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【未完】タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
02_自主的縛り人生でハクスラな遠征するよ

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02-03

 遠征二日目。


 目が覚めてすぐに≪[歩哨]の【メガZIP】≫で見張り魔術生物を<生成>しておくのを忘れていたと気付いた。

 前回の遠征も含め、≪果てへと至る修錬道≫の小部屋で休憩中に襲撃を受けたことは一度もないけど、今までがそうだからとこれからも同じとは限らない。忘れないように気を付けよう。ものすごい量の魔素を消耗するのでぶっちゃけ魔術生物なんてそうそう<生成>したくないけどちゃんと気を付けよう。はあ……。


 昨日の晩御飯と同じようにぱぱっと朝御飯を済ませる。

 愛染(あいぜん)弁柄(べんがら)躑躅(つつじ)の美味しい御飯に感謝。


 昨日の夜≪[無尽]の【魔本】≫に書き込んだ[低威力固定誘導弾]がちゃんと発動できるのを確認したら、魔本をプロテクターの上から胸元に固定。体を動かしてみるとちょっと邪魔になるのは妥協するしかない。

 頻繁に使う[誘導弾]ならもう少しで≪[無尽]の【魔本】≫がなくても実用的に使えそうなので、ちょっとその辺意識してみよう。


 そうやって[誘導弾]だけに傾倒すると魔術の魂象(こんしょう)じゃなくて[誘導弾]の魂象(こんしょう)を得ることになりそうなのでそれはそれで気を付けないといけない。

 なんとなく、魔術の魂象(こんしょう)ももう少しな気はする。根拠はない。でもこういうのは信じるのが大事だって≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠がくれたなんかの資料にあった。


 ≪[空気][寝具]の【チェーン】≫で作ったエアマットを消す。

 しっかり指差し確認。忘れ物が無いので出発。


 十分も歩かず遭遇した≪武装人形≫の肩と太腿に[低威力固定誘導弾]をぶつけて強さをチェック。二ヶ所ともぽろっと欠けたのでこの辺りはまだ雑に片づけてしまおう。

 ≪[錯行(さっこう)]の【下腿部プロテクター】≫の[錯行]で≪武装人形≫の走るラインを狂わせて、すれ違いざまに≪[金剛][惨刑]の【槍】≫で一突き。[金剛]と[惨刑]を使うまでもなく仕留めた。

 順調な滑り出しでよろしい。




 ≪武装人形≫はほとんどを手早く片付けつつ、ある程度進むごとに[低威力固定誘導弾]をできるだけ同じ位置にぶつけて変化があるかを確かめた。

 欠け方に変化はないように見えるが、なんとなく魔術の手応えが鈍くなっているような気がする。何かを明確に意図した魔術だと望んだ結果かどうかが漠然と感じられるのは有難い。

 魔術関係の法則はなんとなく作為的に人間に優しい気がするのは……今考えることじゃないか。棚上げ棚上げ。


 魔術の手応えを感じようとあれこれやってる時は、あんまり魔術が楽しくなかったのを連鎖的に思い出して感慨深くなった。

 今じゃ各種の武器を扱う技量に比べて魔術の技量が一歩先んじてるし、≪果てへと至る修錬道≫における評価で次の奧伝に進むのも、きっと中伝の時と同じく魔術が最初だ。更にもうちょっとで何か分かりそうな予感もある。今回の遠征でできればその何かを掴みたい。


 物思いに耽って≪武装人形≫の相手が作業的になってしまった。これは良くない。休憩を挟んで意識を切り替えよう。

 近い小部屋に入って安全を確認。テーブルセットを広げ、弁柄(べんがら)こだわりのお茶と躑躅(つつじ)お手製のカップケーキで一服。




 ゆっくり気を休めて歩みを再開し暫くしたころ、今まで相手にしていた≪武装人形≫と比べて目に見えて質の良い片手剣と盾を携えた≪武装人形≫と出くわした。[低威力固定誘導弾]なんて使わなくても僕の知っている≪武装人形≫よりも強いのが見て取れた。


 一応ということで[低威力固定誘導弾]をぶつけたら案の定肩も太腿も欠けない。

 ≪果てへと至る修錬道≫では最下級の≪武装人形≫しか相手にしていなかったので、初見の相手と戦うなんてもうほとんど初めての体験だ。客観視できてしまうほど自分が動揺していると分かる。気合入れ過ぎないように気合入れていこう。


 守勢で戦うため腰を落とす。

 左前半身の中段に≪[金剛][惨刑]の【槍】≫を握る。右手は石突側へ寄せて保持して、左手は緩く中程を支える。

 ふと思い付き、管槍のイメージを描き左手を精気で包んでみる。やってから、そんなことを今試すのはやっぱり完全に平常心ではないと自覚して一層気を引き締めつつ、固くなり過ぎないよう身体を適度に弛緩させる。


 人でいう顎から腰辺りまでを守る縦に長い楕円の盾を左手で構え、その陰に右手の剣を隠した≪武装人形≫がじわじわと間合いを詰めてくる。

 もう、見た目だけでなく中身も僕の知ってる≪武装人形≫と別物だ。僕の知っている≪武装人形≫は、相打ち前提みたいな感じで防御はそこそこしか考慮していない戦い方をする。間合いの外で圧力をかけてくるなんてしない。


 試しに踏み込む素振りと共に少し穂先を上げてみれば、上から柄を叩いてやるとでも言うかのように僕の槍より少しだけ高く構えた剣先を盾の横で揺らして見せてきた。

 ≪長柄道(ながえどう)≫の師匠とやりあうくらいのつもりに警戒を強めて、構え直す。


 間合いに入るか入らないかのところで半歩踏み込んだり、盾の位置を微妙に変えたり、剣先をその陰から出したり引っ込めたりと誘いをかけてくるのも無視。

 間合いに一歩入ったら盾の上から胴まで貫くつもりで集中していく。


 ふ、と息を吐いたら既に槍で串刺しになった≪武装人形≫を振り捨てていた。


 ≪[造水]の【上腕部プロテクター】≫で作った水を≪[金剛][惨刑]の【槍】≫の表面に纏わせてあり、ほぼ抵抗無く≪武装人形≫の胸と盾から≪[金剛][惨刑]の【槍】≫が抜けていく。視界の端で剣先が揺れた気がしたのと前後して≪武装人形≫の頭を貫いた。


 ≪武装人形≫が消えるのを見て、周囲に注意を払って体の力を抜く。

 あ゛ー。緊張した。

≪[歩哨]の【メガZIP】≫

§それはメガZipである§

§それは武装している§

§それは見張る§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§


≪[空気][寝具]の【チェーン】≫

§それはチェーンである§

§それは空気である§

§それは睡眠時に用いる§


≪[錯行(さっこう)]の【下腿部プロテクター】≫

§それは下腿部プロテクターである§

§それは交互にめぐる§

§それは斜めに行く§


≪[金剛][惨刑]の【槍】≫

§それは槍である§

§それは金剛である§

§それは惨たらしい刑罰をもたらす§


≪[造水]の【上腕部プロテクター】≫

§それは上腕部プロテクターである§

§それは不純物が無い水である§

§それは飲める水である§

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