第3話 二人と一人
朝、俺は目を覚ます。
カーテンを開け、日差しを入れる。
「風呂にでも入るか。」
そのまま足取りは、風呂の方に向かう。
しばらくして、風呂からあがる。
登校する準備を整え、寮を出る。
登校している最中、昨日の夜見た女の子がいた。
「おはよう。あぁ・・・昨日はすぐ帰ったから聞きそびれたんだが、名前は?」
「響。」
「響・・・。」
ふと口を開いてしまう。
懐かしいような感じがする――。
もちろん聞き覚えのない名前。
でも、何度も呼んだ・・・気がする。
「どうしたの?大丈夫?」
しばらく体調を悪そうにしていた俺を、心配して声を掛けてきた。
「あぁ大丈夫だよ。悪いな・・・」
あの感覚は一体なんなんだ・・・。
その後は、なにもなく・・・普通に登校できた。
基地の端にある道を抜け、併設された校舎に入る。
入ると、クラス表が張り出されており、自分の名前を探す。
「えぇと・・・あった。1年C組か。」
自分の名前を見つけた直後、近くでも自分と同じ様な事を言っている人が居る。
咄嗟に声のした方に振り向く。
そうすると、目が合い挨拶をしてくる。
「君もC組なんだね。僕は、神城 拓斗。拓斗でいいよ。よろしく頼むよ!」
「俺は、高木悠十だ。俺も悠十で良い。よろしく。」
お互いに自己紹介を済ませると、響が近づいてくるのが見えた。
「居た。・・・この人は?」
「俺と同じC組の神城拓斗だ。」
「よろしく。・・・露白 響」
「改めて、神城拓斗。よろしくね。」
響の自己紹介も済むと、急に拓斗が思わぬこと言い出した。
「その~・・・気になったんだけど、お二人は恋人なのかい?」
「・・・・・は?」
不意を突いた発言に、反応が遅れる。
「恋人?そんな訳ないだろ?そもそも俺は、こいつと昨日の夜、商店街であったばっかなんだ」
「恋人・・・////]
なぜか響が、顔を赤くしているが――。
気にしない様にしよう。
「そっか!そうだったんだね!」
そんな他愛もない話をしていると、奥から先生らしき人が歩いてくる。
「ここに集まった生徒は、すぐさま体育館に集合。クラスごとに並んで始業式を始めます。」
集合の合図が掛かると、周りに居た大勢の生徒が歩き出す。
「二人とも行こう~」
「あぁ。」
「では、これから始業式をはじめます」
拓斗と響と共に体育館に移動すると、舞台の上には陸岡さんが立っている。
しばらく続いた陸岡さんの話が終わると、最後にこんな事を言い放った。
「この始業式が終わり次第、それぞれ教室に戻って授業を受けて貰います。一年の諸君頑張ってください」
この一言をきっかけとして――。
「まじか・・・」
「今日は休みだと思ったのになぁ」
といった声があがった。
もしかして、思ってた以上にハードか?
始業式が終わり、更衣室で着替えた俺達は、グラウンドで体育をやる事になっている。
今は授業を受けている真っ最中なのだが・・・。
「私は、格闘術担当の檜山です。これからは格闘術の基本を叩き込むので、覚悟してください。」
「では、まず今日は基礎体力付けをします。各自、準備運動をしてからトラック10周・腹筋250・腕立て伏せ200をメニューとして、これを毎日やり続けて下さい」
「・・・・」
えっ―――。今言われたハードなメニューに頭が、追い付かず呆然とした。
今のを毎日だと・・・。引きこもりだった俺には、絶対こなせる訳が無い代物だ。
呆然としている内に、周りはもう準備運動を軽く終えて、トラックを走ろうとしている所だった。
「やべっ・・・」
俺もすぐに準備運動を終わらせ、トラックを走り出す。
だが、5周ぐらい走りきった所でバテる。
バテて倒れた所で、ふと拓斗が視界に入る。
「すげぇ・・・。ペース落ちるどころか上がってる」
素の驚きで、そんな言葉が口からこぼれる。
そして拓斗は走り終えると、こっちに歩いてきた。
「そっちは10周走り終わった?」
「い、いやぁ・・・まだだ」
流石にここで、差をつけられるのは厳しい。
「よし!行くか」
起きてトラックに戻り、また走り出す。
最後の一周は、もう死ぬかと思うぐらい必死に走った――。
「走り・・・切ったぁ!」
やっとの思いで走りきった頃には、もう周りは筋トレをやっている最中だった。
倒れ込むことなく俺も、筋トレを始めた。
そして・・・全てのメニューを終えると同時にチャイムが鳴り響く。
「これを毎日とか・・・辛すぎだろぉ!」