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【未完】タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
02_自主的縛り人生でハクスラな遠征するよ

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02-02

 二月三日月曜日。僕の人生で二度目のダンジョン遠征。


 ≪修錬≫を関するダンジョンは他のダンジョンと性質が違うらしいので、より正確には人生で二度目の≪果てへと至る修錬道≫遠征だ。


 前回の遠征後に手に入れた≪[空気][寝具]の【チェーン】≫も漸くその性能を十全に発揮してくれるだろう。実際使うときにしっかり眠れるよう浮いてるような感覚の使用感に慣れた後は、なんとなく使うのを我慢してたから寝るのが楽しみで仕方ない。我慢してるうちにただのアクセサリー的に認識するようになってたのも仕方ない。


 遠征の準備してる内に、そういえばこんなのも普段から身に着けてたっけってのが何度かあったのはしっかり反省し、今後は活用していきたい所存。


 さくさく準備を整えて愛染(あいぜん)弁柄(べんがら)躑躅(つつじ)に挨拶したら出発。

 いつものように≪実践道(じっせんどう)≫へ踏み込んで遭遇する≪武装人形≫を破壊していく。

 普段と違うのは消耗を抑えるためにある程度魔具頼みになるのを前提にしていること。


 間に合わせで魔具化するのに込めた≪[錯行(さっこう)]の【下腿部プロテクター】≫の[錯行]が、びっくりするほど便利だ。

 真っ直ぐ向かってきているつもりの≪武装人形≫が[錯行]により実際には微妙に進行方向が僕からはずれて斜めに通り過ぎる形になる所為で、一合も合わせることなく≪[金剛][惨刑]の【槍】≫を一突するだけで片付く。


 武器が良いのもあるけどちょっと魔術で補助するだけでも戦闘が様変わりする。楽すぎてまるで修錬にはならない。

 とはいえ、ゆくゆくはこういう搦め手込みでの戦闘も上手くなりたいな。師匠達との模擬戦でこういうのもさせてもらおうか。




 いつも週末で折り返すあたりをあっという間に通り過ぎてどんどん奥へ向かう。


 [錯行]だけではなく、防具類を魔具化するためにとりあえずで込めた他の魔術も実戦で試していると、気付けば≪武装人形≫が少しずつ変化している。


 まず、太さや表面加工が雑だった基本の作りがなんとなく綺麗になっている。ゴミ捨て場でマシな状態のパーツを集めて組み立てたような見慣れた木製の人形から、中古で売買されても納得できる状態の人形という感じで変化している。

 加えて武装も古戦場で拾ってきましたといった印象のガラクタ同然の物から、見習いの習作みたいな物に改善されている。


 ≪武装人形≫は体の質が良くなっている分動きも良くなっている。一度休憩を挟んで意識を切り替えることにした。

 一回目の遠征は確かもうちょっと進んだところでエントランスホールに戻されたはずだ。つまり、二年か三年前の僕ではこのちょっとマシになった程度の≪武装人形≫と連戦するのも難しかったということになる。


 三十分程目を瞑って気持ちを鎮め、魔素の回復と精気の調整に集中した。

 久しぶりなうえにまだ人生二度目の遠征ということもあって昂っていたのが落ち着き、これなら油断も慢心もないだろうと判断できたら移動を再開。


 意識が切り替わったおかげか、気づいていなかった手応えの変化を感じることができた。

 【下腿部プロテクター】≫の[錯行]が少し効きにくくなっている。

 多分、人形としての完成度が高まったことで、外的要因に根ざす変化への耐性が強化されたんだろう。生物や物体が内包する魔素が有する基本的な耐性だ。今回の場合、“人形なんだからそんなことはしない”みたいな。


 今はまだ水と味噌汁くらいの固さの違いでも、先に進むにつれてシチューになったり絹ごし豆腐になったり木綿豆腐になったり、更に進んで金属みたいになるならちょっと大変だ。対象に直接作用する<呪術>は使い勝手が悪くなってしまう。

 [錯行]は<呪術>なので、[錯行]頼りも程々にしておかないと消耗を減らすつもりが逆に危なくなりそうだ。


 先へ進むのを優先するのか、強い手札を控えて技術を磨くのか。≪武装人形≫は見た目の変化も手応えの変化も徐々に変わるので区切りが付けにくい。


 悩みながら歩みを進めていると、ダイバー向け端末のアラームが控えめに響いた。

 戦闘漬けだと時間感覚を失い易く、事前に一日の終わりの目処に設定していた時間の音だった。集中しているのかしていないのか微妙なまま遠征初日を終えてしまった。


 手近な小部屋に入ると≪[箱段]の【上腿部プロテクター】≫で[箱段]を発動し、椅子やテーブルと愛染(あいぜん)達の作ってくれた冷めてもおいしい料理を出して晩御飯を済ませてまた悩む。

 無段階的に変化する≪武装人形≫のどこかに区切りを作って、前へ前へ進む方針から実戦での修錬に方針を転換したい。≪武装人形≫の何を基準にして区切るのがいいのか。


 悩む上限と決めた時間まで良い案は思い浮かばなかった。

 次善案と決めていた、威力を低めに固定した魔術を手足にぶつけてどの程度壊れるかで判断する方針で妥協。

 ぱぱっと専用の魔術式を≪[無尽]の【魔本】≫に書き込んだ。基本は[誘導弾]の流用だし、丸写しに近い[低威力固定誘導弾]を作るのにかかった時間は十分弱。

 [誘導弾]を多用することになる明日は、ブックバンドで≪[無尽]の【魔本】≫を胸元にでも固定しておこう。一日中本を持って歩くのは嫌だ。


 悩み事には無理やりケリをつけて寝る準備に取り掛かる。

 食事用に出していたテーブルや椅子を片付け≪[空気][寝具]の【チェーン】≫で空気製のマットを作り、プロテクターだけ外したらそのままマットに転がった。この浮いているような寝心地はやっぱり癖になる。この遠征終わったら家でも使おうかな。


 遠征一日目終了。

≪[空気][寝具]の【チェーン】≫

§それはチェーンである§

§それは空気である§

§それは睡眠時に用いる§


≪[錯行(さっこう)]の【下腿部プロテクター】≫

§それは下腿部プロテクターである§

§それは交互にめぐる§

§それは斜めに行く§


≪[金剛][惨刑]の【槍】≫

§それは槍である§

§それは金剛である§

§それは惨たらしい刑罰をもたらす§


≪[箱段]の【上腿部プロテクター】≫

§それは上腿部プロテクターである§

§それは階段である§

§それは引き出しである§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§

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― 新着の感想 ―
[良い点] すんごい面白い 世界観やひたすらの修練に没入できて楽しいです
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