表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

ワクチン接種の舞台準備

作者: 孤独

端役はやく

大事を成すことには、誰も気付かない何者か達が頑張っているのである。

そう、例え。


『ゴミクソがぁっ!!とっとと持ってこいっっ!』


電話の向こうから、明らかに人間に値しない呼び名をされていてもだ。


「そっすか」


電話を受けてる人はめんどくせーの顔である。

同時に何件これのクレームというか、早くよこせとかの連絡が来て、


「何万通あるんですか?」

「ざっと、1万5千以上……同じ家もあるから、箇所数はもちっと少ないだろうが」


求めているこいつは何万通とある。ハッキリ言っていいだろうか?


「なんで引き受けちゃうのよ。これほとんど、赤字覚悟で引き受けたでしょ。うちら末端には流れて来ないでしょ」

「国どころか世界がそうなんだから、ゴチャゴチャ言うな」

「それは電話の向こう側の奴等に言ってくれ。……”仕事は定時で終わり”になるんだから、喜んでやれ」

「あああああああぁぁぁっ!!サービス残業じゃねぇかよ!!」


程度にもよるが、ないとは言えない内部事情(笑い)。


「こっちだってお前等無能共に、残業1時間分は支給できるよう調整したんだから、ゴチャゴチャ言わず、仕事しろ、ボケ」

「あのせこい部長が1時間もの残業交渉!?」

「とっとと働け!!ぶっ飛ばすぞ!!」


中身はこーいうのとは程遠い。実際、昔はそうでもなかったという。

今、あるお宅からワクチンの”ソレ”を急いで持って来い。10時以内にと、脅してきた。ぶっちゃけ、なんでやねん。で。その電話を入れて来たのが9時で、担当者を出せという。


「そんで30分以上、喋ってるんだろ?持って来るか、持って来れないかだけで。本気で相手はもらいたい気持ちあんの……?」

「担当の奴がずーっと、電話に捕まってるから作業進んでねぇんだよな(配達準備が終わってない)」

「あんなの捕まったら、仕事できねぇよな」


電話の中身はホントに罵声ばかりで、どこに責任を問いかけているのか、分からない。正論を振り翳したりしても、変な反論をしてくるわで埒があかない。

ぶっちゃけると、もらいたい側じゃないんだろうなって。……後々、感じ取ってしまう話にはなるんだがね。それは後にということで。


「役所はもっと来てるんだろうな。可哀想に」

「朝から騒ぐ元気があるなら、暑い中手伝ってこいってんだよ。暇人共」


◇        ◇


65歳以上の制限からの配布。

それは3日間でお願いしますと言われたが、ぶっちゃけると2日間だろって言いたくもなった。そーいう割合で業務をやっていた。なんだかんだで待っている者も多くいたが、気長にやるか急いで受けるか色々な考えを聞かれた。


「なんで一日でできないの!?」


そーいうお声は当然あったが。


「そーいう調整ですので、申し訳ございません」


役所がすぐに用意できないのなら、うちらもできない。人間が本気でやれば、1日使えば不可能ではないが。その不可能に近いことに、どれだけのリスクとどれだけの金がかかる。これだけならまだ行けるが、通常業務は平常運転でお願いしますと、ニッコリと利用者達は言う。

人件費高い。


『無能なんだから、金なしで働け!!俺の命が大事だ!!』


そもそも一日でこなす車などの台数を用意できない。


『言い訳をするな!!みっともない!!』


人がいない。


『カスのやる仕事に人なんか元々いねぇーだろが!!カスらしく働いてろ、馬鹿!!』


まー、そんなこんなだ。調整しないというのなら、そーいう事が当たり前になるというものだ。調整が入るのは仕方ない事だろう。声が上がる数よりも、沈黙や感謝の数の方が多いのが事実だ。


で。

この配布が終わってから数人のご老人達に話をされた。


『すいません、予約の電話が全然繫がらない。役所も繫がらないんですけど』

『ネットでも全然とれないんですけどー……』

『どーすればいいですか』


俺達に聞くな。

そーいう立ち話はこの時期、非常に多かった。

そりゃあ、実質2日間で配って、すぐに土曜日、日曜日と来たから。予約も相談もゴチャゴチャしたのだろう。あとで対象となっている家族にも聞いたが、全然繫がらないと怒っていた。


