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52.<ランクアップ>

「アスラさん……さっきの話、よかったんですか?」


 話が終わり、解散になったところで、心配そうにティナが聞いてくる。


「ん? よかったって?」


「1対30はさすがに不利すぎますよ……それに、アスラさんのことを知ってるみたいです」


 ティナとリーリアにはさっき、過去に俺とグレートボスの間であったことを教えている。彼女が心配するのも当然といえば当然だ。


「大丈夫だ。俺も負けるつもりで挑むわけじゃない」


「でも、グレートボスの噂は私も知ってる。1年前までCランクだったけど、急成長したパーティだって」


 そうだったのか。あいつらのことは思い出したくなかったから、がむしゃらに仕事をしていたため知らなかった。


「なんでも、パーティの全員がスキルを発現したらしいの。急成長の原因はそれで、ギルド内では次はグレートボスの時代って話もある」


「え……じゃあ、3人ともアスラさんくらい強いかもしれないってことですか!?」


「そうとは言わないけど……無策で行くのは危険なことは間違いないと思う。本当に大丈夫なの?」


「ああ、大丈夫だと思う。それより、新しいスキルを試してみたいんだ」


 俺は懐からハイポーションを取り出し、二人の見える場所に置いた。


「この前のクエストで、<ランクアップ>ってスキルを手に入れたんだ」


「ランクアップ……? <疾風怒涛>みたいな必殺技の名前っぽくないですけど……」


「おそらく、<合成>と同じようにアイテムに使うようなスキルなんだろう。試しにこれを使ってみようと思ってな」


 俺はハイポーションのビンに手をかざしてみる。


「<ランクアップ>!」


 宣言をしたその時、ポーションの色がみるみるうちに変わっていくのがわかった。


「え……ポーションの色が緑から赤に変わっていきますよ!?」


「ちょ、ちょっと待って! そんなのありえない!」


 俺たちは驚きを隠せなかった。ポーションの色が緑から赤に変わる。それはすなわち、ハイポーションがエクスポーションへと変わったことを示しているからだ。

 通常ならハイポーションに加え、そこそこ貴重な素材を合成しなければ手に入らないアイテムがなぜいきなり!?


 その答えはおそらく――この<ランクアップ>だろう。


「<ランクアップ>は、発動した対象をランクアップさせるスキルだったんだ……」


 俺たちは顔を見合わせた。考えていることは同じなんだろう。


「もう一回! <ランクアップ>!」


 俺はさっき作り出したエクスポーションにもう一度ランクアップさせる。

 これが通ったらとんでもないことになるが……どうだ!?


「……何も起こりませんね」


 エクスポーションに変化はない。

 ということは、3つの可能性が考えられる。1つの物質につきランクアップできるのは1回までか、エクスポーションのようなレアなアイテムはランクアップできないか、1日に俺が発動できるランクアップの上限回数に達したかだ。


 次に懐から出したのはエクスポーションだ。これに<ランクアップ>が適用されるかどうかで、3つのどれに当てはまるか調べてみよう。


「<ランクアップ>!」


 すると――なんと、ポーションの色が変わり始めた。


「マジか!?」


 ポーションの色の赤の割合が減っていき、少しずつ緋色に近づいていく。そして、最後には金色に光り輝く液体に変化した。

 ……間違いない。最上位のポーションの『エーテル』だ。


「エーテルって、実在するんだ……」


 リーリアの驚嘆の声は大げさではない。なんせ、エーテルを作ったのは500年前の伝説の賢者が最後だからだ。

 現在この世界に残っているエーテルは3本。それらは全てこの賢者が作り出したもので、3つとも国宝として国が1本ずつ所有しているという。


 飲めばあらゆる病や怪我などを治してしまうという神話級のレアアイテムだ。


「飲んだら不死身になれるって聞いたことがありますよ!」


「いやいや、だとしたら500年前の賢者も生きてるってことになっちゃうじゃん……」


「あ、確かに! でも、飲んだら寿命は伸びそうですよね!」


 寿命、か……それも正直眉唾だけど、身体能力くらいは上がるんじゃないかな?

 俺は瓶の蓋を開けてエーテルを飲んでみることにした。


「ちょっと、あんた何してんの!?」


「……これ、美味いぞ!」


 初めてエーテルを飲んでみたけど、こんな感じなのか! まるで酒のようにしゅわしゅわとしていて、それでいてアルコールは入っていないようだ。

 口いっぱいに甘い味わいが広がると同時に、ほんの少しの柑橘系の酸っぱさがアクセントになっている。一口飲んだだけで癖になりそうだ。


 それに……なんだか力が溢れてくる!


「ちょっと、そんなの飲んで大丈夫なの!? 副作用があるかもしれないよ!?」


「ああ、むしろ元気だ! 副作用があったらエーテルで治す!」


「私は絶対にパス……なんか怖いし……」


 エーテルをゴクゴク飲む俺を見て、リーリアは恐れているようだ。咳ばらいをして、俺を指す。


「でも、それを市場に流すのはやめておきましょう。エーテルを売れば一生遊んで暮らせるだけのお金は手に入るかもしれないけど――命を狙われるかもしれないし、ポーション自体の価格も変動して市場が崩壊する」


 確かに、これを売るのはやめておいた方がよさそうだ。ランクアップさせて作ったエーテルは飲む用にしよう。


「ところで、アスラさん! 私、<ランクアップ>の面白い使い方を思いつきました!」


 その言葉とともにティナがした提案は、俺たちを震撼させた。

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