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異世界ゲーセン繁盛記  作者: 味玉タンタンメン
2/3

1-2.異世界にようこそ

「ん、んん…私は一体どうなったんだろうか…目の前は真っ暗で何も見えない…

 たしかモニターPCB交換中に感電して…

 私としたことが迂闊だった…営業フロアでのメンテは、お客様の安全のために、

 作業スペースを十分に確保しろと、師匠からもさんざん言われていたのに…

 最後の最後でこんなヘマをやらかすなんて…死んでも死にきれ…ねぇ…」


「もしもーし!生きてますかー!!もしーもーしっ!!!」


ハッ!!


「ここは?どこ??」


私が目を覚ますと、目の前には見たこともない平原の景色が広がった。

私は確か店にいたはず!?しかもこの景色、どう考えても日本ではない!!

そして、目の前にいるのは…


「やーっと目を覚ましたね!死んでるのかと思ったよ~!」


よ、よ、よ、妖精!?耳が長い!人間のようだが、人間っぽくない!!


「あ、あなたは?ここは?私は一体ッ…」


「私はユーナ。ハーフエルフだよ。

 私が偶然ここを通りかかったら、君が倒れていたんだよ。

 で、声をかけたら目を覚ました。

 こんなところで、ヒュームが寝てたから、ビックリしたよ~」


「ヒューム?私は人間だけど。ここはどこなんですか?」


「ここはアムゼランド。さまざまな種族が平和に暮らす国さ。

 でも、数年前までは魔王が支配してて、めちゃくちゃだったんだけど、

 勇者様が魔王を倒して平和になったんだ。

 魔王に操られて暴れていた、さまざまな種族の人たちも今は、

 おとなしくなって、みんな一緒に平和に暮らしているんだよ~」


「えっ!?ここは地球じゃない??…に、人間はいないのっ!?」


「ちきゅう?ここはアルスって星だよ。人間?あ!君と同じヒュームってこと?

 ヒュームは非常に少なくて、この星には少数しかいないみたいだよ。

 だって、私も今日はじめてヒュームを見たんだから~。ホントにいてビックリ!

 ところで、あなたの名前は?どこから来たの?」


「私は白石圭。東京から来たんだけど…」


「ケイっていうんだ。めずらしい名前。トウキョウ…ってどこだろ?」


どうやら私は、感電の衝撃で異世界に異動、いや移動してしまったらしい…。

一刻も早く元の世界に戻りたいところだが、どうすればいいんだ…

これから私はどうすりゃいーのよっ!!


「ねー、ケイ。どこにもいくあてがないんなら、私の街に来ない?

 この世界のこと、なーんにも知らないんでしょ?

 なら、私の街でこの世界のこと、知るのもいいんじゃない?」


「そう言ってくれるのは有り難いけど、私みたいなヨソモノが

 勝手に街に入ったら迷惑なんじゃない?」


「そんなことないよ!ヒュームは珍しいし、魔王を倒したの勇者様も

 ヒュームだから、この世界の人たちは、みんなヒュームに感謝しているよ!

 だから大丈夫だと思うよ!」


「ありがとう、ユーナ。私も行くあてがないし、助かるよ。

 ひとまず、君の街にしばらくお世話になるね!」


ハーフエルフのユーナに導かれ、私は彼女の住む街ベルバレに向かった。

ベルバレの街は、ファンタジーゲームにあるような中世っぽい街並みで

いろんな種族がさまざまな職につき、活気のある街だった。


ヒュームである私は、ユーナの言った通り、厚いもてなしを受け、

衣食住が保証され、生きる上では不自由のない環境を手に入れることができた。


あれから数日。

この世界、この街には少しずつ慣れてきたが、将来への不安はいっぱいだ。

どうやって元の世界に戻ればいいのか方法もわからない。


ただ一つの手がかりとしては、この世界でヒュームと呼ばれる存在。

ヒュームは人間だ。おそらくこの世界には元から存在せず、私と同じように

地球から異動、いや移動させられてきた人間たちだろう。

だから、彼らに会えば、何か手がかりがつかめるかもしれない。


でも、彼らがどこにいるのかも分からない。

この世界には電車や飛行機などの移動手段も存在しない。

どうやって彼らを探していけばいいのか?