とはいえ、そんな混雑も数週間したらすっかりガラガラだったというね。

焦ってもしょうがない。



◇        ◇


「今回の配布にはそれが絡んでる調整だろうな」


そーいうお客様対応がこっちにも流れているのだから、向こうはその比じゃないのが汲み取れる。トラブルが起こる方が問題だと捉えているんだろう。

そりゃあ、一気に終わらせるべきだと


「言うよりかは自分がもらいたいだけなんだが」


実際に受けない人間というのもいるから、それがだいたいの真理である。

こっちの事情など知らぬ。


『あなた、平等って言葉知ってます!?昨日、隣の地域では配られていたんですよ!!私達の地域には配られてないんですよ!!予約が1日、私達はできなかったんですよ!?その貴重な時間を奪った罪!!私がその間に死んだら、どう責任とるんですか!?』


知らんがな……。用意でき次第、順次配布なんだから。世帯によったり、地域格差がそもそもあるんだから、平等ができないんだよ。


「織田信長。長篠の戦いで負けてるよな(笑)」

「三段撃ちってヤツですよね。ゲームで使ってます」

「諸説ありますが。平等は難しいですよね」


平等に配れというのなら、足並みを揃えるために全部準備ができてから配るんだよなぁ。つまり、全部の世帯が到着してからになるぞ。


「実際できるんすか、それ?」

「……まぁ、配達が終わるかは抜きにして。昔はそれだけの人数や設備があったから、できていたぞ」

「へー」

「今それをやるとしたら、……料金上げてもらわないとな。最低でも、当日に配る奴で」

「……どこからその送料を?」

「ははははは、税金でなんとかできるわけないじゃない。そりゃあ、余裕持って配る方が安上がりなんだからさ」


実際、引き受けしているお値段は、……色々とヤバイ。

他が真っ先に手を引くレベルであるのに、やっちゃう辺り酷い。おまけにボロクソに言われる始末。

9時48分。


「まだこちらの準備ができてないんで」

『なんで準備できないの!?今、仕事してる!?仕事できてんの!?』

「いや、あんたと40分以上、電話してるやないですか……」


配達担当に仕事させないで、早く持って来いと言っている始末。そーいう場合、このような手法が内部で行なわれている。


「おい!こっち終わった!俺が持って行くから!電話の奴に伝えろ!」


とても単純なのだが、別地域の人間が急いで配達準備を整え、応援する形で届けるのである。電光石火の準備でやればできるじゃんというが……。


「こ、この形は!”THE・最低限”!!」


午前配と午前を回る分、ギリギリの量。時間にして、今から出発し、12時頃には戻ってくる動き!!


「これは速い!!速く午前の仕事が終わる!!緊急対応の構え!!」

「だが、これは午後がキツイぜ!なにせ、午後分とサービス残業分の仕事が丸々残る!!本来なら、午後分までも午前中に持ち出し、午後はサービス残業分を行なうのがこの仕事!!」

「過酷だぜ!なんたって、今の部長も企業も残業代をそれでも払いたくないのだ!!定時を過ぎたら、サービス残業になっちまう!乗り越えるには、定時以内にサービス残業までも行なうことだけ!!良いところは、昼飯をゆっくりと食べられる事だけ!!」


気迫の篭った解説ありがとう。

本来なら、こーいう事はしたくない。

まず第一に、そんな緊急対応をするための金は払われていない。っていうか、無理。そして、これができる事を許して相手は毎回それをやってくる可能性があるので、こちらとしても他のお客様にもご迷惑をかけるのだ。たぶん、そんなの知らないけど。

そしてもう1つ。


「今から配達員を出しましたんで、10時を少し過ぎるかと思いますが」

『もー!良いわよ!午後でも、なんでもいいから!!全てあんた等のせいなんだからね!』


ガチャンッ


こーいう事を言うお宅の8割ほどは、最後にはこーいう事をぶっちゃけたり。実際に家にいなかったりと、なんのために急いだんだというオチが待っているのを、長年この仕事をしている者達は知っている。

なんだったんだ。

この40分以上の電話は……。




こっちで書きますが。

今回は非常にある法則が凄く発動しておりまして。役所側からじゃ、サッパリ分からないんですが。配達側からすると、すげー見えるんですよね。


なにが見えるって?

こーいう訴えをする人達には、あるポスター達が貼られてるんですよ……。

このポスターが色々と時期によって、訴える文字が変わるわけなんですが。


1ヶ月ほど前は

『○○○○ワクチンの無償提供』


とか書いてあったポスターだったんですよ。今は違うポスターだけど。

で、国民に無償提供されるワクチンとは別なんですよね。ソレ。

嫌がらせかどうかは考えてないですけど。

すぐにそっちに乗り換えてくるスタンスはすげーなって思います。

応援してる方達が一番分かってんじゃねぇーか。って、届けてから思いました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