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【未完】タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
02_自主的縛り人生でハクスラな遠征するよ

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02-15

 人生三回目の遠征三日目。


 家で待っているはずの三人に感謝しつつ朝ごはんを済ませたら、綺麗な字で『必ず遠征三日目に開けてください』と書かれた付箋が貼ってある一辺三十センチメートルくらいの立方体な箱をテーブルに乗せてどうしたものかと悩む。

 急遽予定を変えて今日帰ることにしたんだけど、今開けるのが良いのか帰ってから開けるのが良いのか。というかなんで日付指定されているんだろう。

 いつものように、悩んでも仕方ないかととりあえず箱を開ける。するとラッピングされた箱が五つ入っていた。一番小さいのは僕の手のひらサイズ。一番大きいのは最初の箱の下半分を丸っと占領していた。


 一度は開けることに決めたので、まずは一番小さい箱を開けてみる。小さい銀色の丸いのとか、色とりどりの細かい棒状のなにかがくっついた、メダルみたいな丸い茶色いなにか。匂いからするとチョコっぽい。カラフルな細かい奴はチョコバナナにくっついてるやつかもしれない。

 次は一番大きい箱を開けてみる。こっちは一目でわかった。養母(かあ)さんの十八番(おはこ)のチョコがじゅわっとしみだしてくるケーキみたいなやつだ。名前は知らない。

 残り三つの箱も中身はそれぞれチョコチップクッキーとチョコサブレとチョコでコーティングされたビスケット。僕に違いはわからないが、箱の蓋の内側に書いてあったしそうなんだろう。


 なんでこんなにチョコ推しなのかはさておき、ちょっとずつ食べたけどどれもおいしかった。

 たぶん、最初に開けた一番小さい箱が果恵(かえ)の作ったやつで、一番大きい箱は養母(かあ)さんの作ったやつ。残り三つの箱は愛染(あいぜん)弁柄(べんがら)躑躅(つつじ)が作ったやつで、どれをだれが作ったかはわざと分かんないようにしてあるんじゃないかな。もしかしたら全部三人一緒に作ったのかも。


 食休みも終え、さて帰ろうかと腰を上げたところでちょっと嫌な想像をしてしまった。

 このチョコ推しセットがもし遠征応援してる的なものだったら、今日帰ったらすごい居心地悪くなりそうだ。

 ほんの少し足が重くなったのを自覚しつつ予定通り帰路に就いた。帰りたくなくなってきた。




 もうそろそろレベル三≪武装人形≫との遭遇もなくなる辺りかなと気が緩みかけたころ、大きい刀みたいなのを持ったレベル三≪武装人形≫カスタムを発見。場所があまりよろしくない。レベル三とレベル二の分布を切り分けるためなのか、遠回りしようとすると脇道に入りすぎてしまう可能性のある、通路が主要一本に絞られる地点だった。

 正直、今回の遠征ではもうあまり実践訓練をする気になれないので気が滅入る。


 早く帰りたいし、強すぎて多用すると修錬にならないからって自主規制してるコンボを全力でたたきつけちゃおう。

 ≪[薄紗][熱線]の【ボウ】≫で射って貫いて焼いて、≪[増殖]の【多節棍】≫でボコボコにして、≪[金剛][惨刑]の【槍】≫で止めを刺す。

 さて用意を、と思ったが≪[呼応]の【短剣】≫は別として一度の戦闘で武器をいくつも使ったことがない。持ち替える練習ももちろんしたことがない。


 時間をかけたくないし、何も考えず≪[金剛][惨刑]の【槍】≫の穂先を足元に刺したり抜いたりしてみると悪くない。

 試しに足元に刺さったまま円を描くように回してみれば、穂先の刃の向きに気を付ければ手応えも感じないくらい滑らかだ。


 一方≪[増殖]の【多節棍】≫は、上手いこといく感じがしない。

 肩に掛けたり、[増殖]させて腰に巻いてみたり、足元に置いてみたり。

 弓を構える邪魔になるか、拾うのに無駄な動作が必要になる。


 今回は、≪[薄紗][熱線]の【ボウ】≫で射って貫いて焼いて、≪[金剛][惨刑]の【槍】≫で止めを刺す二段構えにしよう。

 帰ったら武器をぱぱっと持ち替える練習を一応してみるか。そういえば、[箱段]の中身を手元に取り出す練習をしようと思ってたんだったか。それが成功すれば何の問題もないな。もしくは詳細を確認していないままの魔具に[鎧櫃]みたいな使い勝手がいいのがあることを祈ろう。


 帰ったら次の遠征までの一週間にやることがどんどん増えていく。すでにメモを見返さないと何をするつもりなのか思い出せそうにない。

 大きい刀みたいな獲物を持ったのレベル三≪武装人形≫カスタムが見えなくなるまで距離をとったら、メモこと≪[無尽]の【魔本】≫に複数の武器を一度の戦闘で使うための練習に関して書き込む。ヨシ。


 後はいつも通り[ノックアップ]で段差を作り、[フリーズ・スリップ]用に水を撒き、間合いの目安になる目印を付けておく。

 最後に≪[金剛][惨刑]の【槍】≫を突き刺して完了。


 深呼吸一つ。


 緊張し過ぎず緩み過ぎずを心掛けつつ、釣り出すためにレベル三≪武装人形≫カスタムの方へ歩く。

 目視で確認。こちらに気づいていたらしき≪武装人形≫も、緩やかに近づいてくる。

 予定していなかった、因縁があるわけでもない強敵。戦意を互いに向けあったことで、漸く熱のようなものが僕の内側から込み上げてくる。


 足を止め、弓を左手に携え半身で待ち構える。

 ≪武装人形≫は歩みを緩めず、大きい刀みたいな獲物を右手でぶら下げたまま構えも見せない。


 気づけば、≪[薄紗][熱線]の【ボウ】≫を構えて矢を放っていた。

 驚くほど速く精確に閃いた刀で、首を狙った矢が払われる。

 肩に二の矢、腹に三の矢と続けざまに射かける。

 緩やかでありながら鋭い銀閃が矢を切る。


 矢を番える、と見せて勢いよく身を翻し走る。

 聞こえてくる音から判断するに、しっかりと追いかけてきている。


 危なく全力でやり合いそうな気分だった。

 さっさと≪[金剛][惨刑]の【槍】≫のところまで引っ張っていこう。

≪[薄紗][熱線]の【ボウ】≫

§それはボウである§

§それは薄い織物である§

§それは軽い織物である§

§それは金属線である§

§それは熱する§

§それは赤外線である§

§それは体温の変化を表した線である§


≪[増殖]の【多節棍】≫

§それは多節棍である§

§それはふえて多くなる§

§それはふやして多くする§

§それは分裂により細胞を増やす§

§それは生殖により生物を増やす§


≪[金剛][惨刑]の【槍】≫

§それは槍である§

§それは金剛である§

§それは惨たらしい刑罰をもたらす§


≪[呼応]の【短剣】≫

§それは短剣である§

§それは呼びかけに応える§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§


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