しずつ近づいてきているような――?


「何か来るぞ! 皆、入口に向かえ!」


 何か、巨大なモンスターがこっちに向かってきている! くそっ、クエストは完了しているはずなのに、どうして――、


「……まさか」


 俺は慌ててクエストを再確認してみる。


――


『本物のボス』 ★★★


【概要】

ギルド跡地にいるシャロンに話しかけ、決闘の申請をする。

モスラヴィル火山でボスを倒せば達成。


――


 違った……! 俺は勘違いをしていた。

 この概要の『ボス』はグレートボスのことじゃない。この洞窟に住まうボスモンスターのことだ!

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