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タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
01_自主的縛り人生でハクスラ
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01-08

 ≪果てへと至る修錬道≫のエントランスホールへ戻って愛染(あいぜん)の持たせてくれたお茶と和菓子っぽいもちもちしてる何かで一息。

 これなんて言うんだったかな。もっちもっちしてて捻られてて砂糖をまぶしてある……美味しいから何でもいいか。もっちもっち。


 お菓子食べたらなんとなく落ち着いた気がする。

 まさか愛染(あいぜん)はこれを見越していたの。恐ろしいやつ。とか脳内で寸劇をやるくらいには頭が冷えてる。


 さっきは何がダメだったのか。

 要らないこと考えすぎてたり要ること考えてなかったりで、視野が狭くなって焦点が合ってなかった。

 つまり、お前は今まで何を学んできたんだと師匠たちに怒られるやつ。うへー。


 過去の自分の二の轍は踏みたくないのでいくつか明確な目的を設定しておこう。魔術戦に慣れるってだけだと目的としてはふわっとし過ぎてた。


 第一に、魔術を使う戦闘を行う。慣れるとか上手くやるとか以前に意識して戦闘に魔術を使う。

 第二に、魔器を魔術のために使う。鈍器か暗器で使ってばかりだしちょっと可哀そうだ。

 第三に……なんかあるかな……。んー……[誘導弾]以外の魔術で≪武装人形≫を殺そう。今日の最終目標だな。


 三つを狙いつつ、魔術だけで戦うことに意識を取られないように気を付けよう。一番大事かも。

 よし。休憩終わり。




 反省を生かし、無理をしない範囲で魔術を使って足りない分は≪[金字]の【ペン】≫で殴って≪武装人形≫を仕留めていく内に、先制するなら一方的に相手を感知する手段が欲しいと今更ながらに思う。

 今までは間合いを詰められて困るのは弓くらいだったし、弓は得意な方なので至近距離まで接近を許すことはなかった。近づかれても矢を短剣替わりにして突き刺せば良い。弓矢は飛び道具でも矢は飛ばすことにしか使えないわけじゃない。


 ≪[金字]の【ペン】≫はペンでも……ペンでも……これ暗器って言う方が正しい気がするんだよな。魔術式のライト内臓してるし、ライト切り替えたらレーザーポインターになるし、小さいけど折り畳みナイフ付いてるし、市販品の魔具じゃない手斧を叩きつけても傷つかない硬さだし。もしかしなくてもタクティカルペン。……ペンはペンだ。

 本来武器じゃないものを武器として扱う(すべ)も教えてくれる≪特器道(とっきどう)≫でこのペンを使った戦い方を習ったのは脇に置いておく。


 思考が横に逸れたのを戻そう。

 そう。撃ち出す感じのやつだけじゃなくて最初から接近戦で使うための魔術を≪[無尽]の【魔本】≫に記述しておけば緊急回避に良いんじゃないだろうか。

 愛染(あいぜん)や師匠にイメージを補強する資料として渡されたゲームで全周囲ノックバックみたいな感じのがあった気がするし。

 これもものすごい遠回りしてたなー。怒られる理由が増えた。


「あ、なんか落ちた」


 あれこれ考えながら魔術弾をぶつけてた≪武装人形≫に最後の一発を食らわせたら小さめの何かが落っこちた。

 怒られることから意識を逸らそうとしてたせいで独り言がこぼれるおまけつき。ちょっと恥ずかしい。


 ≪武装人形≫の残した何かを拾って観察する。

 たぶん裏側と思われる面の方にピン状の留め具があって、ピアスって重さではない。バッジかな。豪華だからブローチかもしれない。バッジとブローチはいまだに違いが判らない。多分豪華なやつは大体ブローチ。


 前に違いを調べたときは職業や身分や資格に付随するのがバッジだっていう記述は見たけど、特に意味を持たない装飾品でも日本だとバッジって使うみたいだったのがもやっとしたのを覚えてる。


 なんでもいいか。≪[開示]の【神壇(しんだん)】≫に乗せればどっちなのかは分かる。


 バッジとブローチのことを考えていたら、棚上げしているいくつもの疑問の一つが思考の一部を占拠し始めた。

 なぜ、この≪果てへと至る修錬道≫でモンスターの残す物品を≪[開示]の【神壇(しんだん)】≫で確認すると、装飾品の名称だけが細かく分類されているのか。


 槍の形をしていたら長さが五十センチや三メートルでも、材質が総木製や総鉄製でも穂先の形が三叉や細い円錐一本でも、関係なく全てが【槍】と示される。

 しかし指輪は覚えているだけで三種類はある。


 今考えてたバッジやブローチのようなピンで固定する形の物だって他に何種類もあったはずだ。

 木刀もフランベルジュっぽい剣もエストックっぽい剣もシャムシールっぽい剣も全部【剣】なのに、大抵の人には一目でそれが何か理解されないだろう【半襟】が独立した名称なのはなんでなのか。


 ふー。考え事をしながら≪武装人形≫を相手にするのも慣れてきた。

 魔術もそれだけに集中しなくてもしっかり発動するようになった。

 実戦じゃなければ歌いながらフラッシュ暗算しつつ写経してても魔術に失敗するなんてありえない……って言うのは言い訳か。言い訳だなー。


 師匠は数独パズル解きながら魔器なしの魔術を十以上同時に発動し、しかもそれらの魔術をフラッシュ暗算の数字に対応して事前に決めた百パターンで切り替え続けるもんな。

 僕には人型ってことしかわからない師匠たちは一体どういった存在なのか……また思考が逸れてる。


「お。またなんか落ちた。ロープ?」


 また独り言こぼしちゃった。というかロープってなんだ。装飾品?

≪[金字]の【ペン】≫

§それはペンである§

§それは金泥で書かれている§

§それは金色の文字である§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§


≪[開示]の【神壇(しんだん)】≫

§それは神に近づく場所§

§それは明らかにして示す§

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