そもそも私には、RPGみたいに世界を旅して行けるようなサバイバル技術なんて

ものを持っていない!あるのはゲーセン運営スキルだけだ!

この世界じゃ、1ミリも役に立たないスキルだと思うけどね!


「ハァァァ…」


私が街の中心にある広場のベンチで将来に絶望し、大きなため息をついていた時、

向かいの大きな噴水の陰から、ユーナがこちらに向かって歩いてきた。


「おーい、ケイ。どうしたの~?昼間っから暗い顔して~?」


「やぁ、ユーナ。ちょうど将来に絶望してたところよ。」


「なーに言ってるの~。こっちでケイがやりたいこと探せばいいじゃん!

 私も手伝うからさ~。」


「本当なら私は今頃、渋谷の本社で週末休みで、深夜じゃなくて昼間に働いて、

 アフターファイブを楽しんで!ウキウキワクワクな生活を送ってだな!!!」


「えー?なんかよく分かんないけど、ウキウキワクワクしたいんなら、

 ちょっと街の外に散歩に行かない?」


散歩か…ここに来てから一度も街の外に行ってないから、ちょっと

気晴らしに散歩するのもいいかも。何もすることないし…。


「わかった。散歩に行こう。」


こうしてユーナに導かれるままに、私は街の外へと散歩に出かけた。


「ねぇ、ユーナ。街の外には魔物とかいないの?

 私の知ってる世界では、こういうところにスライムとか出てきて戦闘に

 なったりして、経験値やゴールド稼いだりするんだけど。」


「あはは、何それ?面白~い!この世界には魔物なんていないよ。

 魔王がいた時には、魔物もいたって話は聞くけど、私は見たことないな~」


「じゃあ魔王は何で支配してたの?」


「魔王は人の心を操り、政治、経済、思想で、この世界の人たちを支配していたんだよ。

 魔王の洗脳にかかった人たちの一部が過激な行動をしていたけど、戦争になる

 ようなことはなかったよ。」


「へー。じゃあ魔王はどんな世界にするために人々を支配しようとしたの?

 あと、勇者はどうやって魔王を倒したの?」


「魔王は、この世界を潔癖な世界にしたかったみたいよ。」


「ププッ!魔王が潔癖!!私の知ってる世界とは展開が違い過ぎる!!」


「魔王は、生きる上で必要なもの以外を悪としたの。だから文化や遊び、賭け事とか

 生活する上では必要でも、生きる上で不要なもの《娯楽》を禁止したのよ。」


「そりゃ、つまらん世界だね。で、勇者さまはどうやって、その魔王の呪いを解いたの?」


「遊びを作って広めた。民衆に精神的な幸福をもたらした。」


「勇者は人間ってことがよくわかったわ。こんなことできるの人間だけだよね~。

 昔、人間は遊ぶ存在である、って言ってた哲学者がいたっけな。

 で、その勇者は、どんな遊びで人々の目を覚まさせたの?」


「フラワーカードだよ。48枚の花の絵のカードで遊ぶの。

 2人で遊ぶコイコイと3人で遊ぶ花合わせがあって、

 カードの絵の組み合わせで役をつくって争うの。面白いよ~!」


「花札だね、そりゃ。どこの世界でもギャンブルってのは心を熱くさせるのね。

 若干、魔王が導いた世界のほうが平和なような気がしてきたわ。」


「で、いま勇者様の作ったフラワーカードを遊ぶためのフラワーカードスタジアムが

 全国にできてて国中が大ブームなんだよ~。」


「そうか、この国は娯楽に飢えているんだね。なんだか戦後間もない日本みたいな感じだな」


「ふーん。ケイのいた国も、ここと同じような感じだったの?」


「昔はね。今は…いや私がいた時は、もう娯楽が溢れてて、人々の余暇時間を

 多すぎる遊びが奪い合う時代になったのさ。」


「えー!それすごくない?時間がいくらあっても遊びきれないほど娯楽がある世界なんて!

