82 自分の姿は?
「リサッ」
「お姉様っ」
部屋の入り口でロゼッタの声がして、ついに姉妹のご対面となった。ロゼッタは先程着ていた服を着替えて来たのか、胸元まで露わな紫色のドレス姿になっていた。
(すげっ、リサもあんな綺麗になるのかな)
リサに手を引かれてロゼッタがローズの立つガラス張りの窓辺にやって来た。
「はじめまして、ラヴィアンローズと申します。先程は友人のモフモフうさぎを助けていただきありがとうございました」
「ようこそ我が家へ、わたしがこの館の主人、ロゼッタよ。リサを連れて来てくれてありがとう。わたしもローズと呼ぶわ、リサ、いいでしょう?」
普通のヒューマンの女性、この場合アンタレスの世界に多々存在するヒューマンの女性という意味だが、その中で飛び抜けて繊細なタッチで表現された麗しの美女ロゼッタ。
きらびやかな宝石を散りばめた胸元を飾るネックレスや耳元で揺れるイヤリング、見ているだけで……いやこんな側で見る事が出来る機会があるだけで、それは幸せという物。少なくともラヴィアンローズにとっては、 理想の上限値を引き上げる女性であった。
「綺麗……リサ聞いて。リサのお姉さんは圧倒的に美しい人ね。とってもリサに似ていてローズはびっくりしてるの」
(男じゃ無理、声が出なくなってしまうよ)
「ローズ、リサはお姉様に似てるの? とっても似てる? 近いの? それは本当なの? ねえ……」
「リサ、あなたも着替えたら? それに、そんなにローズに聞いたら困ってしまうわよ。あなたは、あなたらしくよ。心配しないで、ローズを食べたりしないから。こっちへ来なさい、ローズは少し待っていてね。期待していいわよ……」
そう言ってロゼッタはリサを連れて部屋から出て行った。
「はぁー」
(まだ全然無理。リサにしろロゼッタにしろ他のキャラとは力の入れようが違う繊細な作り…… というか一目で誰もが違いがわかってしまう外見をもっている。リサは結構地味な格好をしているからそう感じなかったけれど、ロゼッタと並んで立つとやばい。あの子も超レベルが高かった……こんな事を言ってるとC.Cにまた怒られるよな。女の子の外見に点数をつけるなって。でも褒めるのはいいはずさっ本当だもん)
「モフモフさんが来ないな……」
そう呟いて俺はやる事が無いから部屋を見回してみる。今は火が入っていない暖炉、窓際の右に2階に登る階段があって、窓に向かって左側の壁は書棚になっている。で、本を手に取ってみて窓際に行って開いてみた。
本のタイトルは【この世界の手引き】、本を持つと何か安心する俺。でも中には予想した通り白紙のページしか無かった。
窓から外を見て、さっきモフモフさんとロゼッタが空中を歩いていたのを思い出した。というか、あそこ、変な場所にテーブルと椅子が浮いている。
(まさかあそこでお茶会が始まるとか無いよな……リサが言ってた気絶するほど美味しいお茶って、あそこじゃ怖くて味なんてしないだろっ、ないな、ないない)
「つーか、モフモフさん遅えー」
言ったそばからひょっこりモフモフさんが現れた。
「おっ、ラヴィちゃん。1人?」
「やっと来たか、もう遅いよっ。外で何をしていたん? リサが言うにはモフモフさんが絶望して身を投げたらしいんだけどさ」
「ぶっ、というか見てくれよ。どう俺の格好、貴族だろっ」
モフモフさんがあの破れた汚い服を着替えて、紺色を基調にしたスマートなスーツは、元々スラリと背の高いダークエルフのモフモフさんに似合っていて、服を選んだ人のセンスが光る1着であった。
「イケメン、惚れてしまいそうな程、ドキドキするわ」
「きもっ」