第5話 能力
はじめましてと話しかけてきた彼女の姿は、幼かった。
「私は、シャルロット・エヴァンカース。あなたの能力の講師をすることになっているわ」
どう見ても幼女なんだが・・・。俺の目がおかしくなったか?
「あの~成人しているようには、見えないのですが・・・」
「これでも彼女は、私達よりも年上だよ」
陸岡さんも何の冗談か、えっ?まさか本当な訳ないよな?
「まさか!嘘ですよね?・・・えっ、マジ?」
「さっきから失礼じゃないかな?」
そう言うと、目を光らせ威嚇する。
「私は、ヴァンパイアの末裔。150年以上生きてるのよ」
「ヴァンパイア・・・」
どうやら信じるしかないみたいだ・・・。
でも、本当に信じられない。ヴァンパイア《吸血鬼》・・・なんて。
容姿だけ見たら本当に幼女じゃないか。
「それで、本題だ。単刀直入に言う。君には、異質な力がある」
「異質な力・・・?」
「あぁ、それこそファンタジーのような力だよ。」
ヴァンパイアの次は、異質の力ときた。
頭が、パンクしそうだ。
「その君の持ってる力を、目覚めさせるために彼女の力が必要なんだよ」
「まっ、待ってください!その異質な力って、具体的にどういう物なんですか?」
「異質な力・・・それは、この世界の定義を壊し兼ねないもの。この世界に存在してはならない。それが、異質な力だよ。」
すごい厨二病心をくすぐるな―――。
期待値マックスと言わんばかりにわくわくしている。
「彼女も力が使えるんだよ?あらゆる能力者が居る中、彼女は五本の指に入る実力の持ち主なんだよ」
「そんな強いんですか?」
陸岡さんは何も言わずコクッと頷く。
「ちょっとだけだったら、見せてあげても良いわよ?」
少し照れくさそうに言う。
「おぉマジか!」
良い反応をする俺のために見せてくれるらしい。
そうすると、シャルロットは両手の手の平を上に向ける。
そこから黒炎の玉が四つ、出現する。
「すげぇ!かっけぇ!」
「これはまだ、序の口。本番は、これから・・・」
そう言い、シャルロットは詠唱する。
「我が剣よ。舞え、そして余に応えよ」
すると、シャルロットの周囲から輝く6本の剣が現れる。
宙を自由に舞い、直後静止する。
「俺もこんな風に、能力が使えるようになるのか?」
「いいえ、そういう訳じゃないわ。能力は、個人の法量に比例するの。実は言うと、私のは魔術ではなく魔法なの。まぁ、そこの違いは後々説明するわ」
「明確な違いがあるのか・・・」
そういうものなのかと、この場は納得し話は終わる。
「フフッ、楽しくなりそ・・・」
シャルロットが不敵に笑う。
「さぁ始めましょ」
「でも、具体的になにするんだ?」
「そうね。あなたは、能力が眠ってるからそれを目覚めさせればいいのだけど・・・。」
「そうなのか?自覚がないんだが」
「そんなものよ。薬って手もあるけど・・・。でも、一番手っ取り早いのは、戦闘での興奮状態なのよね」
薬で目覚めさせる手もあるのか。まぁ絶対やりたくないけど・・・。
「で、どうするの?あなたは今二つの選択肢がある。」
「俺は・・・。もっとここで色んなことを学んでから力を使いたい」
「じゃ、今はいいわ。一年の最後から訓練を始めるからそれなりの身体をつくっておきなさい」
「あぁ。わかった」
そう言い残して、部屋から出る。
「君はあの子の事は、もう知っているんだろう?」
陸岡さんは、シャルロットに問う。
「えぇ。高木悠十。高木夕子の弟・・・。」
「あの子は、これから自分の運命に立ち向かわなければいけない。夕子の為にも、あの子は絶対に・・・死なせないんだから」