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タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
01_自主的縛り人生でハクスラ
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01-05

 さ、今週の授業も完遂したしささっと帰ろう。

 何事もなく一週間を締められそうで良かった良かった。


 種馬ン他一部の生徒が前回の体育より各段にレベルアップしていたとかで話題になっていたのは野次馬的にちょっと気になるけど、ちょっと気になる程度でしかない。≪果てへと至る修錬道≫へ行って修錬したい気持ちとは比べるべくもない。


 レベルアップで物理法則を超越して体を動かせるのは楽しそうだなとはいつも思うものの、僕の求めているものとは方向というか質というかが違うのでやっぱりいつも実際にやってみようとは思わない。

 お金出せばそれなりに美味しい物食べられるのはわかってても、予算は超えずできる限り美味しい物食べたいみたいな。


 帰る途中で躑躅(つつじ)と合流して調査結果を教えてもらったら≪魔術道(まじゅつどう)≫で修錬だ。

 基礎の復習をして、手持ちの魔具を見直して、その魔具に込められた魔術の理解を確認して、応用の検討と必要なら装備の再構成もしたいな。


 いつもと同じ家までを三十分で移動する速度で帰路を走っていると、道端に日傘をさした人影が突如現れた。


「若様」


躑躅(つつじ)、お疲れ様」


 飄々として掴み所がないように振舞うのを好む躑躅(つつじ)にしては珍しく、たった半日程度で顔に疲労の色を見せている。演技でもそういった雰囲気すら見せたがらない躑躅(つつじ)なので本当に疲れたんだろう。


「若様が言うところの“公権力側のヤベー人達”が掃討戦に取り掛かっていましたので、巻き込まれないように細心の注意を払ったんですよ」


「今日の朝の通報で日中に仕掛けた……とするよりは、何もしなくてもその予定だったって思う方が順当かね」


「囲みの中へ入るのは危ないうえに、“公権力側のヤベー人達”の側は情報封鎖が徹底されていたようで立ち聞きすらできず……結局は少し踏み込んで調査対象の頭をいくつか浚いました。もう少し高い強度で<生成>されたいと初めて思いました」


 もう隠そうともせずうんざりした顔の躑躅(つつじ)

 見た目からの予想以上に大変だったかー。


「ご褒美に、今日帰宅した後の僕の世話は躑躅(つつじ)に任せるよ」


「まあ。(わたくし)楽しみにしていますね」


 疲れ切ったOLのような陰のある表情から一変し、正に花が開いたような(あで)やかな笑みを咲かせた躑躅(つつじ)

 うーん惚れそう。


 三割の冗談はさておき。

 僕の世話をさせるのが褒美になるとは思えないが、実際にその件で現状の先任と言える愛染(あいぜん)とレバーを打ち合うような舌戦を繰り広げたことがあるので褒美になるんだろう。そんな意味合いの構成要素を有する以上それが存在意義になるし。

 ……愛染(あいぜん)はともかく躑躅(つつじ)にはそんな構成要素ないんじゃないか?


(わたくし)も女ですので」


 反論を許さない、十秒前とはまた別の、圧力すら漂う笑顔だ。迫力系美女。

 僕は女じゃないから否定が難しいけど、それって一緒くたにされたくない人が多そうな括り方だね。


 僕の場合なら、男は群れの拡大がステータスと言い始めても違和感のない種馬ンと同じ男なんだから同じようなものでしょって言われるのと似た感じの印象を受ける。つまり、ぶん殴ってでも訂正を求める。

 種馬ン当人に含むものはなくとも人生観が違い過ぎて一緒にされたくはない。


「少なくとも、(わたくし)愛染(あいぜん)様は“同じ女”ですので」


「また微妙にニュアンスが変わる言い方をするね」


愛染(あいぜん)様は否定なさらないと思いますよ」


 手の仕草一つで男を骨抜きにできそうな躑躅(つつじ)の雰囲気を別にしても、コミュ力弱者の僕じゃ口でやり合うと太刀打ちできない。

 当事者の愛染(あいぜん)躑躅(つつじ)がいいならいいのかな。

 結局のところ、愛染(あいぜん)躑躅(つつじ)の関係性は、トラブルにでもならない限り僕が口を出すことじゃない。


「ご納得いただけたので調査に関して報告しますね」


「お願い」


「端的に言いますと、“割れた大地から芽吹く可能性”をシンボルにしたダンジョン信仰系の、終末思想を掲げるどこにでもある集団でした」


 再び仕事に疲れたOLになった躑躅(つつじ)。全力を振り絞って調べた結果がそれじゃあ仕方ない。


 あの人達のシンボルっていうと、茶色い布が大地で、黒いイナズママークだと僕が思ったのは地割れで、双葉が可能性を意味してたのかな。

 シンボルを読み解くとしたら、ダンジョンをどうこうしたらその奥に眠るなんたらが穢れきった世界を丸洗いする系みたいな感じでしょ。またありがちだなー。


 ここ十年でそういう人たちがあの廃墟区画に集まってくるの何回目だろう。季節の風物詩くらいの頻度じゃないの。


「重ねてお疲れ様。たった半日で重い仕事を熟してくれてありがとう。ゆっくり歩いて帰ろうか?」


「ふふ。ご褒美でしっかり報いて頂きますので。夜に備えて若様の影で休ませていただいてもよろしいですか?」


「わかった。じゃ、ゆっくり休んでね」


 綺麗で艶のあるお辞儀をした躑躅(つつじ)がそのまま影に沈んでいった。さりげなく僕の影の上に位置取りしていたのか。


 ふう。やっぱり躑躅(つつじ)と会話するだけでムラムラする。やろうと思えば手首から先のジェスチャーで健全な青少年に暴発させそうだよな。特殊な扉を開きそうだ。

 開きそうな扉は閉じたまましっかり固定して、家まで走ったら躑躅(つつじ)のご褒美の件を愛染(あいぜん)に伝えた後≪果てへと至る修錬道≫だ。やっほう。

≪[乙女][傾国][忍女(しのびおんな)]の【チョーカー】≫

§それはチョーカーである§

§それは女性である§

§それは穢れない§

§それは国を傾けるような絶世の美人である§

§それは遊女である§

§それは忍びである§

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