 行ってみたいな~」


「生き残る娯楽もあれば、廃れて無くなる娯楽もある。娯楽にとっては厳しい世界さ。」


ユーナと街はずれの道を世間話しながら歩いていると、見覚えのある場所に辿り着いた。


「あー!ここケイが最初に倒れてた場所だよ~」


「マジか!私、こんなとこに倒れてのか~。

 今思えば、ユーナに助けてもらって本当に良かったよ。

 ありがとう、ユーナ!」


「も~、ケイってば、改まって何よ~。当然のことをしたまでなんだから、

 気にしな…ってアレ何!??」


「あれ?なんか光ってる!」


目の前にある草原の横に小さな土の盛り上がりのような洞窟のような空洞の中から

まばゆい光がでている。


「なんだろう?ちょっと見に行ってみようよ!ケイ!!」

「ね、ねぇ、ユーナ。危ないよ!!」


光の先は洞窟のようになっていた。

洞窟の先を進んで行くと、そこには倉庫?のような空間が広がっていた。


「え~なに~?ここ?」


「なんだ、ここ?倉庫か?

 おっ!あそこに何か置かれてるよ!!」


私とユーナが倉庫らしい空間に置かれているものに近づいてみた。


「なにこれ~?馬?」


この世界に馬はいた。しかし、ここにあるのはそれではなかった。


「いや。これは木馬だ。」


「もくば?木馬ってなに?ケイ」


「これは私の世界にも大昔にあったものだ。

 お金を入れると一定時間動く馬の乗り物だ。

 でも、これで移動できるものではなく、子供が遊ぶ遊技機だ。」


「へ~。なんか面白そうだね~。乗ってみたいな~。」


なぜ?これも現代から転送されてきたの?

でも新品だ。こんな状態のいい木馬の乗り物は現代にはないはず。

ていうことは、別の時代から来たってこと?なぜ?


「ねぇ、ケイ。これ動かないの?」


「動かないでしょ。この世界には電気がないし。

 これは電気で動く乗り物だ。電気がなければ動かない。」


「なんだ~。残念…。あ!ちょっと待ってケイ!ここに

 銅貨を入れるところがあるよ!」


銅貨とはこの世界で¥100くらいの価値がある通貨だ。


「やめなよ、ユーナ。電源入ってない状態でお金入れたら、

 機械に飲まれるだけだよ!」


「いーもん。試してみるもーん」


そう言ってユーナはコイン投入口に銅貨を入れた。

すると、木馬の筐体が突然光出し、木馬が動き出したのだ!!


「やったー!動いたよ、ケイ!!

 これすごい面白いよ!!」


「え、ええぇぇ!?」


仕組みはよく分からないけど、お金を入れると、電源不要で

木馬が動くって!?マジかーーーっ!?


って待てよ。今、目の前には新品の木馬の乗り物が2台。

これを使って、街で商売したら、娯楽が少ないこの世界なら、

バリバリ稼げるかもしれない!!


そうだ、私のいたZAMの創業者西園寺会長は、デパートの屋上に

2台の木馬を設置したところから事業をスタートし、現在の

世界的ゲームメーカーへ成長させた逸話を新入社員のころから

ずっと聞かされてきたのだった。


私もZAMで学んだノウハウを使えば、この2台の木馬でも

この世界の人々を楽しませられるかもしれない!!


「よし!ユーナ。この木馬を街まで運んで、商売をしよう!」


「うん!それいいね!ケイ!やろうよ!絶対うまくいくよ!!」


こうして私たちは、この世界に転送された2台の木馬を使い、

街で商売をすることにした。異世界ゲーセンの開店だ!!


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