95 助かる方法
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぁぁぁぁぁぁ」
「うるせえよR、いつまで叫んでんだ」
「うげぇ、死ぬかと思った。俺落ちるのは無理なんだって。嫌だよ〜カル。今の落ちる感覚が最悪に駄目、耐えられないっ、ひでーよー誰が仕組んだんだよ〜、落ちたくないよ〜」
「お前何かしたのか? いきなりトラップ発動とか……う〜ん分からんっ、細かくトラップの設定までググってれば分かったんだけど、そこまで余裕も無いし。ただこのままじゃ、バッドエンドだぞ」
「カル、なんとかしてくれよっ、落ちるのやだよ。登れない?」
「無理だ、滑るっ。そのうち2人とも落ちるぞ。それに、良く考えたらそれが1番まずい。先にモフモフ達が来てクリアされたら俺達がこのフィールドから出るには死ぬしか無いんだが、ここがどうなっているのかが分からん。串刺しになるか、降り出しに戻されるか……酷いのはずっと落ち続けるみたいな無限地獄」
「俺はそれが1番嫌じゃぁぁ、死ぬより先に気が狂って死ぬ」
「体力が減っていってHPがゼロになるまで落ち続けて死ねない。お前には地獄の時間が待っているわけだR」
「もう俺落ちそうなんだけど助けて……この壁滑る」
「ナイフ使え、こうやって壁に突き刺せばっ」
ズバッ
カルが暗く狭い落とし穴の壁にナイフを突き立てた。
Rも同じく1本しか持っていなかったナイフを壁に突き刺す。
「ははっ、これで落ちるのはなんとかなったけど……もう抜けねえよこれ。どうする登れねえぞ俺」
「詰んだな……R。やっぱお前死ねっ」
「ざけんなっ、俺が死んでもお前を助けに来ないからな」
「じゃあ俺が死ぬか……俺も助けに来ないかもしれないぞ」
「どうすんべ?」
「取り敢えずこのトラップがどうなっているか調べるわ。最悪シャドーゴーレムに見つかって殺されるかもな」
そう言いながらカルは設定のウインドーを開いて、深く探って行く。
「結構落ちたな。でも自由落下だけは勘弁してね」
「残念なお知らせだR。このトラップの名前が判明した。 『底なし穴の恐怖』だ」
「めんどくさー、モフモフに助けてもらう? そのうち来るだろ。事情を説明すればいいんじゃね?」
「お前は喋んなよ。俺が話すわ、お前が喋ると助かるもんも助からん気がする」
「底が無いって気持ち悪いな……そういやこれで極甘設定なのか?」
「今から設定を変えることも出来るけど、ハッキリ言ってスワンに聞かないと、どこがどうなるのかもう良く分からん。お前の言う通りモフモフ達を待つか」
海沿いに誘導された後、倉庫街を通ってカルとRを追いかけようとしたシャドーゴーレム達は、カルとRが屋敷に入った瞬間にターゲットを失い、フラフラと獲物を求めて彷徨い始めていた。
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「せーのっで行くわよ! せーのっ」
ロゼッタの掛け声で、ロゼッタと俺とマッテオさんはロゼッタの屋敷の2階のベランダ、手摺りの無いベランダから雨雲の中に飛び込んだ……