91 洋館のお出迎え
「ふふふふっ、R様の腕の見せ所だな……」
手を抑えたカルの前にRが出る。玄関の中は春風が吹いて目をこすったRに可愛らしい白狐とメイドさんがお出迎えをしてくれた。
「おかえりなさいませっ、ご主人様。ぺこりん」
自分でぺこりんと言って頭を下げてみせる、小さなメイド。背の高さは140センチぐらいの西洋人形だ。
「誰だい、お嬢ちゃん」
(カル、知ってるか?)
Rが、カルに目配せをする。
(知らない)
とカルが首を横に振った。
「玄関をぶっ壊す馬鹿野郎におかえりなさいませとはとんだ言い草。イーニー、この盗賊どもに祝福の雨を降らせてやれっ」
白狐がイーニーと呼んだ小さなメイドに喋った。狐だが普通に人の言葉を話した……
「グンナイ、カウボーイ。楽にしてあげるわ。私だけの優しさでね、バイバイッ」
⌘ 偽りのご主人様は退場、この世から退場、退場、退場、退場劇の始まりは化け物で飾りましょう ⌘
呪文なのか、ただのつぶやきなのか、メイドのイーニーが放った言葉は隠れていた異形の者達を呼び寄せた。
20畳程の部屋の床から黒い影が浮かび上がって来る。両隣の壁からも何かが壁をすり抜けて部屋に入って来た。
「ヒューヒューヒューヒュー」
部屋中を埋め尽くす黒い影が泣くように声を出して姿を変えていく。いつの間にか白狐とイーニーは消えてしまって、残ったのはカルとRと黒い影達。
「今ならまだ行けるぜ、カル逃げろー」
玄関のドアは、カルが蹴破って開いたままだった。
Rがダッシュを見せて部屋から飛び出した。
「俺も俺もー!」
カルも部屋から逃げ出した。ゆっくりとカルとRを囲い込もうとしていた黒い影達が、獲物を失い右往左往し始める。
「ほら見ろやっぱり何か出たじゃねぇか」
玄関からスーイサイドアベニューに飛び出したRが、遅れて出てきたカルに文句を言った。
「大した事無かっただろ、何せ激甘設定。普通ならこうはいかんはずだ」
「んな事どうでもいいから、ほら、出てきたあいつらをさっさと消せよ」
Rが玄関を指差して言った。ゾロゾロ連なって出てくる黒い影達は後ずさりするカル達を目指して近づいて来る。
「取り敢えず、離れるか。ウォーターフロントパークに行こうぜ。あいつら走ったりしなさそうだし、あっちで設定弄るわ。ん〜左、左が海だ。ダッシュすんぞっ」
「魔法か何かで倒せんのか?」
カルに付いて行きながらRが愚痴る。
「相変わらずの俺らだろっ、うっかり普通のステータスで入っちまった……」
「設定が弄れるのはスポーンゲートに居る時だけだったな……どこでも出来るように今度変更しとけよっ、使えねぇ」
「R、いっぺん抜けてから入り直すかー?」




