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タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
02_自主的縛り人生でハクスラな遠征するよ
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02-07

 遠征四日目。


 寝る前に何か気になったはずなのに覚えてない。なんだったっけ。


 家で待っている三人に感謝して朝御飯を食べ、食休みに少しぼーっとしてからテーブルセットを片づけた。


 よし。今日のお昼で折り返しだ。

 帰路に就くのは六日目の朝の予定だし、今日明日は一層気合を入れていこう。

 でも気合を入れ過ぎて空回りするのも足元が疎かになるのも危ないので程よく柔らかく。




 [粘着空間]の使い勝手が良くてヤバヤバ。

 ≪武装人形≫が足を下ろすところをピンポイントで狙えば指定範囲は掌より小さくて済み、その分浮いたコストを粘着力に回せばレベル二の≪武装人形≫が木偶になる。

 レベル二≪武装人形≫は修錬の相手に丁度良いとあって、楽をし過ぎないように連戦になってしまった場合のみと決めて使用を控えるくらい便利だ。


 油断ダメ絶対と気を引き締め直してすぐに、また見た目の違う≪武装人形≫を発見。

 レベル二≪武装人形≫とは明らかに違う。レベル二より強いならレベル三の≪武装人形≫っぽいと警戒するくらい見た目が違う。


 ≪武装人形≫のレベル二はまだ中古品みたいな煤けた印象を受けるし、パーツのあちこちも歪んでたり人形としての出来は良くない。武装も武器含めて精々三ヶ所くらいしかない。

 でも今見つけた≪武装人形≫は遠目に見た範囲で(いびつ)なところはなく、何より武装の数が多い。バランスは良くないけど体の半分くらいの面積は防具に隠れてる。


 見晴らしの良い長い直線通路ではあるものの、まだ気付かれていないようなので少し戻って精神統一。

 レベル二≪武装人形≫との差を確かめるためにも、レベル二と初めて遭遇した時と同じように対処してみよう。まずは守勢に回って待ち構える。渾身の一突きの後は流れに任せる。どうせ集中したら頭よりも体の方が先を行く。


 警戒しつつ近づいていくと十メートルくらいの距離でレベル三≪武装人形≫がゆっくりと振り返った。まだ人間そのものというほど滑らかではないが、レベル一とは比べ物にならない程度に動きが良い。


 ≪武装人形≫が歩き始めるのに合わせて僕は足を止め、腰を落とし、≪[金剛][惨刑]の【槍】≫を中段に構えた。

 石突側に寄せたところを右手で握り、左手は中程を支えた槍の穂先を≪武装人形≫の胸に定める。管代わりに精気で左手を包んでおくのも忘れない。


 ≪武装人形≫は僕に応じてゆるりと構えた。一歩、二歩と急ぐでもなく躊躇うでもなく近づいてくる。

 間合いに入ったら必中必貫。その瞬間へと意識を研ぎ澄ませていく。

 三歩。二歩。一歩。


 貫いた。即座に引き戻す。


 槍を戻しきる前に出足を払う。避けた足がそのまま踏み込んできた。

 速い。長柄の間合いじゃない。胴体を目指す剣にこちらも踏み込む。

 槍を手の内で滑らせ半ばを両手で握った。穂先が剣を払うと共に石突を頭部へ。

 盾で受けられそのまま押し込まれる。右手に握る剣の切っ先が左足の甲を向く。

 閃きに従い精気を回し見慣れた金剛を思い描く。左足に鈍痛。

 左の逆手に抜いた≪[呼応]の【短剣】≫が≪武装人形≫の腰へ。

 短剣を手放し槍を両手で握ったら集中。槍を突く自分を想起。

 体よりも一瞬早く思い描かれる自分が体の動きを引っ張る。

 左手が短剣のように槍の穂先のすぐ下を緩く握り支える。

 溜めていた右腕と胴の捻りを右脚が後押しして伸びる。


 一閃。


 残心を解き周囲を確認しても何かが近づいている気配はない。


 想像以上に強かった。

 初撃の突きで盾の上から胴体まで貫くつもりだった所為で、盾を貫通した瞬間に捻られそうになってものすごく焦った。

 距離を保とうと足を狙ったら、抑え込むつもりだったのか踏まれそうになるし。

 頭部を護るはずの盾を石突で殴ったつもりが衝撃を殺されて、逆に押されて右前半身を左前半身に反転させられるし。


 前に出た左足を狙われてると気付いた時は左足を諦めて捨て身になりかけた。あの瞬間の閃きはなんだったか。前に愛染(あいぜん)に渡されたマンガかなにかの硬気功だったかな。精気はああいうのもできるのか。

 あ、剣は刺さらなかった代わりにこれ酷い打撲になってるみたいだ。治さないと。


 ≪[呼応]の【短剣】≫も腰に下げていて助かった。短剣を刺したときのひるみ方がなんとなく人間臭かったのは偶然でしかない。あれは見た目が人間に近づいているから反応が人間という見た目に引っ張られてるってことなのか。


 最後の一閃。あれはいつも集中した時の思考よりも早く体が動く状態じゃなく、その体よりも早く自分の動きをイメージできてた。それに精気での[肉体強化]もいつもとなんとなく違った。

 あれの感覚を忘れないうちに確かめよう。


 今日はもう小部屋を確保して空気製ベッドに転がりたい気持ちをそっと脇にどけて、[自己流応急処置]を駆使して足を治したらレベル二≪武装人形≫を求めて歩き始める。

 途中、レベル三≪武装人形≫が消えた辺りに何か落ちてたのでろくに確認もせず腰後ろのウェストバッグにねじ込む。思い出したら確認しよう。


 ちょっと今はレベル三≪武装人形≫の相手はしたくない。

 レベル二。レベル二の≪武装人形≫さんはいらっしゃいませんか。

≪[金剛][惨刑]の【槍】≫

§それは槍である§

§それは金剛である§

§それは惨たらしい刑罰をもたらす§


≪[呼応]の【短剣】≫

§それは短剣である§

§それは呼びかけに応える§

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