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タマショックから始まったダンジョンの存在する現代生活  作者: 工具
01_自主的縛り人生でハクスラ
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01-14

 日々修錬に励み、息抜きと気分転換に学校へ行って早週末。


 ≪実践道(じっせんどう)≫の日を削って臨時の≪魔術道(まじゅつどう)≫だおらー。

 できたら予定してる魔術を午前中で仕上げちゃって午後は≪実践道(じっせんどう)≫で試したい。午後に新作魔術を試せなかったら次の機会は来週末だ。


 養母(かあ)さんが僕のことをちょっと気にしていたと月曜に果恵(かえ)から聞いた覚えがある。そのため明日は愛染(あいぜん)に頼んで用意してもらった、近場で評判になってるらしいおしゃれな名前のお店の聞き覚えのないお菓子をもって顔を見せに行かないといけない。


 ≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠とも会話ができるようになってるはずなのであれこれ()いてみるぞと気分も上々に扉を開けたところ、≪魔術道(まじゅつどう)≫の師匠が数枚の紙を静かに手渡してきた。


 あ、はい。これからも口頭でのやり取りはなく、必要な資料を適宜示してもらう感じの指導に変わりはないということですね師匠。

 僕が察したのは正しいと言いたげに一つ頷いた師匠は今ので用は済んだのかいつの間にかいなくなっていた。ぶっちゃけ師匠の指導方法に不満は一切ないので大人しく渡された紙に目を通すと珍しくタイトルがある。


“魔本に頼った魔術は初心者も初心者”


 覚えてる。≪[無尽]の【魔本】≫を拾って初めて魔術を習いに来た時に渡された入門書というか、魔術を学ぶ前に知っておくべきことって内容の本の表紙裏に師匠が目の前で書き込んでいたやつだ。


 異論の余地なく魔本を持って戦うのってめちゃくちゃ邪魔くさい。≪[無尽]の【魔本】≫片手に実戦を経験して身に染みた。

 確かに術式を書き込んでおいてそのページに魔素を充填すれば発動できるのは楽なんだけど、開いたまま保持したり目的の術式を書き込んだところを探して前に後ろにページをめくるのが結構な手間になる。

 集団行動中に魔術専業なら魔本は良いんだろうけど、ソロダイブオンリーの僕には合わない。


 先週末に≪[無尽]の【魔本】≫の魔本は魔術を作ったり手を加えるときの実験用にして、実戦では別の手段で魔術を使おうと決めていた。

 その辺りについて師匠に相談するつもりだったが、渡された紙を読んで解決策に目処が立った。

 僕がつい最近自覚した[隠密]の魔術が愛染(あいぜん)がいうところの魂象(こんしょう)になっていた件。あれが答えだ。


 魔術の扱いに慣れ、魔術に分類される技術の一つでも魂象(こんしょう)化するに至って半人前。

 この時点で≪魔術道(まじゅつどう)≫では中伝の認可をもらえる。僕の場合は[隠密]の魔術。


 魂象(こんしょう)ではない魔術を魂象(こんしょう)と同じように扱えて奧伝。

 より正確には、魔術に分類される特定技術という狭い範囲に熟練するのではなく、魔術という技術そのものに熟練し魂象(こんしょう)化すれば一人前。


 今の僕は≪魔術道(まじゅつどう)≫では中伝との注釈があったので、奧伝を目指して魔術全般に熟練すればいい。そうすれば魔術自体が魂象(こんしょう)化して……魂象(こんしょう)? いや、僕の今の魂は[隠密]でいっぱいだって愛染(あいぜん)が言っていた。もしかして頭打ち。あ、ああ。読み進めたらちゃんと書いてある。へー。≪修錬≫を冠するダンジョン内で頑張ってたらその分魂が成長するのか。


 ここまで読んだ僕が魂に関して疑問を覚えるのが師匠には明らかだったようで、魂について知るのはまだ早いって注釈もある。了解。


 ついでのように細かい疑問を解消する方法も書かれている。


 愛染(あいぜん)弁柄(べんがら)躑躅(つつじ)は≪果てへと至る修錬道≫産の魔具によって<生成>された人型魔術生物だから、≪果てへと至る修錬道≫へ彼女たちを連れてくることで僕に付与された権限内ならデータベースにアクセスできるそうだ。

 各武器種の師匠たちも当然できるが、それぞれの指導範囲に含まれない部分を愛染(あいぜん)に調べさせて解消するようになさいと明記されてもいる。師匠を顎で使うなよってことですね。


 残りの紙には中伝認可に伴い僕に付与された権限の範囲だとか、それに関連して≪[融合]の【神壇(しんだん)】≫の使い方や注意点などが記述されていた。

 そのうち調べようと思ってました。ありがとうございます師匠。


 読み終わったし、帰る時に忘れていかないようしっかりしまった。

 じゃ、魔術を作る前に[無尽]の術式規模を調べておこう。愛染(あいぜん)が話題にあげてちょっと気になったのをさっき思い出した。


 ≪[無尽]の【魔本】≫を取り出して魔術として発動しない形に術式を展開してみる。思っていたより簡易な術式だ。

 [無尽]っていうすごい便利な魔術なのにさほど難しくはないのは、魔術の対象が魔具としての器である本に限定されてるからっぽい。

 その対象を自由に設定できるように書き換えようとすると現物や材料の有無で規模が様変わりする感じだとは分かった。


 加えて、僕はすでにあるものを増やす魔術だと勘違いしていたが、[無尽]という魔術は特定の枠組みの中で消耗する何かの消耗した部分を補充し続ける魔術のようだ。


 具体的には僕が持っている≪[無尽]の【矢筒】≫と≪[無尽]の【魔本】≫の二つ。

 それぞれの魔具は、矢筒と本という枠組みの中で“矢筒の中の矢”と“本の何も記述されていないページ”という消耗品を補充し続けている。


 すでにあるものを増やすのは[増殖]の魔術とかだ。

 僕がちょいちょい使っている≪[増殖]の【多節棍】≫は[増殖]を使うと節……節? が増える。確かに棍の節も消耗品と言えば消耗品だが、矢や白紙ページと同じかと言うと違う気もする。この辺りは魔術によくある術者の認識の問題だろう。


 砂金を詰めた甕に[無尽]をかけたら延々と砂金を吐き出し続けたりしないかな。

≪[融合]の【神壇(しんだん)】≫

§それは神に近づく場所§

§それは溶かし合わせ一つにする§


≪[無尽]の【魔本】≫

§それは魔本である§

§それは尽きることが無い§


≪[無尽]の【矢筒】≫

§それは矢筒である§

§それは尽きることが無い§


≪[増殖]の【多節棍】≫

§それは多節棍である§

§それはふえて多くなる§

§それはふやして多くする§

§それは分裂により細胞を増やす§

§それは生殖により生物を増やす§

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