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タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
01_自主的縛り人生でハクスラ
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01-07

 いつもとは違ってなぜか躑躅(つつじ)に起こされ、愛染(あいぜん)弁柄(べんがら)躑躅(つつじ)の三人で作ったという朝御飯を食べた。その後に三人がかりで丸洗いされるのは僕の精神的によろしくないと問題を提起したところ、なぜか家に入ったら両手を使って行うことは全部三人に任せるという結論で話し合いが締められそうになったので棚上げして逃げ出した。


 ≪果てへと至る修錬道≫のエントランスで頭を抱えている。


「なるようになるでしょ」


 考えても考えてもどうにもならなかったので問題の解決を先送りした。

 いや、先送りじゃない。

 ≪修錬道≫での修錬を終えて帰宅したら大抵は愛染(あいぜん)に好き放題お世話されて御飯食べてる途中で目が覚めたみたいな感じになる。

 多分今までとそんなに変わらない。つまり問題は存在しない。


 ちょっとトラブルはあったものの楽しい≪実践道(じっせんどう)≫だ。


 ≪[鎧櫃(よろいびつ)]の【紋章】≫に収納してある防具一式を瞬時に装着。

 以前は一つずつ取り出して自分の手で身に着けていたのを考えると成長していると実感できる。


 ≪[箱段]の【上腿部プロテクター】≫で<生成>した箱段から日常生活では外している装身具の魔具を取り出し身に着ける。別の引き出ししまってある武器も取り出して[箱段]を解除。


 収納するための魔術である[鎧櫃(よろいびつ)]と違って[箱段]は収納する入れ物を<生成>する魔術だからちょっと面倒くさい。収納したまま魔術を解除すれば荷物を抱える必要がないのは便利だけど、更に使い勝手のいいものを知ってしまうとどうしてもなぁ。


 昨日の≪魔術道(まじゅつどう)≫でもう少し魔術も上手くなりたいと思ったことだし、今日は魔術主体でいこう。魔素を込めればページが増えるからってメモ帳替わりにしてる≪[無尽]の【魔本】≫も魔器として使いたいし、ほとんどタクティカルペンの≪[金字]の【ペン】≫だって暗器やライトではなく本来の魔器として使いたい。

 ……どっちも魔器じゃない使い方が便利すぎるんだよ。


 ≪[金字]の【ペン】≫の方は、[金字]の魔術で<生成>したインクが純金だったのが一番大きい。多分、最初に使った時に僕が金字の意味を知らなくてただ金で文字を書けると思ったのが原因だよな。構成要素で言えば膠水が含まれていないのはおかしい……魔術的には純金の方が意味があるのが原因の気もしてきた。もう気にしなくていいか。




 さて、魔術を主体に≪実践道(じっせんどう)≫で修錬するつもりだったのが、初戦で躓いた。


 廃材を繋ぎ合わせたデッサン人形が廃材で武装したような見た目であり、≪実践道(じっせんどう)≫において最弱の存在たる≪武装人形≫を見つけたところまでは何の問題もなかった。

 ≪[無尽]の【魔本】≫を開きいざ魔術をと思ったら既に目の前に≪武装人形≫が居て、咄嗟に≪[金字]の【ペン】≫を米神に突き立ててしまった。


 魔術を使ってない以前にまともに魔術で戦えそうにない。

 ≪魔術道(まじゅつどう)≫では魔術の基礎を学んだあとは手持ちの魔具の理解と応用に集中していた所為で、魔術主体の戦闘術なんて全く身についていない。≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠との撃ち合いは壁打ちみたいなもので実戦とは別物だ。

 魔術の使い方を選り好みしていた僕の自業自得だった。


 遮蔽物の設置された大部屋で曲射したり[誘導弾]を使ったりで≪武装人形≫を狩ることはできる。

 しかしこれは魔術戦というより狙撃戦というべきだ。


 ……んー。いや、それこそ選り好みか。

 魔術を主体に据えた実戦経験を積むことは出来ているのだし、その上で理想のやり方じゃないからってその経験自体を無かったことにするのは師匠方に叱られそうだ。

 腕組んで仁王立ちされると威圧感がヤベーんだよなぁ。正座しろなんて言われたことないけど正座しちゃう。


 この魔術の使い方に納得できないなら、現状で自分に出来ていることと理想とする形の差異を理解してそれを埋めるにはどうすべきかを考えるしかない。


 まず、自分がどういう風に魔術を使って戦いたいかを言語化しよう。


 理想の魔術戦……魔術を使った戦い方であって魔術戦ではないな。

 とにかく、自分が魔術を使って戦うならどんな相手、どんな場面、どんな環境でも魔術だけで相手を打倒できるのが理想ではある。

 そんなん不可能……理想は理想であって今すぐに実現できる必要はない。うん。


 翻って自分の現状だ。

 躓いたと感じたのは、魔術を使おうとした時にはもう魔術を使える状況じゃなかったからだ。


 だったら最初にそこを修正すればいい。

 自分の間合いというか射程は把握できている。

 魔術の発動に必要な時間と発動した魔術の着弾に必要な時間も把握できている。

 その二つに意識を払いつつ相手の動きに合わせて魔術を放てばいい。


 冷静になって問題を言語化してみたらどうにかなりそうな感じだ。

 端的に言って経験不足。


 そういえば≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠との撃ち合いだって、近づかれたら杖で殴られたり体術で転がされるから距離をとっている。意地でも近づかれないようにする癖がついていて忘れてた。


 緊張でまともに思考できてなかっただけとかめっちゃ恥ずかしい。

 今思えば、僕はなんで≪武装人形≫を見つけた後は棒立ちで魔術の用意をしていたのか。うわー。

 しかも自分の動きを理解しないまま魔術で戦えそうにないなんてもううわー。


 ああそうだ。弓だとそのやり方で出来ていてそれと同じつもりで居たんだこれ。

 同じ飛び道具だし同じやり方でいいって無意識に決めつけてたんだ。

 これは≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠も腕組んで仁王立ちですね。


 現状における僕の弓の技量と魔術の技量を同じつもりで居たのは根本的にちょっとまずい。

 現在地は出口に近いところだし、近くの小部屋じゃちょっと休憩って気分になりそうだし、一回エントランスホールに戻って意識を切り替えよう。

≪[鎧櫃(よろいびつ)]の【紋章】≫

§それは紋章である§

§それは防具一式を収納できる§


≪[箱段]の【上腿部プロテクター】≫

§それは上腿部プロテクターである§

§それは階段である§

§それは引き出しである§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§


≪[金字]の【ペン】≫

§それはペンである§

§それは金泥で書かれている§

§それは金色の文字である§

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