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59.グレートボスの戦略

 なんだ……? まだ何か作戦でもあるのか?


 ロンバルドが肩を叩いたのは、傘下パーティの男だった。


「奴のあのバリアの能力を封印しろ!」


「わかりました! <秘匿(ヴェイル)>!」


 ロンバルドの指示を聞いた男が両手の指を組む。すると、途端に俺の<絶対障壁>に変化が起こった。


「障壁が……消えた!?」


 なるほど、あの男のスキルは相手のスキルを使えなくするのか。

 さしずめ、両手の指を組んでいる間だけ発動するとかそんなところだろう。


「あの邪魔なバリアさえなければこっちのもんだ! お前ら、畳みかけるぞ!」


「「おう!」」


 ロンバルドが声を上げると、それに同調した二人も水を得た魚のように元気になる。


「<超絶無双バスターソード>!!」


「<トラッキングボンバー>!!」


「<サンダーボール>!!」


 グレートボスの三人は、これを好機とばかりに全員で攻撃を打ち込んでくる。

 地面を駆ける衝撃波。ボーアンの一閃で現れる謎のエネルギーの球。ミョルガが放つ攻撃魔法。


 まるで大雨に遭遇したような一斉攻撃。隕石でも降ってくるような衝撃を前に、俺は――。


「<疾風怒涛翔>」


 地面を蹴って後退すると、3人が放った攻撃は俺がいた場所の地面で集まり、爆発した。


「あいつ……避けやがった!!」


「いや、それはそうだろ……」


 こいつらの攻撃をあと20分よけ続けるのは容易い。このまま奴らの吠え面を見ながら時間を潰してもいいが――、


「――ッ!」


 その時、地面からボーアンが放ったエネルギー弾が浮かび上がってきて、再び俺の方へ迫ってくる。


「<トラッキングボンバー>は、対象に当たるまで自動で追尾するぜ! さあ、避けても避けなくても、当たっちまうぞ!」


 接近してくるエネルギー弾を避ける。上に昇って行ったそれは、おそらく天井に当たって戻ってきた。

 なるほど、<ダークスフィア>で洞窟内の形状がわからないから、どこから飛んでくるか予想が出来ない。いいコンボだな。


「だが――あまりにも遅いのがネックだけどな」


 どこから跳ね返ってくるか見えなくても、弾速が遅すぎて簡単に見切れる。これを後20分なら楽勝だ。


「くそっ、これじゃ……カゲロウの奴らとやった時と同じじゃねえか!!」


「なあ、俺は本当にこのままでいいのかよ!? 奴のスピードのスキルを打ち消した方がいいんじゃないか!?」


「そしたら今度はバリアを張られるだろうが! お前はそのまま続けてろ!」


 その時、ロンバルドと傘下パーティの男が揉めているのが見えた。


 ……そういえば、あいつはなんでここに来たんだ?

 奴のスキルは『相手のスキルを打ち消す』効果を持っている。スキルを打ち消せば無能力になるような人物を、スキルの数で勝ち誇っていたグレートボスの連中がわざわざ連れてくるか?


 考えられるのは、相手の一番強い能力を打ち消せばアドバンテージを取れることを評価された可能性。だが、それは固い連携が必要になる。

 そしてもう一つは、単なる人数合わせである可能性。だが、足場がなくなったあの切迫した状況でこいつを連れてくる理由の説明にはならない。


 ……まさか!


「おい! そこの<秘匿(ヴェイル)>の男! ここから離れろ!」


「はあ? なんでお前の言うことを聞かなくちゃいけねえんだ!」


「お前、騙されてるんだよ! グレートボスに!」


 途端、グレートボスの三人の顔が引きつるのが見えた。やはり図星か!


「嘘を吐くな! <秘匿(ヴェイル)>を解除してほしいからって、適当なことを言ったって無駄だぞ!」


「考えてみろ! もしグレートボスの三人が、<ダーク・スフィア>で証拠が残らないように俺を殺したら、その後どうなる!?」


「どうなるって……なんとかして逃げるんじゃないのか?」


 こいつ、本当に何も考えてない!


「違う! お前に罪をなすりつけるんだよ!」


「……え?」


 グレートボスはギルドの支配者になることを目的にしている。あと一歩で目標が達成するというのに、そんなところで犯罪者になんてなりたいわけがない。

 となれば、パーティの外部の人間に罪をなすりつけるのが最も合理的で楽だ。


 そして、その餌食になったのがこの傘下パーティの男というわけだ。


「そんな……嘘だろ!? 適当なことを言うなよ!」


「適当なんかじゃない! 今すぐここから離れないと、証拠をでっち上げられるぞ!」


 俺のこの言葉に、男を騙す意図はない。例え奴が<秘匿(ヴェイル)>を解除してもしなくても、20分逃げ切る自信はあるからだ。

 そんな意志が伝わったのか、男はグレートボスの方を振り返ると、きっと睨み据えた。


「お前ら……騙してたんだな。俺のことを」


「おい、なびくな! あいつは自分がピンチだから言ってるだけだよ!」


「だったら、奴を殺した後で俺たちが全員罪に問われない方法とやらを説明してもらおうじゃねえか……!」


「……くっ!」


 三人は一様に黙りこくり、視線を逸らす。三人のそんな態度は、男の不信感をピークまで高めた。


「やっぱりそういうことだったんだな……お前たち、絶対に許さないからな!」


 その刹那、俺の<絶対障壁>が元に戻り、代わりに周囲を包んでいた闇が消えていく。


「チェックメイトだな」


 男は<秘匿(ヴェイル)>の対象を<ダークスフィア>に変更したらしい。

 グレートボスの不正行為は、文字通り明るみに出てしまった。


「あ! あそこにアスラさんがいますよ!」


 洞窟の中で反響するティナの声。すぐ近くにシャロンもいた。


「その謎の弾は、アスラに向かっているように見えるが……それは不正行為という認識で問題ないな?」


「ああ! こいつは俺に罪をなすりつけようとしたんだ!」


 俺を攻撃した事実。犯罪の当て馬からの反逆。圧倒的な実力差による敗北。

 シャロンの言葉は、グレートボスの三人の首に落ちるギロチンだ。

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