98 ソードダンス、ロゼッタの目の前で
「円舞曲がお望みか? それとも終わらない絶望の輪舞曲がお望みか? どちらでも良いぞ……我が名はライジングサン、踊ろうではないか、"闇夜を照らす狂乱のシンフォニー"と共に」
声高らかに、モフモフうさぎはロゼッタの隣に並び立った。その両手に握られた2本の龍刀、ロゼッタにはドラゴンに手を喰われているモフモフうさぎに見える。隣に立っているのも苦痛なほどの威圧感がロゼッタを襲った。
両手の先に伸びた龍刀は、対を成す双剣。鍔の部分はドラゴンの頭が口を開く様な造りになっており、鍔の部分のドラゴンの目玉の色、これだけが違っている。片方が紅、もう片方が金色。
「お前は……お前が……」
(そうさロゼッタ、この俺がリサを殺したんだ)
ロゼッタの呟きの側で、モフモフうさぎに憑依したライジングサンの剣舞曲が始まろうとしていた。
無防備に見えるモフモフうさぎに、ロゼッタの姿をしたシャドーゴーレム達が糸を飛ばそうと両手をひろげた。
「下がれロゼッタ」
そう言い放つと、ロゼッタの返事も聞かずにモフモフうさぎは両手の剣を、斜に構えてシャドーゴーレムの影に突っ込んで行く。
その動きの速さはダークエルフの物では無い……ライジングサンが憑依したモフモフうさぎは地面を蹴っていなかった。ひと蹴りで10m、更に小刻みな足の運びで向きを変えて、重力すら無視した全方向からの攻撃……
彼が蹴るのは空間、空気、影、現象、その全てを捉えて足場としてしまう。
水平方向に飛んでくるシャドーゴーレムからの弾丸の様な糸に飛び込んだはずのモフモフうさぎが、一瞬で上方に飛び上がりその途中で方向を変えて、シャドーゴーレムの真上にたどり着くと体を逆さにして天を蹴った。
まだシャドーゴーレムの指先から糸が放たれたばかり、しかしその時には既にモフモフうさぎはシャドーゴーレムの真上から迫っていた。
もはや目で追う事が出来ない速さ。常識と物理現象の無視、それがライジングサン、未だソードダンスは始まっていない。
(かなわぬ……)
アンタレスの世界で、この作られた世界の中で存在するNPCであるロゼッタ。その中でも数少ないハイスペックな能力値を与えられているロゼッタだからこそ、モフモフうさぎの動きを感覚のようなもので感じ取る事が出来た。
(リサを殺した男、私すら足元にも及ばない強さ)
高速演算で思考を作り上げるロゼッタが、一気に後ろへ飛び退いた。飛び退いた先に、マッテオが包丁を構えて立っていた。
「なんだあれは? 金色の鎧? 羽でも生えてんのか? ロゼッタ、あいつ悪魔か? 何にも残らねぇぞっ」
マッテオが隣に来たロゼッタに言った。
「そうね、悪魔かしら。普通ならあの速さでは肉が骨から剥がれて死ぬわ。でもうさぎはそうでは無い。離れるわよっマッテオ。巻き添えを喰らわないように」




