01EX-05_年始は【|神壇《しんだん》】に参るけど、これって初詣じゃないっぽいしどこか神社とか行こうか
「初詣の時間だおらー」
朝御飯を済ませてぼうっとしていると養母さんの襲撃を受けた。いや、言葉の内容の勢いとは乖離した脱力感のある言い方だし襲撃ってほどじゃないか。
「初詣? ああ、行かないと」
なんか御飯が豪華だなと思ったらそういえば正月だった。年末年始休業だし時間があるからと≪果てへと至る修錬道≫に入り浸ってる所為で日付感覚がすっかり無くなっていた。十二月二十五日の連休開始に同じようなことを思ったのは気にするほどのことじゃない。
いや、でも愛染も弁柄も躑躅も飾り付けや気合を入れた料理を作るのに楽しそうだったし、その前のハロウィンにちょっとイベントにも気を遣おうって決めたんだったか。
やっぱりしっかり反省しよう。
そんな訳で、≪果てへと至る修錬道≫へとやってきて、【神壇】の前で二礼二拍一礼して決意を新たにする。
「なんか……初詣なのに神社じゃないって変な感じだわー」
僕がこっちに詣でると聞いてついてきて一緒にお参りしてた養母さんが、しみじみと呟く。
「ていうか、初詣って年明け初めて神社や寺院を参拝することって定義らしいんだけど、これって初詣なの?」
これまた一緒にお参りしてた果恵さんが自分の端末見ながら首をかしげている。
「どこぞの神様に所縁はあるんだろうけど、神社でも寺院でも聖地でもないし、なんだったらどんな神様にかかわりがあるのかも分からないし、初詣ではないかもしれません」
≪果てへと至る修錬道≫に通うようになって以来僕にとっての初詣はこのやり方だったが、根本的な指摘を受けてなにも反論が思い浮かばず、つい敬語になってしまった。
「じゃー近くの神社行くー?」
「近くの神社って、祭神はどちら様だったっけ?」
そもそもどこにあったのかも覚えてない。小さいころはお祭りとかそれこそ初詣とかで養母さんに連れられて行ってたはずなんだけどなぁ。
「なんでもよくない?」
「いや、このご時世にそれはいかんでしょ」
養母さんの雑な言いように果恵も同意してるっぽくてアウェイ感。
陛下の色んな儀式のかげで、日本の魔法的というか魔術的というかな守護は世界を見渡しても珍しいほど強固なんだからとか。
事故にあって奇跡としか言いようのない経験をした人が信心深かった例は、無視できない数字が見られるようになってきてるとか。
自分が言ってるのじゃなかったら危ない人だろって思うような説得を続け、なんとか二人にも納得してもらった。自分でも正直、宗教にどっぷりハマった危ない人かなって思った。
具体的にどの神様がどうこうではなく、触らぬ神に祟りなしが僕の信仰の形なんで、そのへんはちょっと譲れないんです。
じゃ、近場の神社や寺院のリストアップを――あ、愛染がとっくにやってくれてるのね。三人で愛染のリストを見てどこに初詣行くか相談しましょうそうしましょう。




