93 血糊のサイン
「よしっ分かった! これでモンスターの出現はカットだー、ポチッとな」
カルがモンスターの出現条件を変更した。
「変わらねえぞ、シャドーゴーレムがまだ見えるぜ、カル」
後ろを見つつ、カルの方を見てRが言った。
「やっぱり無理か……あいつらは消せないみたいだ。だけど今出ていないモンスターの出現は止めれたよ。ほらっ、さっき居たメイドと白狐はもう出て来ないぜ、今屋敷にも出ていないからな」
カルが自分の視界に広げたスクリーンで、作業を行なっていく。Rはカルが作業をしている間の、監視役だ。取り敢えず安心して動く為にシャドーゴーレムを巻いてしまいたい。
「おいカル、もう公園に入ってるんじゃないのか?」
「R、やっぱお前死ぬの嫌か?」
「嫌だよ、自分で言うのも何だけどやり過ぎ感があるみたいな……ちょっとリアル過ぎんだよな」
「そうか〜、だけど俺らこのクエストに縛られてんぞ。さっきも言ったけどクリアするか死ぬかだ」
2人が歩く先に、芝生の敷き詰められた緑溢れる森のような場所が広がってきた。キチンと手入れされた街路樹が歩道の脇に自然に植えられて、洒落たベンチが所々に置かれてある。街灯も均等に配置されているので、散歩するにはピッタリな場所だ。
「シャドーゴーレムって俺達の事が見えてるのか? それとも自動追尾型?」
「まぁ、俺達にフラグは立ってるだろうよ。モンスタートレインして誰かに擦りつける事は可能だろうけど、誰も居ないから延々と追いかけて来るだろうね」
「足が鈍いのが幸いだな、こっちまで引きつけてから、ダッシュでさっきの屋敷まで戻って女を助けてクリアしちまえばオッケーじゃねぇ?」
「俺達はな」
公園の一角、海がもう見える埠頭近くにトイレの建物が建っていた。なかなかに立派な作りで雨宿りにも利用出来そうだ。
「俺達はって、どう言う事だ?」
「良く考えてみろ、これってオープン参加型のクエストじゃ無いだろっ、俺達がクリアしたらクリア条件であるあの女がこのクエストから居なくなってしまう……と言うことは、後から来るモフモフうさぎとラヴィはそもそもクリアする事が出来なくなっちまうって事だ」
「ふーん……俺とお前は? 別々扱いとかにはならないのか?」
「パーティ組めばいいんだよ。R先生」
カルとRはトイレの近くまで小走りで駆け寄った。シャドーゴーレムとの距離はかなり広げている。
「おっ、あったあった、これが血糊のマークだな」
「丸の中ににSA13って描いてるし。さっきの通りの出口に『Suicide Avenue』って看板あったよな。ここを出てすぐだし分かりやすいヒントじゃねぇか」
「で、どうすんだよっ。先にクリアするか?」
「そうだな、こんなとこさっさとオサラバしてスワンに任せようぜ。あいつらも死ねば出て来れるんだし別に心配ねぇよ」
「じゃあこの壁のヒントは弄っちゃってもいいわけね」
「急げよR、俺はシャドーゴーレムから上手く時間を稼ぐルートを検索するから、良く見といてくれ」
「わかったよー」
そう言うと、Rは壁のサインに手を触れた。赤い血糊のサインはRが触れるとそこだけ壁から剥がれたように動いて来る。Rはそのままのポーズで少し悩むと、スラスラと手を動かして行った。