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SWEETS STREET  作者: しおりん
2/2

フルーツクッキー

『やります!!やらせてください!』


とは言ったものの。


「どう説得しようか、、、」


*****


あの後、マリオさんは飛び上がって喜んでいた。


「ありがとうございます!

 まさか引き受けていただけるなんて思っていませんでしたから。」


わたしの手を両手でがっしりと掴み、


「早くみんなに報告しなくては!」


と、足早に帰っていった。


「ユーナ様、、、また勝手なことを、、、

 旦那様に報告する私の身にもなってください、、、

 それにユーナ様、お菓子のことなどわからないのではないですか?」


作れるわよ、前世の記憶があるもの。あなたたちがやらせてくれないだけで。


なんて、言えたらいいのに。

そんなこと言ったら、次の日には精神科の先生を呼ばれるに違いない。


「仕方がないでしょう。

 あんなにお願いされてしまっては断れないわ。

 それにわたしの助言で、売れてしまったのだからわたしにしかできないでしょう。」


「嬉しそうですね、ユーナ様。」


サムが冷たい目でこちらを見たが、知ったこっちゃない。


フェルダ家は、由緒正しい公爵家。

裕福な家ほど、家事は使用人が行うものであるという考えがある。それに加えて、フェルダ家にはとんでもないモンスターがいるのだ。


「おっ奥様!!!危険ですからナイフを置いてくださいませ!」


キッチンからメイドの悲鳴が聞こえる。


「またお母様だわ。」


「奥様もこりませんね。誰かさんにそっくりですよ。」


サムがやれやれとため息をつく。

いったい、誰のことだろうか。


とりあえずキッチンへと向かう。


「お母様、メイドが困っていますよ。」


ありえないナイフの持ち方でリンゴの皮を剥こうとしているお母様がいた。淡いピンクブロンドの髪が揺れ、ぱっちりとした大きな瞳がこちらを捉えた。


「だってえ。先日いただいたアップルパイ、わたしにもできそうな気がしたのよ。」


その辺の男だったらすぐにやられそうな甘い声と、可愛らしい表情。

お父様は、こんなところを好きになったのかしら。


お母様は、なんというかチャレンジャーだ。

幼い頃から根っからの貴族で、身の回りのことは何にも出来ないのに、好奇心旺盛で何でも自分でやりたがる癖がある。


一度今日のように、キッチンに忍び込み、慣れない包丁を使った結果、指が一本なくなりかけたらしい。


「その持ち方では、今度こそ指がなくなるのではと、皆が心配しますよ。とりあえずナイフを置いてください。」


「、、、わかったわよお。もう、みんな心配性なんだからあ。」


その事件をきっかけに、お母様を心配した、お父様が使用人以外キッチンを使ってはいけないと、決めたのである。

まあ、こうして当の本人がナイフを持ち出せているので、効果があるかどうかはさておき。





「そういえばユーナ、あなた面白いこと始めるみたいねえ!あのメルシャンのレシピ監督なんてすごいじゃない!楽しそうでいいと思うわあ。」




「、、、え?なぜそれをご存知なのですか?」


まだ家族を説得できる準備ができていなかったのに!

だいたいお母様のせいで、キッチンに入れないんですからね!


「そんな楽しそうなこと、わたしが知らないわけないでしょお。お父様は説得してあげるから、勉強の息抜きにもなるし、いいんじゃないのお。」


*****



こんなに上手く進んでもいいのだろうか。


「今人気のマドレーヌだ。

王都ではもう手に入らないらしいが、俺にそんなのは関係ない。仕方がないから、分けてやる。」


「ありがとうございます。グレン王子。」


わたしは今、馬車に揺られて王都にある、メルシャンに向かう途中だ。何故か着いてきたグレン王子と一緒に。


「あのフェルダ公爵を簡単に説得するとは。流石夫人だな。」


「そうですね。」


お母様は、自分のこと以外やり手だった。

自分の武器をよく分かっている。

きっとあの甘いねだり声でお願いしたに違いない。


ところでこのマドレーヌ、


「、、、微妙」



グレン王子の舌打ちが聞こえた気がした。

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