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51.3年ぶりの口論

「……何しに来た?」


「おいおい、久しぶりの再会だってのにタメ口かよ? 昔はビクビクしながら敬語使ってたのによお」


 3人は俺の顔を見てクスクスと笑う。ロンバルドが矢面に立ち、笑いながら俺に顔を近づけてきた。


「お前、ずいぶん出世したじゃねえか。FランクからいきなりSランクだって? 親の遺産でも引き継いだのか?」


「……どういう意味だ」


「そこにいるギルマスに金を払ってSランクにしてもらったんだろ? それともあれか、そいつはお前の女か?」


 本当に不愉快な連中だ。3年間で変わったのはパーティのランクだけか。


「ロンバルド・バルザック。今の発言は撤回してもらおうか。アスラは実力でSランクに上がったんだ」


「撤回? するわけねえだろ、本当のことを言っただけなんだからよ。てめえみたいなゴブリン一匹倒せないような奴がいきなりSランクになんか上がれるわけねえんだよ!」


「それに、冒険者同士の口論にギルドが介入するのは違反だぜ! 手を出さない限りは、当事者同士の問題だからな!」


 ミョルガが口を挟む。相変わらず理論武装は得意なようだな。


「はあ? あんたにアスラの何がわかるの? 一昨日、街の危機を救ったのはアスラなんだけど?」


「黙れチビ。俺はそんなの見てねえんだよ。どうせ『カゲロウ』が弱らせた相手を討ち取ったとか、そもそも嘘ついてるかのどっちかだろ」


 リーリアは上目遣いでロンバルドを睨むが、小型犬と大型犬くらいの体格差があるせいでまるで威圧になっていない。


 このタイミングでこいつらが出てきたのには、間違いなく理由がある。俺がSランクになったのが気に食わなくてちょっかいを出しに来たのだ。

 グレートボスの目的は、ギルド内のボス的存在のパーティになること。今まではそれをSランク3人組のカゲロウが防いでいた。


 しかし、カゲロウ亡き今、グレートボスは新たなギルドの頂点となりうるパーティだ。そこでこうして出張ってきたというわけだ。


 はっきり言って邪魔な存在でしかないが……今はむしろありがたい。

 なんせ、呼ぶまでもなく向こうから来てくれたのだから。


「悔しいのか?」


「……おい雑魚。今なんて言った?」


「長いことギルドのナンバー2でくすぶって、ようやく一番になれそうになったら今度は今まで見下してきた雑魚に抜かれて、悔しいのかって言ってるんだよ。そうでもなければこんな場所までノコノコ出てこないだろ?」


「……てめえ!」


 ボーアンがキレて俺の胸ぐらに掴みかかってくる。


「おっと? 手を出すのは無しなんじゃなかったのか? このまま口論を続ければ、当事者同士の問題で済むが、どうする?」


「チッ……ボーアン。手を離せ」


 ロンバルドに止められ、ボーアンは俺を激しく睨みながら手を離す。


「シャロン。俺がSランクになるのに反対しているのはどれくらいの人数がいるんだ?」


「正確な数字はわからないが……30人といったところだろうか。だが、時間が経てば風化するかもしれないぞ?」


「いいや……せっかくシャロンが茨の道を用意してくれたんだ。俺はそこを通ることにするよ」


 シャロンの口元が緩む。おそらくこれは全て織り込み済みだろう。

 FランクからSランクまで一気に俺を昇格させれば、波風が立つのは当たり前だ。酔っていたとはいえ、シャロンがそれを想定していないはずがない。


 シャロンはわかったうえであの場で宣言をしたのだ。話が広まりやすいように。

 運命の糸(スレッド)と戦うと決めたからには、これくらいの壁は超えてみろという意味だろう。


 だから――俺は正面から突破させてもらうことにした。


「シャロン、決闘の許可をくれ。対戦の方式は黒き雨粒(ブラックレイン)の時と同じでいい。人数は……1対30。俺一人と、お前ら全員だ」


「いったい!?」


「さんじゅう!?」


「馬鹿にしてんのか、てめえ!」


 グレートボスの三人が怒りを露わにして詰め寄ってくる。

 それはそうだろう。1対30の決闘なんて前代未聞だ。奴らのプライドはズタズタだろう。


 だが、俺は大まじめだ。これくらいの戦いで勝利――いや、圧勝しなければSランクになんてなる価値がない。


 それに、こいつらと決着をつけることは復讐以上のメリットがある。


――


『本物のボス』 ★★★


【概要】

ギルド跡地にいるシャロンに話しかけ、決闘の申請をする。

モスラヴィル火山でボスを倒せば達成。


【報酬】

・経験値40

・スキル<生産>


――


 グレートボスが登場したことで、ようやくこのクエストの全容がわかった。

 シャロンのところに行くのはわかっていたが、この文章が示す『決闘』と『ボス』の意味が分からなかったのだ。


 つまり、このクエストの意味は――モスラヴィル火山で、グレートボスを含めた30人と決闘をし、真にSランク冒険者として認められろということだ。


「場所は俺が決めさせてもらう。モスラヴィル火山だ。その代わり、決闘の細かい位置はお前たちが決めていい」


「よし、その決闘、認めよう! 場所はモスラヴィル火山、日時は明日の12時だ!」


 シャロンが宣言したことで、決闘が取り決められた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はっはー!所詮二番で燻ってたゴミや!皮肉もこもった良い返しだぜ!アスラ!更なるザマァを期待したい! アスラ!頑張って勝利を掴めー! [気になる点] おっと!?時間指定はシャロンさん(ギル…
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