02-24
[魔術]の魔術が手元にあったという驚愕の事実を認識したが、控えめに表現して直視したくない現実だったので一旦棚上げした。
幅広い様々な魔術を練習するというステップを飛ばして[魔術]の魂象を得られる可能性にずっと気づいていなかったというのはショックが大きい。
でもほら、最短ルートに気づいてなかったおかげで僕の魔術の腕も上がってるし……。
御飯の準備から抜けさせてしまったが、弁柄には現実逃避のため体術の稽古をつけてもらい浮いた時間を埋めた。あとはいつも通り美味しいお昼御飯を美味しく頂き、食休みをしっかり挟んで≪果てへと至る修錬道≫にやってきた。
午後の予定は≪[融合]の【神壇】≫でアンダーウェアと靴下を魔具化して、新しい魔具の試運転をする。時間がありそうならメモを見て、あった方が良さげな魔術の開発。魔術の方は一つ作るにも数日がかりとか当然だから、≪魔術道≫の師匠に資料を貰って読み込んでるうちに今日は終わりそう。
≪果てへと至る修錬道≫のエントランスホールに入ったらそのまま階段を上がり、四つ並んだ【神壇】に一礼。手前から二番目の≪[融合]の【神壇】≫の前に立つ。いざ。
≪[壁書]の【アンダーウェア下】≫
§それはアンダーウェア下である§
§それは壁に書く§
§それは壁に書いたものである§
≪[根冠]の【アンダーウェア上】≫
§それはアンダーウェア上である§
§それは根の先端である§
§それは柔らかい§
§それは伸長を助ける§
§それは重力を感じる§
≪[過熱]の【靴下右】≫
§それは靴下右である§
§それは度を越えて熱する§
§それは沸騰させない§
≪[達眼]の【靴下左】≫
§それはネクタイピンである§
§それは眼である§
§それは優れている§
§それは物事を深くまで見通す§
魔具と一緒に魔具化したいものを≪[融合]の【神壇】≫に乗せて、こっちを主体に魔具の魔術を乗せ換えたいですって念じればおーけー。それを四回繰り返して終了。
それにしても、相変わらず物品名の部分が雑だ。靴下は頑丈かつ身に着けていてストレスの少ないものをかなりこだわって選んだものなのに、≪[開示]の【神壇】≫で詳細を確認したらただの靴下扱いだ。アクセサリーとかは結構細かく分類されてるのになんでだろう。
考えても答えが出ない疑問は脇に置いて、次は完成した魔具の試運転だ。
≪[鎧櫃]の【紋章】≫にアンダーウェアの上下と靴下一足を収納したら、一度全裸になって装・着。普段着は防具ではないという僕自身の認識が邪魔で全裸になる必要があるのは改善の必要があるかもしれない。困ってないし別にいいか。
まず最初は期待の大きい[壁書]からやっていこう。踏んだら起動する魔術を壁に――そういう発動条件で魔術を作らないといけないのでは? そもそも“壁に”って明言されているなら壁じゃないとだめで、壁に設置した罠を踏むというのはかなり限定された存在なのでは?
Oh... どうしよう……。
あ。あれだ。壁に設置しておいて、組み合ったところで僕が壁にたたきつけるように……よほどうまいこと作った魔術じゃないと僕も巻き込むわ。
直ぐにはどうにもならないので次行こう次。
これはもう、思ったようにいかなかったわーでさくっと切り上げられそうな順にすべきですね。そんなわけで[根冠]いってみよう。
[根冠]は §それは重力を感じる§ の要素のためだけに選んだ。平衡感覚とか強化されそうな感じがするっていうそれだけだ。
いざ、発動。
……なんか……なんとなく重力を感じなくもない……? 普段はまるで意識してない下方向への力というか力場というか……。
発動したまま目を瞑ってぐるぐる回ってみると、なんかすごい。重力方向を軸に回ってると意識する所為か、広げた両腕の先で綺麗に円を描けている気がする。あとなんか目が回らない気もする。
地味でも有用な可能性を感じた。
便利そうだけどイマイチ使いこなせる気がしない[達眼]は最後に回すと、残るは[過熱]だ。上手くいけば電子レンジみたいなことができるかもしれない。
とりあえず[箱段]からコップを取り出し、[造水]で水を溜めて、それを対象に[過熱]を使ってみる。
使ってみた。温度調整が利かないなコレ。
たぶん、 §それは度を越えて熱する§ の“度を越えて”が加減を百度に固定してる要因と思う。たぶんそうじゃないかな。
逆を言えば、百度以上は結構融通が利く。二百度くらいまでは簡単に上がった。もちろん §それは沸騰させない§ の要素により沸騰はしない。
これで電子レンジ替わりはちょっと食べ物の選択肢が狭くなる。レトルトパウチって言うんだったっけ。ああいうのはお湯に入れておけばイイカンジに食べられそう。でも愛染達が作ってくれるお弁当はお湯で温められないんじゃないかなー。
でも相談したらどうにかしてくれる気もするし、愛染に任せよう。困ったら愛染にお任せ。
魔具の試用はサクサク進んで最後は[達眼]だ。
眼が良くなりそうなのは分かるものの、 §それは物事を深くまで見通す§ という要素がよく分からない[達眼]だ。
分からないけど害は無いだろうし使ってみてから考えよう。
発・動。
視界がいつもより鮮明……な気がする。
輪郭がはっきりしていたり、小さいものもよく見えたり、色の違いが明確だったり。
他に何かないかなと、なんとなく自分の両手を見てみると、なんか魔素や精気の流れが悪いように見える。眼が良くなるってこういうのも含まれるのか。
でも[達眼]で良く見えるようになったってのは別として、魔素や精気を扱う基礎訓練は欠かしていないとは言っても、日課にしているが故の慣れが良くない方向へ影響してお座なりになってたかもしれない。
基礎訓練は脇に置いて[達眼]の使い勝手を調べようと思ったのに、一回気になっちゃうと頭の一部を占有されちゃってだめだ。
[達眼]は眼が良くなる以外よく分からないし、暫く発動したまま基礎訓練でもして変化でも探ってみよう。片付けたいことを同時に進めても何も問題はないよね。
≪[融合]の【神壇】≫
§それは神に近づく場所§
§それは溶かし合わせ一つにする§
≪[壁書]の【アンダーウェア下】≫
§それはアンダーウェア下である§
§それは壁に書く§
§それは壁に書いたものである§
≪[根冠]の【アンダーウェア上】≫
§それはアンダーウェア上である§
§それは根の先端である§
§それは柔らかい§
§それは伸長を助ける§
§それは重力を感じる§
≪[過熱]の【靴下右】≫
§それは靴下右である§
§それは度を越えて熱する§
§それは沸騰させない§
≪[達眼]の【靴下左】≫
§それはネクタイピンである§
§それは眼である§
§それは優れている§
§それは物事を深くまで見通す§
≪[開示]の【神壇】≫
§それは神に近づく場所§
§それは明らかにして示す§
≪[鎧櫃]の【紋章】≫
§それは紋章である§
§それは防具一式を収納できる§
≪[造水]の【上腕部プロテクター】≫
§それは上腕部プロテクターである§
§それは不純物が無い水である§
§それは飲める水である§




