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【未完】タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
02_自主的縛り人生でハクスラな遠征するよ

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02-09

 遠征五日目。


 事前の予定では修錬に充てる最終日となっている。

 明日明後日の二日間は余裕をもって帰路の移動日だ。[隠密]を自前でかけたうえで更に魔具の[隠密]を重ねれば、≪武装人形≫に襲われることはないと思う。

 僕は遠征そのものに慣れていない点を加味し、予定日を超過するよりも余らせるくらいが好いと愛染(あいぜん)との相談の上で決めたスケジュールなので変更するつもりはない。なかった。


 昨日見かけた、レベル三≪武装人形≫カスタムを一体だけでも(たお)したい。あれを超えれば僕は一歩先へ進める気がする。

 でも僕の中の冷静な部分は、時期尚早だと判断している。


 おそらく、≪武装人形≫というモンスターは……モンスター? ともかく≪武装人形≫は武器の得手不得手がない。

 遭遇時に持っている剣を奪って僕の持ち込んだ棍棒を使わせてみたことがあり、その際は剣と棍棒それぞれを扱う技量に差異を感じられなかった。


 しかし、僕がレベル三≪武装人形≫カスタムと呼ぶことにしたあの個体は、武器を選ばない汎用性はない……と思う。銀色の槍を持っていたからか、槍以外は使わない槍の扱いに特化した技量を持っているんだろうと、なんとなく感じた。根拠はない。


 そして、≪果てへと至る修錬道≫における分類である六の武器種の中では≪長柄道(ながえどう)≫の槍を一番得手としている自負が、あの銀の槍を持った≪武装人形≫との一戦を望んでいる。


 少し観察した立ち姿を基に、自分と相手を漠然と比較してみる。

 僕よりも銀の槍持ち≪武装人形≫の方が槍の技量は高そうだ。

 武器防具の性能は見ただけで分かるものでもないので同等か相手優勢とする。

 最後に、あくまでレベル三≪武装人形≫ならば身体能力は[肉体強化]と気功込みで僕が少し上回る。


 悩んだ。理性の声に従うか、感情のままに突き進むか。

 悩み始めるとキリがないパターンだこれ。五分で区切った後ダイバー向け端末のに入れてあるダイスロールアプリで決める。

 振った。決まった。


 よし。銀の槍持ち≪武装人形≫と雌雄を決してやろう。




 昨日の最後の方はレベル三≪武装人形≫との修錬を主目的にしていたため、銀の槍持ちを見かけたところまで距離がある。道中で何度かの戦闘を熟すことになった。

 朝一番に疲労のない状態でやるのか、軽く体を動かしてからやるのかの二択に悩む必要が無かったと前向きに受け止めよう。


 銀の槍持ち≪武装人形≫を見つけた後は手近な小部屋で精神統一しつつ作戦を立てる。

 作戦というか、一分三十秒のカウントダウンを設定し、スタートから三十秒で接触。アラームが鳴ったら、どんな状態でも≪[拙速]の【下腿部プロテクター】≫の[拙速]を使って全力離脱を決めた。勝てないが負けない方針だ。


 無理をしてエントランスホールに死に戻りするよりも、今回の遠征の残りを目いっぱい使ってあの銀の槍持ち≪武装人形≫を(たお)す。


 逃げ腰上等。まずは戦力比を正しく見積もるために一当てする。上手く逃げ切れたら二回目以降の接触の際どうするか考える材料にする。

 レベル二≪武装人形≫と初めて戦った時とはまた違う緊張感がある。呑まれないように気を付けて行くぞ。




 銀の槍持ち≪武装人形≫が見えたら距離を測り深呼吸一つ。

 ダイバー向け端末のタイマーをスタートしてすぐウェストバッグに捻じ込み、両手で≪[金剛][惨刑]の【槍】≫を持ち歩き始める。

 ≪武装人形≫もこちらに気づいたということか、僕と同じように銀の槍を持ち近づいてくる。

 十、九、八……。丁度三十秒で間合いが重なる。


 穂先。弾く。ヤバイ。

 精気を体内で急速に回し魔素を取り込む。


 また伸びてくる穂先。叩く。一度退く。

 退いてる。退いても距離が変わらない。

 相手が巧い。有利を押し付けられてる。


 押し切られる。強引でも流れを変える。

 [肉体強化]。気功。有利を押し付ける。

 技量を棚上げして身体能力で対抗する。


 僕の槍は穂先が伸びない。伸ばせない。

 突きの出掛かりを抑えられ逆に突かれる。

 リズムが乱されてる。呼吸は乱さない。

 今僕の手にしているのは槍じゃなく棍だ。

 気功により、思考が体よりも早くなる。

 

 今何秒だ。あと何秒だ。


 アラーム。何の音か分からないのか、警戒した≪武装人形≫の動きが一瞬鈍る。

 無理矢理押し込み、そのまま押し飛ばす。


 [煙死]。煙幕をはる。本来は吸えば死ぬけど期待はない。

 [隠密]。魂象(こんしょう)と魔具の重ね掛けに意味はあるのか。

 [装甲]。魔素をありったけつぎ込んで通路の大半を塞ぐ。

 [拙速]。走る。魔術により姿勢は崩れるが、逆に速くなる。




 後ろを見ず、前だけに意識を向けて走り続け、レベル二≪武装人形≫しか見かけなくなった辺りの直線通路で振り向き足を止めた。

 [肉体強化]と気功のおかげで息は乱れていないが、そろそろ集中が切れそうだ。


 十分ほど警戒したあと手近な小部屋に入り崩れ落ちた。


 予想以上だった。

 先手を取られたのが痛い。そこから呼吸を掴まれ、相手の盤上から抜け出せなかった。

 僕が使ってたのは槍なのに、穂先を相手に向けることすらできない所為で槍として使うことができなかった。

 想像したよりも技量に差があった。


 逃げる前提だった所為で相手の勢いに圧されたのか。

 逃げる前提だったおかげで振り切れたのか。

 一長一短だ。


 あ゛ー。魔術使い過ぎて実際は痛くないって分かってても頭が痛い。

 肉体的には大した消耗じゃないのにはずなのに動きたくない。

 銀の槍持ち≪武装人形≫やばいわ。絶対ぶち壊す。

≪[拙速]の【下腿部プロテクター】≫

§それは下腿部プロテクターである§

§それは正確性に欠ける§

§それは速い§


≪[金剛][惨刑]の【槍】≫

§それは槍である§

§それは金剛である§

§それは惨たらしい刑罰をもたらす§


≪[煙死(えんし)]の【前腕部プロテクター】≫

§それは前腕部プロテクターである§

§それは燃えている§

§それは煙である§

§それは死をもたらす§


≪[装甲]の【ライディングパンツ】≫

§それはライディングパンツである§

§それは護る為の板である§

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